いま注目を集めつつある、黒人オーナーの CBDブランド :「簡単に資金調達を受けられる特権はなかった」

美容業界では、黒人が創業した美容ブランドへの支援の輪が広がっている。セフォラ(Sephora)やクレド(Credo)といったビューティー専門小売企業が店舗の商品の15%以上を黒人オーナーブランドの商品にする「15%プレッジ(15% Pledge)」運動に参加しているほか、投資家たちも自分たちが黒人による事業を成功させるために自分たちが果たすべき役割を認識し始めている。

だが、美容健康分野の有色人種の創業者が特に偏見の目で見られやすいのが、大麻関連の製品だ。

成功しているのは白人のブランド

米国では農業法(Farm Bill)の通称で知られる農業改良法(Agriculture Improvement Act of 2018)が2018年12月に可決されて以来、多数のCBD(カンナビジオール)ブランドの商品が全米の小売店で一気に売られるようになった。

美容系チェーンのアルタ(Ulta)はCBDブランドのカヌカ(Cannuka)の商品を、セフォラはロード・ジョーンズ(LOAD JONES)の製品を店舗で大きく取り扱っており、さらに2月からはじめたCBD標準化イニシアチブの一環としてプリマ(Prima)、セント・ジェーン(Saint Jane)、フローラ+バスト(Flora + Bast)といった複数のCBDブランド製品も販売している。ドラッグストアのCVSもセイジリー・ナチュラルズ(Sagely Naturals)をさまざまな地域で取り扱っている。

このように各社がCBDブランドの販売に乗り出し話題となっているなかで、黒人が創業したCBDブランドは注目されてこなかった。これはパンデミック下における健康やストレス、不安に対する大麻成分の効果が注目されている中でも変わっていない。

CBDを用いたスキンケアブランドのアンディファインド・ビューティー(Undefined Beauty)の創業者兼CEO、ドリアン・モリス氏は「注目されているCBDブランドには共通点がある。いずれも創業者が白人なのだ」と語る。

潜在的な差別の存在

美容健康ブランドを創業した黒人女性としてモリス氏は、上述のブランドが成功した要因として次の点を指摘している。「白人創業者のブランドは資金を得やすく、効果的なネットワークに参加しやすい傾向にある。たとえばプリマは女優のジェシ・アルバが立ち上げたマタニティブランド、オネスト・カンパニー(The Honest Company)とのつながりで支援を受けている」。さらに深刻なのは、長期的な「システム面」での不平等だという。

「黒人のブランドは価値が低い、あるいは黒人のみに向けたものだとみなす偏見や潜在的な人種差別がある。そのために小売企業のなかには黒人のブランドはビジネスチャンスにつながりにくいと考えるところも少なくない」とモリス氏は語る。「黒人や褐色人種のコミュニティは麻薬戦争のイメージと結び付けられ、商業化への道は険しい。黒人で大麻ブランドを作るとなると、特に議論を呼んだり問題視されやすい」。

CBD成分を用いたヘルスケアブランドのフリッグ(Frigg)の創業者で、大麻成分のコンサルサービスをおこなうプラント&プロスパー(Plant & Prosper)を運営しているキンブリー・ディロン氏(同氏も黒人女性だ)もこれに同意する。「私たちのところにはCBDの痛み止めクリームを販売したいという資金力の豊富な白人創業者はたくさん来る。彼らは自分たちが『麻薬の売人』だと思われる心配もいらず、商品やブランドの差別化に頭を悩ませることもない。親戚やCVSから大金を出資してもらっており、そもそもそんな懸念は不要なのだ。こういった大きなバックがついていることはそれだけで大きなアドバンテージになる」と同氏は語る。

黒人創業者は失敗できない

この2年間、全米で美容における大麻成分が大きな注目を集めており、CBDはその先駆けとなっている。市場調査会社のブライトフィールド・グループ(Brightfield Group)はレポートのなかで、2020年に米国のCBD市場の売上は前年比で14%伸び、47億ドル(約5000億円)に達すると予測している。だが大麻所持は連邦レベルでは依然として違法なため、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)によれば2018年には約70万人が大麻所持で逮捕されている(麻薬に関連する逮捕全体の43%以上)。さらに使用率はおおよそ同じにもかかわらず、大麻による黒人の逮捕率は白人よりも3.7倍多くなっているのだ。

「明確な形をとらない偏見はさらに大きい。各社はこの不透明なCBD業界を本当の意味で切り開こうとしているのではなく、目の前の商品に飛びついているだけなのだ」とディロン氏は語る。同氏のブランドのフリッグは7月にローンチし現在はD2Cモデルでの販売を主軸としている。

ディロン氏は黒人オーナーの小規模ブランドの商品は大きな資本が求められる在庫やマーケティング、サンプリングの課題をクリアするのが難しく、セフォラやCVSといった大型店舗には並ばないのだと語る。「小売やパートナー企業が本当の意味で人種差別に反対するのであれば、黒人オーナーのこういったブランドが成功できる舞台を整えなければならない。バリューチェーンやサプライヤー全体を評価し直し、1万個規模の大きな発注に対応できないブランドのために在庫注文を減らすといった取り組みをすべきだ」と同氏は指摘する。

だがBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター:BLM)の盛り上がりと企業による黒人差別問題への対応を消費者たちが要求するなか、ディロン氏はCBD分野における黒人創業者への対応はその企業の姿勢を見定める判断材料になると述べている。「BLMに積極的に取り組まないのであれば、こちらもその企業に積極的に投資はしない」と同氏は語る。それでもなお、黒人のCBD創業者には間違いを犯せないというプレッシャーがのしかかる。

