ロジスティックス投資を増やす、 ウォルマート の狙い:eコマース強化のため

ウォルマート(Walmart)は、自社のeコマースと配送機能の成長とともに、自社のロジスティクスネットワークについても強化を進めようとしている。

新規のトラック運転手を採用するため予算を2倍に増加しようとしているという報道も出た。配送センターから実店舗へ、商品を素早く確実に配送することが目的だ。実店舗は全国のeコマース客への対応も行っている。

ウォルマートから、本記事に関するコメントはもらえなかった。だが、アナリストたちによると、自社ドライバーのチーム規模は拡大しており、実店舗を訪れる客と、eコマース客の両方からの需要に対応しているという。トラック運転手の労働市場は厳しくなっている。運転手たちの高齢化が進み、新しく運転手として労働市場に参入する人手が減っているからだ。運転手の数を増強することで、ウォルマートはこの問題に早くから取り組んでいる形になる。

今年の第二四半期にウォルマートのeコマース分野は40%の成長を見せた。さらに実店舗を持っているウォルマートはそのインフラを活用することでオンラインのみのリテーラーとも差別化を行っている。オンラインで商品を購入し、自宅に配送してもらうだけでなく、商品を実店舗で受け取ることができる、といった具合だ。生鮮食品などの配送、実店舗での受け取りサービスはいまも成長中で、現在全米の1800店舗で可能となっている。

買収した企業スペイシャランド(Spatialand)を通じて仮想現実(VR)にも試験的に取り組んでいる。スペイシャランドはウォルマートが抱えるスタートアップ・インキュベーター、ストアー・ナンバー8(Store No. 8)の一部だ。彼らが持っている物理的なインフラを増強することで、競争優位を得ようとしている。そんななかで、自社が抱える運転手チームを拡大することは、非常に重要となっている。

まったく異なるルール

「リテーラー間で土地の争奪戦のようなものが大規模に行われている。ロジスティクス、配送といった要素が顧客にとっては非常に重要な判断材料となってきており、長距離運転手たちが会社にとっては重要な財産となっているのだ。そこに投資をしなければ遅れをとってしまう」と語ったのは、eコマースブランドをクライアントに抱えるデータ分析企業、ヤグアーラ(Yaguara)のCEO、ジョナサン・スモーリー氏だ。

サプライチェーン分野では商品が最終的な目的地(この場合は顧客の自宅など)に届く運送プロセスを「ラストマイル」と呼ぶが、昨年、ウォルマートはラストマイル配送企業のパーセル(Parcel)を買収している。また、そのさらに前年には、eコマーススタートアップであるジェット・ドットコム(Jet.com)も買収。これらはサプライチェーンを改善するためのウォルマートの大規模な投資の一環だ。そして9月初旬、同社は自社によるラストマイル配送の新しいプロジェクトも開始した。運転手の数を増強したことでロジスティクス面がさらに補強され、Amazonともより効果的に競争できるようになっていると、スモーリー氏は言う。

「Amazonは完全に分散型のロジスティクス企業として構築されている。ウォルマートは、同じレベルのロジスティクスインフラを持ってはいない。実店舗に加えてオンラインストアを経営するというのは、まったく異なるルールが適応される。Amazonよりもより多くの人員が必要となるのだ」と、彼は説明した。

Amazonの競争優位

実店舗を持つリテール競合他社との競争においても、ロジスティクスネットワークの効率性がウォルマートの持つ競争優位だった。現時点でウォルマートは7500人の運転手、6500台のトラックを抱えており、商品を150の配送センターと全米に広がる5400の実店舗(ここにはサムズ・クラブ[Sam’s Club]も含まれる)の間の配送を実現している。オンラインでは商品が売り切れていたら消費者は競合他社のサイトにすぐに移ってしまうものだ。そんな時代の競争に合わせて、ロジスティクスのモデルを進化させることがウォルマートの課題である。

「競争するためには、ウォルマートやほかのすべての伝統的な実店舗リテーラーたちは、常にサプライチェーンを刷新する必要がある。そうして、彼らが持っている在庫を全国規模で消費者に届ける必要があるのだ。そこで、根本的に必要となっているのが商品をひとつの場所から別の場所へと輸送する人員だ。いまの消費者たちは、商品は常に在庫がある状態で、すぐに配送されることを期待している」と語ったのは、ガートナーL2(Gartner L2)のクライアント戦略部門ディレクターであるトム・ゲハーニ氏だ。

Amazonはウォルマートよりも多くの配送センターを抱えている(報道によると329カ所とされている)。また実店舗のロケーションが少ないため配送センターネットワーク内における在庫をより効率的に動かせる。これがウォルマートと比べた場合のAmazonの競争優位だ。

縦方向の統合が狙い

運転手の数を増やすことで自社が抱えるロジスティクス機能を増強するにはコストがかかる。しかし、データが集まることで、ロジスティクスモデルをさらに進化させ、オペレーションを加速させることにつながるだろう。

「体験をコントロールし、データを社が所有すること、そこに集約される。表面的な部分だけを見ていると、プロセスをアウトソーシングした方が安くつくと思えるかもしれない。しかし、ウォルマートはロジスティクスを通じて、縦方向の統合をさらに進めようとしていることが分かる。それによって運転手の利用率、最適ルート、天候といったあらゆるデータを社で抱えることができるのだ」と、スモーリー氏は語った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)