家族経営の米ワインブランド、 DTC 戦略で ROI を向上:「我々のサイトには中間業者がいない」

36年の歴史を持つ家族経営のワイナリー、ケンダル・ジャクソン(Kendall-Jackson)は、2004年からKJ.comというサイトで選りすぐりのワインを販売している。だが、DTC(direct-to-consumer:ネット直販)で高い投資利益率(ROI)を見込めるようになったのは、新しいアトリビューションツールが利用できるようになった、ごく最近のことだ。

ケンダル・ジャクソンは、Facebookのピクセルを利用して、半年前にサイトでワインのセクションを見ていた顧客へのリターゲティングを行った。その後、アトリビューションモデルの利用や来店数の確認ができる新しいレポートツールが、Facebookからリリースされた。おかげで、ケンダル・ジャクソンは顧客の全体像を把握できるようになる。一般消費者向けのワインブランドがDTCビジネスを手がけるチャンスが生まれたのだ。そこでケンダル・ジャクソンは、サイトのデータ収集や購入客の詳細な分析に利用しているツールへの投資を拡大し、DTCビジネスを強化している。

「ますます当然のことに」

「我々にとっては、DTCに注目するのがますます当然のことになった」と、ケンダル・ジャクソンの親会社ジャクソン・ファミリー・ワインズ(Jackson Family Wines)でデジタルマーケティング担当ディレクターを務めるマーク・ゴードン氏はいう。同氏によれば、マーケティングの取り組みを自社のサイトだけで行っていたときは、高い投資対効果(ROI)を狙うことが難しかった。直販サイトの売上額は把握できたが、顧客がサイトを訪れた経路や動機はわからなかったのだ。しかし、FacebookのアトリビューションモデルツールのデータをGoogleアナリティクス(Google Analytics)と組み合わせることで、どのような顧客がどのキャンペーンを見てサイトに訪れ、コンバージョンに至るまでどれくらいの時間がかかったのかを、過去にさかのぼって調べられるようになった。

たとえば、Facebookのアトリビューションモデルツールを使用すると、Facebookに掲載したキャンペーン広告をどの顧客がクリックし、数日後にサイトでワインを購入するというコンバージョンを達成できたのか追跡できるという(Facebookは、同社でもっともコンバージョンの多いプラットフォームだ)。また、購入客から同意を得て収集したデータを利用して、類似オーディエンスを作成し、メールやソーシャルメディアで関連商品を勧めるリターゲティングを行うこともできる。

現在、KJ.comで得られた収益の60%が、メールでの宣伝から得られたものだという。残りは、20%がオーガニック検索とソーシャル投稿、10%が有料のソーシャル投稿、10%がほかのウェブサイトからの参照だと、ジャクソン・ファミリー・ワインでマーケティング担当ディレクターを務めるマギー・カリー氏はいう。

ケンダル・ジャクソンは、KJ.comで得られた収益のROIを公表していないが、カリー氏によれば、同サイトは平均で毎月5万人のユニークビジターを獲得しているという。また、実店舗や、ウォルマート(Walmart)、クローガー(Kroger)、セイフウェイ(Safeway)といった小売企業のeコマースサイト(ゴードン氏はこれを「デジタルワイン商品棚」と呼んでいる)よりも、マージンが20%高い。「我々のサイトには中間業者がいない」からだと、カリー氏はその理由を簡潔に説明した。

変わりゆく消費者行動

オンラインで食料品を買うことに対する消費者の意識が変化していることも、ケンダル・ジャクソンがオンラインに取り組む大きな動機となっている。

「(食料品デリバリーの)インスタカート(Instacart)は、オンラインで食料品を買うことに対する消費者の意識を変化させた」とゴードン氏はいう。「おかげで、ソーシャルメディアでコミュニケーションを取ることが、ますます意味のある取り組みになっている」。

ケンダル・ジャクソンは現在、40種類ほどのワインをオンラインで販売している。その内訳は、35ドルのボトルから85ドルのギフトセットまでさまざまだ。同社のワインはコンビニエンスストアやスーパーマーケットで広く売られているため、オンラインで扱う商品には希少性を持たせようとしている。そのため、オンラインで販売しているワインのほとんどは、カリフォルニア州サンタローザにあるワイナリーのテイスティングルームにしかないものだ。マーケティングコンサルタントのランダー(Landor)でシニアアナリストを務めるジェリー・ロバック氏によれば、ミズーリやマイアミといった遠方の顧客が、ワイナリーのテイスティングルームを訪れた人と同じ商品を買えるようにする取り組みは、大規模な小売チェーンや卸売業者と関係が深いブランドにとって新しい試みだという。

「人々はたいてい、ケンダル・ジャクソンのエステート産ワインのレビューを読んでから、自分でリサーチし、Googleで当社を見つけ、当社から直接購入する。彼らが住んでいる場所に商品がないからだ」と、ゴードン氏は話す。

ワインの販売業者ではなく、製造業者であるケンダル・ジャクソンは、ワインを売る場所や配送する場所を自社で管理しやすい。同社は米国の37の州でワインを顧客に直接販売しているが、小売業者は彼らが店舗を構えている州にしかワインを配送できないとカリー氏はいう。

小売チェーンとの行き違い

また、直販チャネルを持つことによって、大規模小売チェーンとの取引で起こる面倒を避けることができる。ワイン業界の大手企業はどこも、小売チェーンのサイトに製品情報を正しく載せてもらうことに苦労していると、ゴードン氏は指摘する。

「標準的な規格というものが存在しない。ある小売業者はスプレッドシートを要求したかと思えば、別の小売業者は自社のコンテンツ管理システムにログインすることを求める。すべての業者で異なっているのだ」と、ゴードン氏。ケンダル・ジャクソンでは、小売パートナー向けのすべての製品情報を1カ所で管理できるポータルの構築を2019年の目標にしている。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)