アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、大規模な転換のさなか、若い買い物客との関係を築くため、インフルエンサーを活用している。
アバクロンビー&フィッチは2016年、アメリカ顧客満足度指標(American Customer Satisfaction Index)で、アメリカの「もっとも嫌われている小売ブランド」に選ばれた。しかしここ数年、同社は、自社ブランドをサイズ、商品、広告キャンペーンにおいて、よりインクルーシブで多様性があるものと位置づけることで、生まれ変わった姿を世間に見せようとしてきた。同社は2017年以来、新しいCEOを雇用し、モダンなスタイルとシルエットに特化するとともに、データ分析や、BOPIS(オンライン注文、店内引き取り)のような機能をより重視してきた。買い物客からの反応は良好だ。同社は前四半期に、第1四半期の純売上が「過去10年間で最高」だったと報告し、2024年の残りの業績予想を上方修正した。
同社の新戦略の大きな部分を占めるのは、マーケティングとソーシャルメディアでのプレゼンスだ。決算報告によると、同社は2022年4月30日までの13週間から、2023年4月29日までの13週間のあいだに、MG&A(マーケティングおよび一般管理費)の支出を2000万ドル(約28億円)増やした。同社はこれまでに、ダンスやゲーム、スポーツなどあらゆるジャンルから誘致した大規模なクリエイターのネットワークを構築している。彼らには、新商品を披露したり、スタイルについてのヒントやコツを紹介したり、ブランドへの関心を話してもらう。自社のソーシャルチャネルには、小売店舗の店員や企業の従業員が出演することもある。
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アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、大規模な転換のさなか、若い買い物客との関係を築くため、インフルエンサーを活用している。
アバクロンビー&フィッチは2016年、アメリカ顧客満足度指標(American Customer Satisfaction Index)で、アメリカの「もっとも嫌われている小売ブランド」に選ばれた。しかしここ数年、同社は、自社ブランドをサイズ、商品、広告キャンペーンにおいて、よりインクルーシブで多様性があるものと位置づけることで、生まれ変わった姿を世間に見せようとしてきた。同社は2017年以来、新しいCEOを雇用し、モダンなスタイルとシルエットに特化するとともに、データ分析や、BOPIS(オンライン注文、店内引き取り)のような機能をより重視してきた。買い物客からの反応は良好だ。同社は前四半期に、第1四半期の純売上が「過去10年間で最高」だったと報告し、2024年の残りの業績予想を上方修正した。
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同社の新戦略の大きな部分を占めるのは、マーケティングとソーシャルメディアでのプレゼンスだ。決算報告によると、同社は2022年4月30日までの13週間から、2023年4月29日までの13週間のあいだに、MG&A(マーケティングおよび一般管理費)の支出を2000万ドル(約28億円)増やした。同社はこれまでに、ダンスやゲーム、スポーツなどあらゆるジャンルから誘致した大規模なクリエイターのネットワークを構築している。彼らには、新商品を披露したり、スタイルについてのヒントやコツを紹介したり、ブランドへの関心を話してもらう。自社のソーシャルチャネルには、小売店舗の店員や企業の従業員が出演することもある。
共感を呼ぶコンテンツづくり
アバクロンビー&フィッチのブランドマーケティング担当バイスプレジデントを務めるメガン・ブローフィ氏は、ニューヨーク市で7月12・13日に開催されたザ・リード・イノベーション・サミット(The Lead Innovation Summit)の対談で次のように語った。「我々は、誰もがこのブランドを自分の生活やライフスタイルの一部であると感じてもらうのを目的としている。結局のところ、我々は皆人間であり、影響力をもち、消費する。そのため、重要なのは共感を呼ぶコンテンツを作りだすことだ」。
それはどのようなコンテンツなのか。Z世代の買い物客(と、インフルエンサー)が引かれるのは、「本物らしさ」であると同氏は述べている。「彼らは非常に率直で、リアルなものを求めている。少しだけ乱雑なものを好み、完璧なものは望まない」と同氏は説明する。これに対してミレニアル世代は、このような性質を一部持ち合わせているものの、集中力が続く時間がZ世代よりも長いと同氏は説明した。「この世代は、もう少し叙述的で、ストーリーがあり、野心的なものを好む」。
相手がどんな年代のインフルエンサーであれ、関係を築くときには、「ブランドをコミュニティに委ね、彼らが代表であると感じられるようにする」ことが重要だとブローフィ氏は強調した。同氏は、アバクロンビーの現在の標準的な顧客は25歳から29歳で、経済的には自立しているものの、まだ人生の方向性を見定めていない人たちだと話した。
「我々がクリエイターを探すときは、そうした段階にいる人を探すようにしている。彼らがアバクロンビーの服を着たい、アバクロンビーの一員になりたいと考えてもらえることに、本物らしさを感じる」と、同氏は述べている。
アバクロンビーはインフルエンサーと会うと、ブランドについてもう少し詳しく説明する。しかし、「コントロールは本当にそこまでだ。我々からその商品に関するテーマを提示するが、インフルエンサーはオーディエンスに話しかける方法をすでに知っている。インフルエンサーは自分たちの力でフォロワーを築きあげていて、何が共感を集めるかを熟知している。我々は単にツールを与えるだけでいい」と同氏は述べる。
プラットフォームの進化への対応
クリエイターに手綱を渡すアパレル企業は増えてきている。たとえばトゥルーレリジョン(True Religion)が実施しているトゥルークリエイターズ(True Creators)プログラムでは、新進気鋭のデザイナーを数名選抜し、ブランドに独自のアレンジを加えているのだ。また、キャンペーンやキャスティングビデオの撮影のために、アメリカの各都市で若手フォトグラファーやその他の才能ある人材を雇用している。ファッションマーケットプレイスのリボルブ(Revolve)は2021年にブランドアンバサダープログラム(Brand Ambassador Program)を立ち上げ、3万人のメンバーを抱えるまでに拡大した(さらに、順番待ちリストには1万人の応募者が控えている)。一方、アメリカンイーグルの下着ブランド、エアリー(Aerie)は、ユーザー生成コンテンツや、ゲストのスターが出演するライブショッピング配信への投資を増やしている。
アバクロンビーはソーシャルメディアに確固とした存在感を示しており(インスタグラムのフォロワーが500万人、Twitterのフォロワーが47万7000人、TikTokのフォロワーが7万1000人)、クリエイターや顧客がさまざまなプラットフォームであらゆるものを探していることを理解している。これは、キッズラインのアバクロンビーキッズ(Abercrombie Kids)やセカンドラインのホリスター(Hollister)など、若いオーディエンス向けに作られたラインでは特に顕著だ。たとえばホリスターはSnapchat(スナップチャット)でより強固な存在感を示している一方、アバクロンビーはTikTokやインスタグラムで人気がある。現在のところ、同社はメタ(Meta)がTwitterに対抗して開発したスレッズ(Threads)をテストしているところだ。
「プラットフォームは進化し、マクロ経済の環境も進化していき、変化には数多くの理由がある。そのため、当社は常にその変化をチェックしている。4年前に行ったことと、今行うことは違っている。そして、今から何年かあとに行うこともまた異なるだろう」と、ブローフィ氏は述べる。
「TikTokがこれほどの影響力を持つとは誰も予測できなかったろう。そして、スレッズがどうなるかも誰にもわからない。だからこそ、常にプラットフォームの観点から次に何が来るのかに注目している」と同氏は話を続けている。
[原文: Behind Abercrombie & Fitch’s growing influencer strategy ]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Abercrombie