お料理セットのサブスク業者、「小売」戦略の推進で大痛手:ブルーエプロンの四苦八苦

ミールキット宅配業界最大手ブルーエプロン(Blue Apron)が、四半期ベースで何万もの定期購入者を失っている。この収入減を多少でも取り返すべく、同社は現在、既存客の出費増と、消費行動や嗜好が定期購入者に近い新規顧客の獲得に注力している。

そのためにはまず、高い定着率とブランドアフィニティを有する顧客グループへの積極的働きかけが有効だと、CEOブラッド・ディッカーソン氏は語る。さらに、同社は経費のかさむ単独行動ではなく、外部の小売業者の力を借りる道を選択した。現在、米ダイエット業界大手ウェイト・ウォッチャーズ(Weight Watchers:以下、WW)と組み、彼らの会員をブルーエプロンの定期購入契約へと誘う一方、米通販サイト、ジェット・ドット・コム(Jet.com)にブルーエプロンのミールおよびミールキットを販売させている。WWおよびジェットにとっての利点は、健康食品への出費に抵抗が少ない顧客へのアクセスにある。

2018年度の第4四半期、ブルーエプロンの顧客の平均注文価格は第3四半期に比べて1.33ドル(約146円)微増の58.12ドル(約6422円)、顧客1人あたりの平均収益は第3四半期に比べて19ドル(約2099円)増の252ドル(約2万7845円)だった。だが、純収入は前年比25%減の1億4070万ドル(約155億円)、顧客数は12月31日現在で55万7000人――前四半期比8万9000人減、前年比18万9000人減だった。ただ、チーフファイナンシャルオフィサー、ティム・ベンズレー氏いわく、顧客数は今後も減少することが予想されるが、これはあくまで同社の焦点がハイバリュー顧客の獲得および定着に移った結果だという。実際、これは昨年後半に開始された方針変更の一環であり、同社はサービスの柔軟化を図っている。顧客の選択肢の増加もそのひとつで、小売業者を介した流通、手軽なプラン変更、より手早く作れる献立、期間限定の特別ミールキットの提供などがこれに含まれる。

内存する根本的問題

現時点で、ブルーエプロンはパートナーシップに社運を賭けているようにも思える。だがこの戦略では、彼らのビジネスモデルに内存する根本的問題には対応できないと、アナリストらは見ている。ブルーエプロンはレストランの宅配サービスとスーパーマーケットの中間というなんとも微妙な位置にあり、そのせいで、潜在的顧客層のなかのごく限定的なグループにしかリーチできないという弱点を抱えている。これは実際、ほかのフードデリバリースタートアップが伸び悩んでいる原因にほかならない。

市場調査会社フリードニア・グループ(Freedonia Group)のアナリスト、カーラ・ブロシアス氏は、小売や柔軟な注文対応を導入した同戦略では、このビジネスモデルを持続可能にはできないと指摘する。ブルーエプロンは一方、リテールパートナーシップ戦略のさらなる推進を考えており、他のパートナー候補と話し合いを進めているという。加えて、同社は小売製品の選択肢も増やしていく。2月1日から、7.99ドル(約882円)の簡易版ミールキット、ニック・ナック(Knick Knack)を導入し、ジェット・ドット・コムで販売を始めた。これはソースやスパイス、穀物など、献立の基本的材料のみをセットにしたもので、必要な野菜やタンパク質は顧客に好きなものを店頭で購入させる。

「ブルーエプロンはパートナーシップを通じてオンライン注文の選択肢を増やし、それで顧客ベースの拡大を狙っているが、これでは十分とは言えない」と、ブロシアス氏は語る。「ミールキットの定期購入/宅配サービスというビジネスモデルはそもそも、多くの潜在的顧客にアピールするものではない。ふと思い立って料理をする人は少なくないし、そういった場合、一般的にジェット・ドット・コムからミールキットが届くのをわざわざ1~2日も待ちたいとは思わないはずだ」。

手を広げすぎる危険

ブルーエプロンはWWとのパートナーシップを特定の顧客グループ――この場合、WWの既存会員――へのフォーカスが収益増の一助になる好例だと断言し、今年度後半には結果が出る見通しだと自信を見せている。一方、いまはなきフードデリバリースタートアップ、スプリグ(Sprig)の共同創設者モーガン・スプリンガー氏は、WWを介した販促は戦略として正しいが、店頭で購入した食材と合わせて使えるキットをはじめ、小売の選択肢を増やす手法には、相応のリスクが伴うと指摘する。

「WWとのコラボは賢い一手だ。WWの会員層は非常に限定的であり、特定のニーズに合わせて商品を作れる。(しかし)ミールの中身を減らし、『野菜は個々に好きなものを買わせる』というアプローチには懐疑的だ。これでは、スーパーマーケットに数多あるブランドのひとつに過ぎなくなるうえ、彼らにはもともと、小売業界での経験が圧倒的に不足している」。

ベンチャーキャピタルで200万ドル(約2.2億円)近くを調達後、2017年に株式公開した新興企業ブルーエプロンは、次世代の小売モデルを四半期ごとに株主の厳しい目に晒すという新たな構図の一例であり、そのプレッシャーから、生き残りを賭ける同社が必要以上に手を広げてしまうことは十分に考えられる。スプリンガー氏いわく、ブルーエプロンにとって最大の希望の星は、幼い子供を持つ親向けのミールキットや特定の食習慣に合わせたキットの販売など、可能な限りのニッチ化の推進だという。手を広げすぎると、ほかとの差別化を図れなくなり、顧客を定着させるだけの個性を失いかねないと、氏は指摘する。

「彼らにとって最大のリスクは、多くを追い求めすぎることで、社のバリュープロポジション(価値命題)を失うことだ。『自炊でもテイクアウトでもなく、なぜミールキットを買うのか』――その大前提を忘れるべきではない」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)