記事のポイント 米国では、リモートワークの流行から昨今のオフィス回帰の流れを経て、多くの従業員が退屈症候群に陥り、仕事への意欲を完全に喪失していることが明らかになった。 世界中の労働者の70%以上が、意義のある働き方を望 […]
- 米国では、リモートワークの流行から昨今のオフィス回帰の流れを経て、多くの従業員が退屈症候群に陥り、仕事への意欲を完全に喪失していることが明らかになった。
- 世界中の労働者の70%以上が、意義のある働き方を望んでおり、仕事の意味や価値について以前とは異なる新たな評価を持つようになった。
- 物事を難しく、面倒にし、仕事の達成を妨げている摩擦を取り除くことを従業員は雇用主に求めており、たとえばその摩擦とは「オフィス回帰」が挙げられる。
パンデミックをきっかけにリモートワークへの移行が起こり、大離職時代を経てオフィス回帰の流れが強まるなか、従業員の仕事に対する意欲に変化が起きている。
米国では今、従業員の半数以上が仕事に対する意欲を完全に失い、「ボアアウト」と呼ばれる退屈症候群に陥っていることが、ビデオ会議システムを手がけるオウル・ラボ(Owl Labs)の新たなリポートで明らかになった。このリポートは、同社が6月に米国の2000人以上のフルタイム従業員を調査した結果をまとめたものだ。
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退屈症候群は、多くの人が仕事を辞めて新しい役割を見つけるきっかけとなった、ここ数年の「バーンアウト(燃え尽き症候群)」とは異なる現象だ。燃え尽き症候群は、自分の仕事から受ける刺激が強すぎるという特徴があるのに対し、退屈症候群は仕事から受ける刺激がなさすぎるという感覚を特徴としている。
仕事の意味や人生における仕事の位置づけを深く考えるように
また、最近のデータもこの退屈症候群の問題をよく示している。ギャラップ(Gallup)が6月に発表した「State of the Global Workplace: 2023 Report」と題するリポートによれば、世界中の労働者の70%以上が、「単に出社する以上の理由を雇用主がもたらすことを待ち望んでいる」と答えていた。
そのような従業員は、「会社に姿を見せたりコンピューターにログインしたりしているかもしれないが、何をすべきか、またなぜその仕事が重要なのかわかっていない。また、同僚や上司、または組織からのサポートもない」と、この報告書は記している。
「パンデミックは一瞬にして、職場のダイナミクスを根本的に変え、多くの従業員が自分の仕事の意味や人生全体における仕事の位置づけを深く考えるようになった」と話すのは、ハイブリッドワークフォースプラットフォームを手がけるライジング・チーム(Rising Team)のCEO兼創設者、ジェニファー・ダルスキー氏だ。「そのため、彼らは本当の意味を見い出せる仕事に関して、以前とは異なる評価と高い基準を持つようになった」と、同氏は言う。
仕事を面倒にする摩擦
ガートナー(Gartner)で人事リサーチディレクターを務めるケイトリン・ダフィー氏は、従業員が仕事に対する意欲と熱意を持たず、モチベーションを高めることができない状態は、「組織の成果の達成にとってよいわけがない」と話す。もっとも、雇用主はこのことに気付き、従業員の意欲を高めようと試みていると、同氏は言う。
たとえば、企業文化を変えたり、自社の使命や価値観を明確に伝えたりするといった取り組みだ。また、従業員が自分の専門的な能力を開発できる機会を充実させようとしている。
しかしながら、意欲を失った従業員は「自分にとって困難なことを解決してほしいと思っているにすぎない」と、ダフィー氏は指摘する。従業員が雇用主に求めているのは、「非効率的なプロセスを改善すること、そして物事を難しく、面倒にし、仕事の達成を妨げている摩擦を取り除くことだ」と、同氏は語る。
多くの従業員にとって、そのような摩擦のひとつがオフィスへの復帰だ。オフィスに戻る日が週5日ではなく、週数日のハイブリッドな形態であっても、これまでの仕事のルーティーンを根こそぎ変えなければならない。同時に、「多くの従業員が、いくらフィードバックを返しても組織が行動を起こすとは思えないと述べている。そのため、彼らは徒労感に近い感覚を味わっている」と、ダフィー氏は語った。
オフィスへの復帰は間違い?
リモートワークからハイブリッドワークへの困難な移行は、多くの従業員にとって仕事を難しくする課題のひとつとなっている。以前から求められている仕事量をこなすだけでなく、通勤や余分な業務に時間を取られるからだ。
「企業は従業員をオフィスに戻そうとしているが、労働者は明らかに落ち着きを失い、また仕事への意欲を失っている。雇用主のオフィス復帰計画にとって、どちらもよいことではない」と、オウル・ラボでCEOを務めるフランク・ウェイスハウプト氏は言う。
また、「オフィスの復帰を義務付けることで、従業員は自分が評価も信頼もされておらず、自律性を尊重されていないと感じる可能性がある。このような感覚はいずれも、従業員の仕事に対する意欲や、自分が働く組織に対する意識に影響を与えるものだ」と、ダルスキー氏は語った。
[原文:‘Boreout’ replaces burnout for disengaged workers]
Hailey Mensik(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)