アート・バーゼル・マイアミ・ビーチが、12月の初めに開催され、ビューティブランドが、このイベントに集う富裕層のコレクターやギャラリスト、NFT伝道者、流行の最先端をゆく人たちとともに参加した。アートフェアは、ブランドにとって富裕層にリーチする手軽なアクセスポイントとなっている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
アート・バーゼル・マイアミ・ビーチが、12月の初め、パンデミックからの復活を遂げて開催された。そして、ビューティブランドが、このイベントに集う富裕層のコレクターやギャラリスト、NFT伝道者、流行の最先端をゆく人たちとともに参加した。
ラグジュアリーブランドがアートイベントに注力するわけ
ラグジュアリーファッションや高級時計、ジュエリーや酒類のブランドは、世界の一流アートイベントに長年関与している。アート・バーゼル・マイアミ・ビーチはアートイベントのなかでももっとも参加ブランドが多いイベントのひとつだ。セレブやパーティ参加者などアート投資家ではない人々の参加が増えるにつれて、ブランドはより幅広いオーディエンスにリーチするためアクティベーションの作成にますます投資するようになっている。そして、VIP以外の参加者ともつながることを狙い、ビューティブランドの参加数は増えている。
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アートフェアは、ブランドにとって富裕層にリーチする手軽なアクセスポイントとなっている。ラグジュアリーブランドは、純粋に営利目的のプロモーションではなく、アーティストと協力して作品制作の依頼や作品の展示をしばしば行っている。今回のアート・バーゼルでそのような活動を行ったラグジュアリーブランドには、サンローラン(Saint Laurent)、ロエベ(Loewe)、フェンディ(Fendi)がある。アートフェアのブースを後援したり、VIPディナーやパーティを主催したりするブランドらは、エリート顧客との関係を築き、将来のマーケティング活動のためにターゲットを絞ったメーリングリストに彼らを追加するためにこのイベントを利用することができるのだ。
一般的なオーディエンスにもリーチを図るラ・プレリー
アートフェアでこの戦略を積極的に活用しているビューティブランドのひとつが、スイスのラグジュアリースキンケアブランド、ラ・プレリー(La Prairie)だ。何年もの間、アーティストやデザイナーと協働して、世界中のアートフェアで精巧なインスタレーションやアート作品を展示している。今回のマイアミでのイベントでは、同ブランドはもっと幅広いオーディエンスと交流することにオープンであった。
ラ・プレリー・ノース・アメリカのプレジデント、ニコラス・ムナフォ氏は次のように述べている。「以前は、コラボレーションの成果は、それは多くの場合彫刻や絵画だったが、(アート・バーゼルの)VIPコレクターズラウンジの我々のブースで独占展示されていた。それを見ることができるのは、特権層の少数のクライアントと招待ジャーナリストだった。我が社がプレゼンスとブランド表現を進化させ続けるにつれて、より前進して、様々なアートフェアの活気と話題性を活かし、我々の芸術的なストーリーに一般的なオーディエンスを取り込む機会だと感じた」。
今年、ラ・プレリーは、12月2日に1日限定のラ・プレリー・ビーチクラブポップアップを主催した。そのラウンジは一般に公開され、600人以上が訪れた。アーティストとのコラボレーションでは、振付家兼ダンサーのウェン・チ・スー氏と協力、ビーチでオリジナルダンスが披露された。また、ラ・プレリーがスポンサーのビーチチェアを予約できる機会や、ビーチカバナで同社のホワイトキャビア(White Caviar)コレクションを使った手と目のトリートメントを予約できる機会もあった。すべての予約は1日以内に埋まった。
ドローンのライトショーを行ったシャネル
今年は、ほかのブランドもこの活動に加わった。シャネル(Chanel)の活動のフォーカスはビューティで、定番のシャネル N°5の香水の100周年を記念して、540機のドローンによるライトショーなどを開催。また、マイアミの新店舗のオープンを祝い、そのために制作依頼した彫刻を祝賀パーティで披露した。
セレブやインフルエンサーが華を添えたイプシーのイベント