「自分には一度きりしかチャンスが与えられていないと感じる。これは黒人にとっては一般的なことだ。白人男性の創業者であれば簡単に多額の資金調達を受けられるが、そういった特権は私たちにはない。アンディファインドが資金を獲得できるように、非常に念入りな準備が必要だった」と、ケンドー・ブランズ(Kendo Brands)、コティ(Coty)、サンダイアル(Sundial)といった名の知られたビューティーブランドに勤め、ハーバード・ビジネス・スクールのMBAを持つモリス氏は語る。アンディファインド・ビューティーがこれまで小売企業と作り上げた提携関係は、公式のピッチではなくモリス氏を見出した企業を通じたものだ。たとえば、ノードストローム(Nordstrom)が展開するD2Cブランド向けポップアップストアのポップイン(Pop-In)を介して、有名セレクトショップのキス(Kith)やノードストロームと提携し、8月に販売を開始する。

注目を集めつつあるが

モロッコスタイルの植物美容ブランド、デヒヤ・ビューティー(Dehiya Beauty)の創業者兼CEOのミア・チェイ・レディー氏によれば、CBD分野の黒人創業者はいま消費者やメディア、小売企業から大きな注目を浴びているという。同ブランドではスキンケアやカラーコスメを販売しており、11商品中4商品ではCBD成分を使用している。黒人オーナーのブランドのための運動が広がるなか、人気ライフスタイルブランドであるカップケークス&カシミア(Cupcakes & Cashmere)のECサイト上でリップやチークが完売するなど同ブランドの売上は大きく伸びている。それに応じて同社は現在、予約注文を受け付けている。

「当社は素晴らしい製品を提供しているが、それ以上に美容や人種、アイデンティティにまつわる議論につながっていることが嬉しい」とチェイ・レディー氏は語る。「10年前であれば創業者は表舞台に出てこなくてもすんだかもしれない。だが今の消費者は最初から創業者とブランドの物語や、創業者の名前すら知りたがるものだ」。

ほかのブランドと同様、デヒヤ・ビューティーの商品を扱いたいというリクエストも増えている。現在チェイ・レディー氏は6社と商品販売について話し合っており、ノードストロームのポップインで8月に販売を開始するが、その「目的」を注意深く見極めようとしているという。ジョージ・フロイド氏の事件の前はさまざまな業者にメールを送っても営業をしても梨のつぶてだったにもかかわらず、今では問い合わせが相次いでいるためだ。「人種差別や不平等についての宣言に行動が伴っていなかったことを認め、謝罪するのはありがたいことだ。だが私に投資してくれるパートナーをしっかりと見極めなければならない」と同氏は語る。

たとえばデヒヤ・ビューティーが以前商品を販売していたアパレル小売のアンスロポロジー(Anthropologie)は、人種差別的なプロファイリングによって来店者を監視していたとして炎上している。チェイ・レディー氏はアンスロポロジーのデヒヤ・ビューティーに対する理解や営業が不十分だと感じ、もっと店頭販売に力をいれてほしいと訴えていたが、2週間ほどして取り扱いをやめると通知されたという。コロナ禍がはじまる直前の頃だ。

「CBDが注目されているから手を出したが、内容を理解していなかったのだと思う。成功するかの確信もなかったのではないか」とチェイ・レディー氏は語る。「現在はD2Cモデルでの販売に力を入れているが、量より質を重視せざるをえない」。アンディファインド・ビューティーのモリス氏もまた、アンスロポロジーで似たような経験をしたという。

黒人であることが「告白」可能に

麻薬戦争のイメージもまたCBD業界の黒人創業者にとっては大きな障害となっている。ホームボディ(Homebody)の創業者兼CEOのレベッカ・グラマー・イバラ氏は、黒人のCBDブランド創業者であることを「告白」できたのは今年の6月中旬になってからだという。

「それ以前は、ホームボディの創業者が黒人だとは誰も知らなかった。SNS上でブランドとしての物語や自分の体験については非常にオープンにしていたが、自分の顔を載せたことは一度もなかったのだ」と同氏は語る。「非常に不安だったためだ。SNSでは大手ブランドの人材やCBD創業者のほとんどが白人で、私が作り上げたホームボディのコミュニティも大半が白人だった。自分たちの商品が素晴らしいことも、カスタマーが商品をとても気に入っていることも分かっている。だが私が黒人だと分かっても支持してくれるか不安だった」。同社は創業から1年ほどのブランドだ。

フロイド氏の殺害以降、ホームボディのインスタグラムアカウントのフォロワーは5000人増え、卸売企業のアカウントから次々に問い合わせが来るようになったという。予約注文は8月まで一杯の状態だ。さらにビューティーメディアのセルフ(Self)や、歌手のビヨンセの公式サイト上で黒人オーナー企業のリストにも掲載された。グラマー・イバラ氏は、支援を熱望する小売企業やエージェンシー、カスタマーからの問い合わせを多く受けたことで、黒人のCBD企業の創業者として表に出る決心がついたという。

「黒人オーナー企業として公表しても良い時期になったと感じ、嬉しかった」と同氏は語る。「多少その意図が気になる部分もあるが、ホームボディと提携したいと考えている小売パートナー企業からは計画や戦略について喜んで話を聞くつもりだ。だが今、こういった企業に対して厳しく追求することが必要だ。彼らに対し、社会的正義やシステム上の人種差別、そして変化のために何を行っているかといった重要な質問を投げかけ、パートナーを吟味したい」。

[原文:Black CBD founders find their place in surging support for Black Lives Matter

PRIYA RAO(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)