若者向けスタートアップのヘアケアブランド、アノマリー(Anomaly)やエヴァNYC(Eva NYC)などが、ターゲットに加え、CVS、ウォルマートと大型店舗に進出しつつある。クリーンでサステナブルな製品を求めている消費者と、育成が必要な新規顧客の両方にリーチするのが狙いだ。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ジェンダーニュートラル、ビーガン、クリーン、サステナブルなどの用語は、ヘアケアに関しては「価格が高い」というのと同義だった。しかし、大型小売店はその方向に動き出している。
アノマリー、CVSとウォルマートでローンチ
女優プリヤンカー・チョープラー氏のヘアケアブランド、アノマリー(Anomaly)は、今月CVSとウォルマート(Walmart)に進出。これは、昨年ターゲット(Target)へ進出して以来、最大の小売拡大である。アノマリーはCVS全店とウォルマートの800を超える店舗で取り扱われるようになり、現在では双方のオンラインストアでも購入可能だ。また、同ブランドはヘア&スカルプオイル、ボンディングトリートメントマスク、リーブインコンディショナーの新製品3点をラインナップに追加した。アノマリーのシャンプーは1本5.99ドル(約690円)と価格面ではパンテーン(Pantene)に相当するが、ブランディングはトレンディなD2Cスタートアップやスペシャリティストアのブランドと同レベルである。大型小売店がミレニアル世代やZ世代の顧客ベースを狙って製品を拡大するにつれて、取り扱われるヘアケア製品もようやく進化の一歩を踏み出したといったところだ。
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アノマリーを支援したブランドインキュベーターのマエサ(Maesa)の顧客開発担当シニアバイスプレジデント、リッチ・シンプソン氏は、大衆向けヘアケアの「進化を目にして驚いている」と言った。「既存ブランドの以前の静的な状況からこの分野に進出している新規ブランドがひしめく現在に早送りして比べてみると、状況は非常に違っている」。マエサは大手小売店やドラッグストアで販売されているスタートアップのヘアケアブランドを複数ローンチしている。それらには、クリスティン・エス(Kristin Ess)、ヘアリテージ(Hairitage)、TPH、ジェイダ・ピンケット・スミス氏のボディケアブランド、ヘイ・ヒューマンズ(Hey Humans)やドリュー・バリモア氏のメイクアップレーベル、フラワービューティ(Flower Beauty)などがある。
シンプソン氏は、100%プラスチックゴミを利用した容器などのアノマリーのモダンでミニマリスティックな感性について、「店舗で革新を起こすことが目的」だと述べている。アノマリーは、ビーガンでクリーンで、ジェンダーニュートラルである点を強調している。
また、同氏は、アノマリーは「とても手頃な価格で、高品質で高い価値のある製品を提供するヘアケアの民主化」を代表していると語っている。手頃な価格のブランドがこのような新しいアプローチを採用するには多額の投資が必要になる。
「いつでも初期段階は苦労がある。だが、サプライチェーンの要素を築き始めて事業を継続していくと楽になっていく」と、シンプソン氏はリサイクル材料を使用した製品の大規模な製造について述べている。「事業を続けるにつれ、もっとスムーズになっていくだろう。(リサイクルを利用した製品についての)消費者の期待に果敢に挑戦していく」。
若い世代向けヘアケア製品に注力するCVSとウォルマート
近年、CVSとウォルマートは、ターゲットに追従して、若いオーディエンス向けにスタートアップのヘアケアブランドをどんどん取り揃えるようになっている。それらには、オデル(Odele)やエヴァNYC(Eva NYC)などの小売向けブランドのほか、ファンクション・オブ・ビューティ(Function of Beauty)やヒムズ/ハーズ(Hims/Hers)などの卸売に分岐するD2Cブランドがある。
アノマリーのほかに、今月CVSに登場するのがエヴァNYCだ。2019年、ターゲット1500店でまずローンチしてからのCVSへの参入となる。タイダイのような色合いのアルミ容器の製品が特徴で、今月からCVSの実店舗でヘアケア製品の販売を開始。アノマリーやクリスティン・エス、マンデー(Monday)やネイティブ(Native)などのスタートアップ製品と同じセクションに置かれている。
エヴァNYCのセールスシニアディレクターのアニー・コルメイネン氏は次のように述べている。「CVSは(棚や在庫の)スペースを確保して、マーケティングを採用して、関連性の高いトレンディな新規ブランドを販売するための専用セクションを確保することにコミットしている」。同氏は、インディーズのビューティブランドを呼び込むためにターゲットは「早い段階で決断した」と言う。一方、CVSが取り扱っているヘアケアは「品揃えは少々時代遅れの感があり、次々登場している新規ブランドの取り扱いもそれほどエキサイティングとは言えない」が、CVSは現在追いつきつつある。
コングロマリットもヘアケア革命に着手しており、新規ブランドのローンチやスタートアップに触発された既存ブランドの刷新が進行中だ。ユニリーバ(Unilever)とサンダイアル(Sundial)が2020年1月にエマージ(Emerge)をローンチしたあと、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter&Gamble)はウォルマート限定のブランド、ノウ(Nou)を(縮毛やカーリーなどの)テクスチャのある髪を持つZ世代の消費者向けに2021年8月にローンチ。また、P&Gは、ターゲットでウォーターレス(Waterless)というブランドの製品も販売している。
一方、ガルニエ(Garnier)は2021年にある調査を後援したが、調査の回答者の60%がプラスチック製品の使用を減らすことがより持続可能なライフスタイルを続けるための最優先事項であると述べている。ガルニエには2030年までにすべてのプラスチック包装を廃止する計画がある。
D2Cではなく、大型小売店のローンチを目指すスタートアップブランド
コングロマリット的な思考を持ち、D2Ceコマースから始めるのではなく、大型小売店を目指すスタートアップのヘアケアブランドは増えており、アノマリー、エヴァNYC、オデルなどはその例である。
「D2Cというビジネスモデルは認知度が高まっているため、D2Cを立ち上げて運営するには莫大な投資が必須だ」とシンプソン氏は言う。ヘアケアに関しては、「D2Cのローンチという重労働」を追求するよりも、小売業者と「提携するほうがより理にかなっている」。しかし、オンラインは依然として優先事項である。アノマリーは3月にAmazonでローンチする予定だ。
大型小売店に参入するスタートアップブランドは、クリーンで持続可能な製品を求めている消費者と、育成が必要な新規顧客の両方にリーチすることに関心を寄せている。その育成は実店舗とオンライン双方で行われる。スタートアップブランドは、大企業が好むテレビ広告よりもソーシャルマーケティングに重点を置いている。
クリーンで持続可能な製品への需要について、「我々の調査によって消費者が存在していることが判明している」とシンプソン氏は言う。そして、新規顧客を惹きつけるために「マーケティングはソーシャルコミュニケーションに傾いている」。チョープラー氏はソーシャルメディア上で消費者を育成するために不可欠だ。「7500万人ものオーディエンスを持つセレブリティと協力することは我々のメッセージを届けることに役立つ」。
コルメイネン氏は次のように述べている。「ソーシャルには需要があるが、クリーンやサステナブルなどの要素をすべて含んだ製品を求めている消費者グループを育てて拡大し続ける機会はたくさんある。関連性を維持するには、消費者が求めているものを先取りする必要がある」。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: The drugstore and big-box hair-care aisle gets an upgrade]
LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)