しかし、このアート・バーゼルに参加したのはラグジュアリーブランドだけではない。イプシー(Ipsy)はアートフェア界への進出を記念して、12月2日から5日まで「デスティネーション・イプシー(Destination Ipsy)」というイベントを主催した。マイアミのヒップなウィンウッド地区にあるポップアップラウンジ、ハイブで開催されたインスタ映えするこのイベントでは、さまざまなビューティブランドのブースが設置された。アイテム・ビューティ(Item Beauty)、ピーチ&リリー(Peach & Lily)、リフレッシュメンツ(Refreshments)、ソルデジャネイロ(Sol de Janeiro)、ユース・トゥ・ザ・ピープル(Youth To The People)、トレスルセ・ビューティ(Tresluce Beauty)、アナスタシア・ビバリーヒルズ(Anastasia Beverly Hills)などが登場し、それぞれのブランドは、プロモーションやサンプル、美容トリートメントを提供した。このイベントにはインフルエンサーらが群がった。トレスルセ・ビューティ(Tresluce Beauty)の創設者でビューティのメガインフルエンサーのベッキー・G氏をはじめ、インフルエンサーのリアン・V氏(歌手・モデル)やレリ・ヘルナンデス氏(女優)、ドン・ベンジャミン氏(俳優)、また、フォーミュラZコスメティクス(Formula Z Cosmetics)創設者兼CEOのザック・ディシンガー氏が姿を見せた。
「マイアミは重要なビューティ市場であり、アート・バーゼルはこの街のイベントでもっともエキサイティングなもののひとつだ」と述べているのは、BFAインダストリーズ(BFA Industries)のクリエイターパートナーシップ・体験のバイスプレジデント、ネイカ・コルボーン氏である。ウィンウッド地区が選ばれたのは、「誰にでもアクセスできる場所であり、さまざまな人たちに参加してもらうことで、イプシーや我が社のほかのブランドがビューティファンの主要な市場でブランド認知度を高めることが可能」という理由からだった。
しかし、すべてのブランドアクティベーションが一般人へのリーチを目指していたわけではない。530ドル(約6万円)のスキンキャビア(Skin Caviar)のような製品を抱えるラ・プレリーの目標は「我々が『(レベルアップを)熱望している人たち』と呼ぶグループにもっとも的を絞ること」だったとムナフォ氏は言う。 同社は、一般人にアクセスがあった前述の予約に加えて、アクティベーションが開始される前夜には、トリートメントとアート作品のプライベートパフォーマンスを披露したVIPプレビューセッションも開催している。
先行き不透明な中でのアートイベントの復活
アート・バーゼル・マイアミ・ビーチは「力強い復活を遂げた」とメディアは報道し、ブランドたちも熱烈な参加度を見せた。
「初日には、2019年の2〜3日間の訪問者と同じほどの人たちがブースにやって来た」と、ムナフォ氏。「この1年はアート関連のイベントが行われなかったため、みんながもっている鬱憤のエネルギーはすごいだろうと思っていた」。ラ・プレリーは、5月のフリーズ・ニューヨークや、スイスで9月に行われたオリジナルのアート・バーゼルなど、過去1年に復活したアートフェアにおいてプロモーションを行っている。
アートフェアへの熱烈な盛り上がりは、現時点では大規模なイベントが本格的に復活したことを示している。しかし、オミクロン変異株の出現が、将来のアート関連イベントに対して、またブランドへの参加に対して何を意味するかについて不透明さはまだ続いている。
「もちろん、我々はパンデミックのトンネルから完全に抜け出せたわけではないので、屋外や屋内、予防接種、検査、社会的距離、マスクなどの考慮事項すべてが皆にとって新たな現実になっている」とムナフォ氏。「今、(イベントに)参加するかを決めるのには、何を優先するのか、ブランドとの有意義なつながりをどのくらい感じているかによるだろう」。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: Art Basel Miami Beach expands as a beauty brand destination]
LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)