あえて Amazon 独占販売を選ぶ、新興 D2C 企業たちの狙い : カミソリのビックの場合

ビック(Bic)は、Amazonと商品の限定販売契約を結んだ最新のブランドだ。

現在、ビックの男女向けカミソリ「メイド・フォー・ユー(Made For YOU)」はAmazonで独占販売されている。同シリーズは、男女問わず使用できるカミソリで1本8.99ドル(約970円)から売られている。色は4色から選ぶことができ、替刃も4枚、8枚、12枚入りのパッケージオプションが展開されている。ハリーズ(Harry’s)やビリー(Billie)といったほかのD2C(Direct to Consumer)ブランドもカミソリのスターターセットを9ドルで、4枚入りの替刃を9から10ドルで販売している。メイド・フォー・ユーも4枚入りの替刃が9.99ドルで、これらブランドに合わせた価格設定だ。ビックのほかのカミソリは男性向けと女性向けに別れており、Amazon上でより安い価格帯で展開されている。たとえばカミソリの持ち手部分と替刃4枚セットが5.49ドル(約590円)から、使い捨てカミソリは6ドル(約650円)から9ドル(約970円)で販売されている。

替刃はAmazonの定期おトク便の対象商品となっている。定期おトク便は1カ月から6カ月までの周期で定期的に商品を購入するかわりに、5から15%の割引を受けられるプログラムだ。メイド・フォー・ユーの全商品は、Amazonプライムのメンバーであれば無料で翌日配達を受けられる。

Amazon提携のメリット

ピュブリシス(Publicis)の最高商業責任者、ジェイソン・ゴールドバーグ氏は「Amazonの定期おトク便は、デジタルブランドとの競争にさらされているブランドにとって限りなく魅力的だろう。既存のブランドにとって、デジタルネイティブなブランドと戦える簡単で面倒のないソリューションなのだ」と指摘する。いまやサブスクリプションのカミソリ企業はD2C市場にあふれるほど存在する。ビックは競争に勝ち抜くため、Amazonのプラットフォームと、フルフィルメントや迅速な配達、プライムの加入者層といったメリットを活用しているのだ。

Amazonとの独占販売プログラムの一環として、ビックはAmazon Vineの先取りレビュープログラムの対象にもなっている。Vineは、Amazonをよく利用しているレビュアーのなかから選ばれた「Vineメンバー」に無料で商品を送る代わりに、その商品のレビューを書いてもらうというプログラムだ。メイド・フォー・ユーの商品はそれぞれ、Vineメンバーによる30のレビューがついている。VineはAmazonで販売するファーストパーティのベンダーであればどの企業でも利用できる。だが掲載レビュー数は最大5個で、商品の掲載自体に1商品あたり60ドル(約6500円)かかる。

ビックのほかにも、ダイエットシュガーの「イコール(Equal)」を販売するメリサント(Merisant)、GNC、レギンスとマットレスを販売するタフト&ニードル(Tuft & Needle)などがAmazonと独占販売契約を結んでいる。Amazonだけで販売する商品を開発するかわりに、Amazonから「我々のブランド」とみなされ、さまざまなメリットを享受できる。たとえばAmazon Prime Day(プライムデー)や休暇シーズンに優先的に宣伝されるほか、Amazon自身による広告やマーケティングやVineレビューを利用できる。さらには商品開発でAmazonによる分析も受けられる。

Amazonの最新動向

Amazonは小規模な販売業者をサードパティ用のマーケットプレイスへと移している。それにともない、ファーストパーティのマーケットプレイスには誰もが知るナイキ(Nike)やダイソン(Dyson)といったブランド、Amazonのプライベートブランド、Amazonの独占販売ブランドなどが占めるようになっている。Amazonは以前はプラベートブランドに力を注いでいたが、いまでは独占販売ブランドをより重視するようになっている。独占販売であれば、商品開発と製造という大変な業務を行うのは提携企業だからだ。こうした業務はブランドにとっては日常的なものだが、Amazonにとっては不慣れでもある。

ガートナーL2(Gartner L2)のAmazonインテリジェンス(Intelligence)チームで上級主席アナリストを務めるオウェイシ・カージ氏は「Amazonが独占販売を重視するのは非常に理にかなっている」と指摘する。「Amazonとブランドはウィンウィンの関係だ。Amazonは研究開発費や製造調達費を負担してくれるブランドを獲得、提携できるようになる。そしてブランドはAmazon独占販売として注目を集められるのだ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)