「私はリップグロス女子。毎日リップグロスを使っている」と述べているのは、クリーンでミニマリストなメイクアップブランド、セイ(Saie)の創業者、レイニー・クロウェル氏だ。「(従来の口紅は)私たちではない。当社は栄養を与えないもの、肌に良くないものは決して作らない」。
セイをはじめ、リップグロスに注力するブランド
このような大胆な発言は3年ほど前までは物議を醸したかもしれないが、現在の化粧品業界にとってクロウェル氏の意見はもっとも新しいものだ。今年の初め以来、ギソウ(Gisou)、タタハーパー(Tata Harper)、アイリス&ロメオ(Iris&Romeo)、サマーフライデーズ(Summer Fridays)、シャーロットティルベリー(Charlotte Tilbury)などのブランドが、リップオイル、リップクリーム、リップグロス、ティンテッドリップバーム、または伝統的な口紅の革新的なバージョンなどをローンチしている。ケンドー(Kendo)傘下のリップラボ(Lip Lab)は長年口紅に注力してきたが、3月に再ローンチして、8月から店頭でカスタマイズできるハイシャイングロスを提供している。2014年、リキッド口紅の初期の頃にそれを支持していたカイリーコスメティクス(Kylie Cosmetics)でさえも、6月にはティンテッドバターバームのセレクションを発売した。栄養価が高くメリットの多い化粧品を作りたいというクロウェル氏の発言は、従来の口紅タイプではないリップ製品の台頭という、化粧品業界で起こりつつある大きな転換を凝縮したものだ。
クロウェル氏は、セイの製品は「セイの科学(Saie Science)」、つまり、成分が皮膚バリアに栄養を与えて浸透すべきだという同社の考えに基づいて配合されていると語っている。セイの最新製品であるグロッシーバウンス(Glossybounce)リップグロスが8月29日に発売されたが、これにはポリグリセリドとホホバオイルを含むSFACと呼ばれる脂肪酸複合体が配合されている。
現在市販されているリップグロスは、昔のようなベタつきや人工的な味や匂いのある昔のものとは異なっている。それに代わって、現在のリップグロスは、従来のバームと同じほどか、それ以上に唇に栄養を与えるようになっている。また、同時にベタつきのない輝きとすっぴんメイクを引き立てる色を実現している。人気の高いほかのリップ製品には、やはり栄養を与えるリップオイルやオーバーナイトマスクなどがある。その結果、口紅とリキッド口紅は、もはや美容ルーティンの定番アイテムではなくなっている。
「私はリップグロス女子。毎日リップグロスを使っている」と述べているのは、クリーンでミニマリストなメイクアップブランド、セイ(Saie)の創業者、レイニー・クロウェル氏だ。「(従来の口紅は)私たちではない。当社は栄養を与えないもの、肌に良くないものは決して作らない」。
セイをはじめ、リップグロスに注力するブランド
このような大胆な発言は3年ほど前までは物議を醸したかもしれないが、現在の化粧品業界にとってクロウェル氏の意見はもっとも新しいものだ。今年の初め以来、ギソウ(Gisou)、タタハーパー(Tata Harper)、アイリス&ロメオ(Iris&Romeo)、サマーフライデーズ(Summer Fridays)、シャーロットティルベリー(Charlotte Tilbury)などのブランドが、リップオイル、リップクリーム、リップグロス、ティンテッドリップバーム、または伝統的な口紅の革新的なバージョンなどをローンチしている。ケンドー(Kendo)傘下のリップラボ(Lip Lab)は長年口紅に注力してきたが、3月に再ローンチして、8月から店頭でカスタマイズできるハイシャイングロスを提供している。2014年、リキッド口紅の初期の頃にそれを支持していたカイリーコスメティクス(Kylie Cosmetics)でさえも、6月にはティンテッドバターバームのセレクションを発売した。栄養価が高くメリットの多い化粧品を作りたいというクロウェル氏の発言は、従来の口紅タイプではないリップ製品の台頭という、化粧品業界で起こりつつある大きな転換を凝縮したものだ。
クロウェル氏は、セイの製品は「セイの科学(Saie Science)」、つまり、成分が皮膚バリアに栄養を与えて浸透すべきだという同社の考えに基づいて配合されていると語っている。セイの最新製品であるグロッシーバウンス(Glossybounce)リップグロスが8月29日に発売されたが、これにはポリグリセリドとホホバオイルを含むSFACと呼ばれる脂肪酸複合体が配合されている。
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現在市販されているリップグロスは、昔のようなベタつきや人工的な味や匂いのある昔のものとは異なっている。それに代わって、現在のリップグロスは、従来のバームと同じほどか、それ以上に唇に栄養を与えるようになっている。また、同時にベタつきのない輝きとすっぴんメイクを引き立てる色を実現している。人気の高いほかのリップ製品には、やはり栄養を与えるリップオイルやオーバーナイトマスクなどがある。その結果、口紅とリキッド口紅は、もはや美容ルーティンの定番アイテムではなくなっている。
データが示すZ世代の口紅離れ
サーカナ(Circana、以前のIRIとNPD)のデータによると、2023年上半期はリップメイクアップにとって追い風だったが、このデータではサブカテゴリーの製品が特定されていなかった。リップメイクアップは、高級アウトレット店や量販店での全美容カテゴリーでもっとも急成長しているセグメントだった。Z世代の消費者は、どの年齢層よりもリップグロスを使う可能性が高いため、口紅以外のリップ製品への業界の移行を推進していると思われる。Z世代のメイク使用者の70%近くがグロスを使っていると答えたのに対し、Z世代以外のメイク使用者でグロスを使っているのは55%だった。さらに、Z世代は口紅をつける可能性がもっとも低い消費者であり、メイクアップを使う総消費者ベースの62%に対して、48%だった。
