「ボンドビルディング」(毛髪内部の壊れた結合を修復する)が、ヘアケアの次のイノベーション領域となっている。2021年は、ボンドケア(毛髪のダメージを補修)のためのヘアケア製品やブランドが次々と登場した。たとえば新ブランドであるK18は、急速に成長している。
「ボンドビルディング」(毛髪内部の壊れた結合を修復する)が、ヘアケアの次のイノベーション領域となっている。
2021年は、ボンドケア(毛髪のダメージを補修)のためのヘアケア製品やブランドが次々と登場し、ダメージを受けた髪を補強したり、なめらかにしたり、修復したりといった選択肢を消費者に提供している。たとえば新ブランドであるK18は、2020年12月に消費者向けにローンチされ、3月にはプロ製品をヘアサロンへと展開して急速に成長している。2400万ドル(約26億4600万円)のベンチャーキャピタルを得たK18は、現在、ロサンゼルスとテキサス州オースティンでOOH(屋外広告)のブランド認知キャンペーンを実施している。
一方、ジ・インキーリスト(The Inkey List)は、2021年1月に単発のボンドリペア製品をローンチ、アミカ(Amika)は、2月に4種類のボンドリペア製品コレクションをデビューさせている。8月30日にはフィリップキングスレーヘアケア(Philip Kingsley Haircare)が1種類のボンドビルディング製品をローンチした。またセバスチャンプロフェッショナル(Sebastian Professional)は、9月1日にアルタビューティ(Ulta Beauty)と共同でボンディングとスタイリング用の洗い流さないタイプのリーブインスプレーをローンチしている。
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髪のスキンケア化をアピールするK18
ボンドビルディングやボンドリペア製品といって消費者が思い浮かべるのは、2014年に初めてローンチされたオラプレックス(Olaplex)だ。新規のブランドや製品は、オラプレックスと激しく競合することになる。たとえば、K18はすでに2022年末までに80カ国での展開を計画しており、プレステージビューティ(高級美容品)市場の小売にも参入している。現在K18は全世界で2万店舗のサロンで販売されているが、一方のオラプレックスは米国だけで50万人近くのヘアスタイリストが同社の製品を使用するなど、これを凌駕している。
K18のOOH広告キャンペーンは、ロサンゼルスで8枚のビルボード、オースティンで3枚のビルボードで構成されている。ロサンゼルスでは8月19日から20日にかけて、ブランドのアイスキャンディ・トラックが数カ所に出現し、商品のサンプリングやお菓子を配布した。オースティンではK18がスポンサーとなったペディキャブ(人力三輪車)20台が、業界カンファレンスであるビハインド・ザ・チェア(Behind The Chair)の会場まで運行した。カンファレンスにはK18も専用ブースを出店している。その広告には「効果がある。本当に」「すべてを疑え。これまでヘアケア業界が伝えてきたことも」といったキャッチコピーが使われていた。
「K18にとって髪のスキンケア化とは、(肌に効く)レチノールのように(毛髪の)奥深くに入り込むことを意味している。これまでのヘアケア製品が長年行ってきたような、メイクアップのように表面的なものではない」とK18のマーケティングシニアバイスプレジデントのミシェル・ミラー氏は言う。
各ブランドの製品価格帯
オラプレックスが自らを「テクノロジー企業」と称しているように、K18は自らをバイオテック企業としてブランド化しようとしている。だがK18は、どのような髪質であっても、その人に必要とされる唯一のヘアケア製品のブランドであると位置づけようともしている。このラインにはたったひとつの製品しかなく、販売価格は75ドル(約8300円)だ。
ジ・インキーリストも単品のボンドビルダーしか販売しておらず、価格は約13ドル(約1400円)である。 フィリップキングスレーの製品は42ドル(約4600円)、セバスチャンプロフェッショナルの製品は34ドル(約3800円)となっている。かたやオラプレックスは現在、シャンプーやマスク、オイルなど8種類のボンディング製品をそれぞれ28ドル(約3100円)で販売しており、アミカのシリーズはサイズによって18ドル(約2000円)から64ドル(約7100円)となっている。7月には、オラプレックスは2014年以来のサロン向けのプロ用サイズ製品をローンチした。
ひとつの製品で勝負に挑むジ・インキーリスト
ジ・インキーリストの共同設立者であり、CEO兼主任化学者のマーク・カリー氏は、「(追加の製品は)簡単に使えるという我々のブランドの原則に反するものだ」と話す。「たったひとつのことをするために複数のステップを踏む製品に我々は興味はない。我々の製品は、ストレートヘアかカーリーヘアなのかを問わず、多くの人が必要としていると思われる効果をワンステップで実現する」。
カリー氏は、ジ・インキーリストが製品の教育やマーケティングにそれほど多くの時間を費やしていないことを認めているが、ブランドが新規小売店(現時点では非公表)に進出する2022年前半には、これに対応する計画があると述べている。
先駆的ブランドのオラプレックスの自信
オラプレックスは、ロレアル(L’Oréal)との間で特許侵害をめぐって長期に渡って法廷闘争を繰り広げていることで注目されていたが、米国連邦巡回控訴裁判所は5月、デラウェア州連邦裁判所が下した6600万ドル(約72億8600万円)のオラプレックスの勝訴判決を棄却した。オラプレックスの声明によるとロレアルとオラプレックスはその後すべての法的紛争について「友好的な合意」に達しており、その条件は公表されないとのこと。
オラプレックスCOOのティファニー・ウォルデン氏は、「オラプレックスはボンドビルディングという分野を生み出し、7年経った現在でもこの分野ではナンバーワンのブランドである」と述べている。「当社独自の特許技術は、切れてしまったジスルフィド結合を再結合させて強化するというもので、再びダメージを受けるまで髪を永久的により健康な状態にする。『ボンディング』カテゴリーだと称するほかの製品は、オラプレックスのようには機能しない」。
[原文:Bond-building becomes next area of focus for hair care]
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)