ブランド各社にとって2017年は、音声検索の年になると言われてきたが、現状で果たしてそうなっているかというと疑問が残る。Googleも、現在の検索やアプリ、広告、オンライン取り引きのように音声検索を収益化するには、あと数年かかるとしている。ここで音声検索広告の現状を示す3つのチャートをご覧いただこう。
ブランド各社にとって2017年は、音声検索の年になると言われてきたが、現状で果たしてそうなっているかというと疑問が残る。
Googleも、現在の検索やアプリ、広告、オンライン取り引きのように音声検索を収益化するには、あと数年かかるとしている。Googleのパフォーマンスメディア部門バイスプレジデントのジェイソン・スペロ氏によれば、いまのところ同社は、ビジネスモデルとしての音声検索や、音声検索の際の広告に関する構想には、さほど時間を割いていないとのことだ。
「音声検索のビジネスモデルの基礎を作る際には、当社がアプリやオークション、取り引きから得た豊富な経験が複合的に助けになるだろう」と、同氏は話す。ここで音声検索広告の現状を示す3つのチャートをご覧いただこう。
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音声検索における広告販売の将来
Googleが音声検索で広告を販売することに慎重な理由のひとつが、ユーザーの信頼を損ねかねないことだ。もしGoogle Homeから返ってくる答えがスポンサードされた製品やサービスばかりだとしたら、いったい誰が信頼するだろうか。Google自身がまるで広告塔のようになってしまうとは考えにくい一方で、音声広告は画面に表示される広告のように無視できない点も見過ごせない。自分の質問の答えの前に長々と広告を聞かされたいと思う人など存在しない。
だからスペロ氏によると、ユビキタスな音声検索に取り組む最初の段階で、Googleが重視するのは顧客体験だという。今年はじめにGoogleが行ったアンケートでは、音声検索特有の顧客体験上の問題点を指摘した人が大半だったそうだ。アンケートに答えた3000人のうち半数以上(57%)が、もっと複雑な指示ができるようになれば音声検索を使うと回答した。また58%の人がより詳細な検索結果が知りたいと答えている。
JWT(J.Walter Thompson)がイギリス、アメリカ、ドイツ、スペインのスマートフォンユーザー1000人を対象に行った別の調査でも、このGoogleのアンケートを裏付ける結果が得られたという。音声検索を使う可能性があるユーザーの多くが、音声検索がタッチやタイプより優れた部分があるとは感じていない。実際に、音声検索を使わないユーザーの29%は「なぜ使う必要があるのか分からない」と答えている。特に懐疑的な見方が強いイギリスとドイツでは、この割合はそれぞれ48%と39%に跳ね上がる。
スペロ氏は音声検索を市場に送り出す前に解決すべき点があるとしている。スペロ氏のチームが現在力を注いでいるのは、パーソナルアシスタントへの人々の受け止めかたを決めてしまうほどのインパクトを持ったグローバルトレンドが何かを考えることだ。
いまのところ、Google Homeでできるのは取り引きのような複雑なタスクではなく、Spotifyのプレイリストの再生やバスケットボールの試合のチケットの注文などとなっている。
「この分野はまだはじまったばかりで、いまはこうしたデバイスで世間の人が何をしたいのかを探っている状態」だという。「今後18カ月で顧客体験からフィードバックを得て、パーソナルアシスタントが何をすべきではないかを把握し、調整していく」とのことだ。
ブランド各社が音声検索広告で成功を収めるには
マーケティング担当者の多くが、いまなおモバイルマーケティングで追い上げを図っているなか、こうした知識がどれだけ彼らに伝わるのかは未知数だ。SEOマーケティングプラットフォームのブライトエッジ(BrightEdge)による調査では、「フォーチュン500」に選ばれたブランド各社のデジタルマーケティング担当者252人のうち4人に1人以上(27%)が、いまだにモバイルが「これから重要になってくる」と考えているという。一方で、「これから重要になってくる」のは音声検索だと回答したマーケティング担当者の割合は、31%となっている。にもかかわらず、音声検索に向けた計画を立てていないマーケティング担当者の割合もまた、全体の3分の2にものぼる。
そんななか、音声認識が使われる世界で、広告ユニットがどのようなものになるかすでに考えを巡らせているマーケティング担当者も存在する。ファッションとホームウェア小売業のマタラン(Matalan)社でeコマース部長を務めるアンドリュー・バンクス氏がそのひとりだ。6月27日にロンドンで開催されたカンファレンスで、バンクス氏はこれからの検索は「感情的な結びつきが生まれるもの」が重要になると述べている。現在ペイドメディアに掲載されているような割り込み型の広告をパーソナルアシスタントにそのまま移行するのは容易ではないと、同氏は指摘する。そして、マタラン社をはじめとする広告主は、ペイドメディアについての考え方を見直す必要があるという。
「たとえば欲しいドレスがあったとする。その人がすでに実物を見て試着していたら音声検索で購入する場合もあるだろう。だがあと数年は、欲しいという気持ちから来る買い物に音声検索が使われることは、ほとんどないはずだ」と、バンクス氏。「機能を求めている場合は異なる。たとえばキャットフードや銀行残高を調べる場合などだ。こういう場面では音声検索の出番となる」。
フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の最近の報告書にも同様の記述があり、「我々の知る」デジタル広告の終わりを予測している。報告書の結論には、さほど遠くない将来、我々は広告を目にすることはなくなると記載されている。なぜなら売上と知名度を向上させるためのターゲティングとパーソナライゼーションにより、これからの広告は広告と感じないように形を変えていくからだ。
Googleの現在の支配的立場が失われる可能性
デジタルメディアにおけるGoogleの支配的な立場が、音声検索によっておびやかされる可能性を指摘する業界アナリストも存在する。市場調査会社のeマーケター(eMarketer)によると、音声アシスタントデバイスを月1度以上利用しているアメリカ人は今年で3560万人おり、そのうちの70.6%がAmazon Echoを利用している。それに対し、Google Homeの使用率は、若干23.8%に過ぎない。さらにアプリ検索をのぞき、Amazon EchoはデフォルトでBing検索を採用しており、音声検索に乗り出そうとしているGoogleにとって逆風となっている。
スペロ氏は、音声アシスタントが我々の知る広告の終わりとするのは「根拠がなく、著しく時期尚早」としている。「レストランを探したり自動車や旅行先を選んだりする人はこれからもいる。そうした場合にはマーケティング担当による手助けが必要だし、そのような手助けを含めてカスタマージャーニーは、これからも多くの点でいままでと変わらないだろう」。
Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)