コスメブランド、シグマビューティ(Sigma Beauty)の創業者兼CEOのシモーネ・ゼイビア氏は、2年前からリップカテゴリーの変化を目にしていると言い、その原因としてパンデミックによる在宅習慣の変化と2010年代後半に人気だったアート風で重厚なメイクアップの衰退を挙げた。ゼイビア氏はソーシャルメディアを調べ美容トレンドを追った後、顧客やインフルエンサー、美容コミュニティのほかの人々がどのように口紅のメイクルーティンを簡素化しているかを知った。また、リキッド口紅が乾燥するという苦情も寄せられていたという。さらに、シグマビューティのもとには、ディラーズ(Dillard’s)やノードストローム(Nordstrom)などの小売パートナーからリキッド口紅が以前ほど売れていないという声が届き始めた。シグマビューティは2022年11月にリキッド口紅の段階的な廃止を密かに開始し、セール価格、または50%割引の10.50ドル(約1600円)で販売した。もっとも人気が高かった色合いのヌードモーブとコルデローザは同社が9月に発売する新製品のリップクリームに取り入れられる。この製品には、ホホバオイル、ビタミンE、ヒアルロン酸などの栄養成分が配合されている。シグマビューティはすでにリップケア分野に注力しており、2020年にリップバームを、2021年にリップオイルを、2022年にオーバーナイトリップマスクを発売している。
「いま、唇に塗りたいと思われているものはリップオイルやリップクリームだ」とゼイビア氏。「濃いメイクからもっとナチュラルなメイクへの変化が起きている」。
シグマビューティは ターゲット(Target)、QVC、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)で取り扱われており、70カ国で流通している。ゼイビア氏によると、地域によっては大胆な色合いが好まれるため、インドと中東の小売パートナーはリキッド口紅の販売中止に不満だという。つまり、リップカテゴリーの変化は主に米国での傾向だといえる。
効果の高いリップ製品に対する需要
ゼイビア氏と同様に、クロウェル氏も、2020年世界で起こった健康関連の出来事がリップ製品に対するこの新しい流れに拍車をかけたのではないか、特にスキンケアがメイクアップよりも重要になり、美容製品の効果がもっと期待されているためではないかと述べている。「ふっくらと見せて栄養を与えることもできるのに、なぜ外見が良いだけのリップグロスを使うのか?」。
同じような視点を取り入れているブランドはほかにもある。2021年、ローレスビューティ(Lawless Beauty)は、潤いを与えてふっくらとさせる効果と色を提供するリップグロスのフォーゲット・ザ・フィラー(Forget the Filler)フランチャイズを発売した。また、同じコアペプチドとヒアルロン酸配合技術を活用して、8月にはフォーゲット・ザ・フィラーをスキンケア分野へと拡大している。
メイクアップは肌にメリットがあると謳うサイやローレスビューティの取り組みのほかに、ラネージュ(Laneige)のようなブランドが消費者に提供されるリップ製品のさまざまなタイプに深い影響を与えている可能性がある。ベストセラー製品のラネージュ・リップ・スリーピングマスク(Laneige Lip Sleeping Mask)により、ラネージュはセフォラ(Sephora)でもっとも売れているKビューティブランドになった。リップスリーピングマスクを取り入れたブランドをいくつか挙げると、グロウレシピ(Glow Recipe)、ローレスビューティ、タッチャ(Tatcha)、マリオ・バデスク(Mario Badescu)、E.l.f.などがある。
クロウェル氏は、「顧客からは、肌になじんで塗りやすいので、肌がとてもきれいに見えるようになったという意見が寄せられている。これで、エフォートレスなすっぴん風メイクを実現できる」と述べている。
セイは、リップブラー(Lip Blur)という別のリップ製品を販売している。これは、よりクリーミーで着色力が強いものだ。グロッシーバウンスのマーケティングの一環として、セイはリップブラーとグロッシーバウンス2製品を比較するモデルたちの画像を並べて掲載して違いを見せている。また、フィードバックやソーシャル投稿のために、ブランドの友人のコンテンツクリエイター30人に無料で製品を提供した。
口紅の復活はあるか?
しかし、美容におけるあらゆるものと同様に、トレンドは消費者の欲求によって変化する。Z世代が成長すれば、洗練度の高いリップ製品を求めるようになるだろう。あるいは、口紅やリキッド口紅がもっと優れた成分を取り入れて、保湿性とマットの両方を実現したり、唇の乾燥なく長時間使えるようになるかもしれない。現在のトレンドは今後も続くと予想されており、唇に待望のいたわりを提供する。しかし、口紅が返り咲くときには、その姿に気づくことさえできないかもしれない。
「どんなメイクアップトレンドも周期的だ。ファッションと同じように、すべてのものはいつか復活する可能性がある」とゼイビア氏。「だが、大胆なメイクアップがリキッド口紅として復活することはないだろう。業界ではその製品形式は依然として使われているかもしれないが、あまりに革新的な名前が付けられて新製品だと思われるかもしれない。だが、実際はそうではない」。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: Lipstick is dead. Long live lip gloss.]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)