インフルエンサーエージェンシーは、キャンペーンのパッケージについて、ブランドセーフティにおけるコンテンツレビューを含めるのが普通だ。しかも、こうしたサービスにおいて追加料金は請求しないとしている。しかし、仕事が増えればインフルエンサーに対する支払いも増える。そのため、キャンペーン全般の料金が高騰しているようだ。
ブランドセーフティの懸念を受けて、インフルエンサーマーケティングのエージェンシーに求められる仕事が増えているが、当然コストも増えている。
インフルエンサーエージェンシーは、クライアントに提示するキャンペーンのパッケージの説明に、ブランドセーフティの確認やチェックという形でコンテンツのレビューを含めているのが普通で、こうしたサービスは追加のサービス料は請求しないと説明している。
しかし、仕事が増えればエージェンシーの側はインフルエンサーに対する支払いが増えるわけで、これがキャンペーン全般の料金を押し上げている。たとえば、インフルエンサーに写真1セットの提供を依頼し、コンテンツレビュー後に写真をやり直しさせる必要があるとなった場合には、インフルエンサーがこのキャンペーンにかける時間は大幅に増えることになる。
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費用高騰の実態
インフルエンサーエージェンシーのフォー(Fohr)は、クライアントに売り込む時点ではコンテンツのレビューや承認の料金を請求しておらず、クライアントがこれを求めれば、インフルエンサーキャンペーンの料金が高くなる。創業者のジェイムズ・ノード氏によると、事前、途中、事後の承認を求められると、インフルエンサー側は価格を上げたり、キャンペーンを受けないことにしたりする。というのも、簡単に言えば、コンテンツのレビューや承認が増えると、キャンペーンにかかる時間が大幅に増えるからだという。
「インフルエンサーからすると、承認のプロセスは多大な時間が必要になるおそれがあり、要求されたものを撮り直すことになる可能性がある」と、ノード氏は説明する。「一般論として、インフルエンサー側はこれに対応するため価格を水増しする」。ノード氏によると、承認なしだとキャンペーンの費用は約25%安くなるという。
セフォラ(Sephora)やリフト(Lyft)と仕事をしているインフルエンサーエージェンシーのオブビアスリー(Obviously)の場合、創業者でCEOのメイ・カーワウスキー氏によると、クライアントが要求するコンテンツレビューが多いという理由でインフルエンサーキャンペーンが2倍の料金になることも少なくないという。
「料金を2倍にすることがあるが、それは、仕事が大幅に増えることからインフルエンサーに渡っているのだ」と、カーワウスキー氏は語る。「動画の編集にどれだけ時間がかかるものなのかをブランド側が理解せず、我々がカバーしようとすることもある」。
エージェンシーの努力
エージェンシーからすると時間を浪費するプロセスなので、キャンペーン全般の価格に組み込まれることもある。ノード氏によると、キャンペーン承認のプロセスがあると、完了に必要な時間が一般的に3倍になるという。たとえば、キャンペーンに100人のインフルエンサーが必要で、各インフルエンサーが投稿を3通り用意し、あわせてインスタグラムのストーリーを6件、制作する場合、エージェンシーが精査する必要があるコンテンツは、結果的に900件に上ると同氏は指摘した。
コンテンツのレビューにかかる時間が増えていることから、フォーでは最近、効率化のためにGoogleドキュメントからコンピュータ化された新しいシステムに移行した。またオブビアスリーは、コンテンツのレビュー料金を請求し、クライアントが修正を求めるたびに請求額を増やす段階式のアプローチに取り組んでいる。
インフルエンサー側も、負担のことがわかっているので、キャンペーンにコンテンツのレビューがついていると、受け入れの熱意が下がる。「我々の場合、承認なしのキャンペーンのほうが、キャンペーンの受入率が劇的に高く、受け入れ自体も早く進む」と、ノード氏は話す。
ウィード発言の影響
しかし、料金が高騰しているにもかかわらず、企業は以前よりもコンテンツのレビューを求めるようになった。カーワウスキー氏によると、オブビアスリーでは現在、クライアント150社のうちコンテンツのレビューを求めているのは45社で、1年前から15社増えている。フォーでは、実施中のキャンペーン79件のうち63件がコンテンツのレビューが必要なものだという。
いくつかのインフルエンサーエージェンシーによると、インフルエンサーキャンペーンのコンテンツレビューを増やすブランドが増加しはじめたのは、ユニリーバ(Unilever)のCMOであるケイス・ウィード氏が、フォロワーを買っているインフルエンサーとはもう仕事をしないと6月にカンヌで宣言して以降のことだ。この発表は、フォーやインマー(Inmar)傘下のコレクティブ・バイアス(Collective Bias)などのインフルエンサーエージェンシーが、フォロワー数ではなく投稿のインプレッションをもとにした請求をはじめるきっかけにもなった。そして、こうしたウィード氏の発言を、YouTubeのようなソーシャルプラットフォームにおけるブランドセーフティの懸念が後押しした。
インフルエンサーエージェンシーマーケティングのエージェンシーであるフーセイ(WhoSay)でマーケティングの最高責任者を務めるポール・コントニス氏は、「デジタル分野でブランドセーフティの問題が増えて以降、適切な掲載やメッセージの保証が広告主の一番の優先項目になった」と語る。
「賭け金が高くなっている」
インフルエンサーマーケティングに関心を寄せるブランドの数が全般的に増加するなか、質のコントロールを確保するにはブランドがお金を出す必要があるという理解は広がっている。カーワウスキー氏によると、マイクロインフルエンサーとの仕事でも、キャンペーンブリーフが複雑化していることから、ブランドは時間のかかるレビューを求めるようになってきている。「マイクロインフルエンサーが作るコンテンツは、それぞれのニュースフィードに表示されるだけではなく、ブランドのウェブサイトに掲載される可能性もある」と、カーワウスキー氏は補足する。「そのため、コンテンツレビューの重要性が非常に高まっている」。
「賭け金が高くなっている」と、ノード氏は語る。「昔はインフルエンサーキャンペーンは補足的なもので、そこまでの規模はなく、小さな間違いが大きな問題を引き起こすことはなかった。もはやそういうわけにはいかない。予算が増えれば期待は高まり、ブランドがお金を出すコンテンツのレビューには、さらに綿密な調査や配慮が必要になる」。
Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)