コロナショック、中国展開する美容ブランドたちの試行錯誤 :ライブ配信で前月比150%の売上も

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界中で急速に広がるなか、美容企業の売上が大幅に減少している。

原材料の調達や、パッケージのサプライチェーン、配送、スタッフ、オペレーション、店頭およびオンラインでの販売が脅威にさらされており、ロレアルグループ(L’Oréal Group)、資生堂グループエスティローダー(Estée Lauder)といった大手からもすでに売上への影響が報告され、それを受けての財務指針調整も行われている。ブランド各社は自ら考え、予測不能なサプライチェーンへの影響を分析し、中国への過度の依存という問題に立ち向かおうとしている。フォレスター(Forrester)のアナリスト、シャオフェン・ワン氏によれば、2019年の美容・化粧品業界の世界的成長は、その5分の1が中国によるものであり、2024年までにはその割合が3分の1にまで伸びるだろうと予測されているという。中国でビジネスを展開しているブランドのなかには、セラミラクル(Ceramiracle)など、新商品の発売延期に踏みきったところもある一方で、スキンケアブランドの100%ピュア(100%pure)などは、マーケティング戦略を見直すことで売上維持をはかっている。

「成長途中のブランドである我々は、世界情勢に翻弄されている」と、セラミラクルの創設者ユージン・ヒは語る。

未来の危機に備える良い機会

4年前にカリフォルニアを拠点に創業し、2018年5月に中国と香港での展開を始めたセラミラクルの総売上のうち、同地での売上はおよそ50%を占めている。動物実験や動物の殺傷を行わないクルエルティフリーブランドであるセラミラクルは、輸入制限を回避するため、当初は在庫を持たないポップアップストアを13カ所に展開し、そこでWeChat(微信)のQRコードをスキャンすれば商品を購入できるようにしていた。だが今年1月にそのポップアップを閉じ、中国の旧正月に合わせてアリババ(阿里巴巴)のマーケットプレイス、タオバオ・グローバル(淘宝全球购)でECサイトを立ち上げようと準備を進めているところだった。コロナウイルスの広がりが勢いを増すなか、同社はECサイトのオープンを2月26日まで延期し、それまでは予約のみを受け付けることにしたという。

この休止期間中、セラミラクルはグローバルなD2C(Direct-to-consumer)サイトと米国市場に焦点を戻しつつ、自社のブランドサイトに消費者を誘導できるよう、リトル・レッド・ブック(小紅書)やドウイン(抖音:TikTokの中国語版)といった中国のソーシャルメディアプラットフォームでの取り組みを試しはじめた。また今回の感染拡大は、今後起こりうる危機に備える良い機会にもなったという。当初1月にオープン予定だったタオバオのECサイトに備え、セラミラクルは倉庫在庫を6カ月はもつよう2倍に増やしていた。同社のサプライチェーンは約半数が中国拠点企業で、ここしばらくはほぼ稼働停止状態なので、在庫を積んでおいたことが不幸中の幸いだったと、ヒー氏は語っている。

「世界情勢、美容、ソーシャルメディアが結びついているいま、我々はしっかり備えておかなければならない」と、同氏はいう。「世界のどこかで起こった何かが、いずれ自分たちに影響を及ぼしかねないのだ」。

「前向きな成長と言っても良い」

スキンケアブランド、100%ピュア創設者のひとりでCEOを務めるリック・コスティック氏は、コロナウイルスの影響を現地で目撃している。中国の旧正月に先立ち、1月に北京を訪れたところ、中国政府はすでに、北京から1000km以上離れている武漢への出入りを制限していたという。街に人通りはなく、300室のホテルにはコスティック氏を含めて6名しか滞在者がおらず、ホテルのスタッフが近くを出入りする人たちの体温を測定していた。100%ピュアは中国に13人の従業員を抱えているが、ゼネラルマネジャーとの会議以外、ミーティングはすべて中止し、ゼネラルマネジャーとも互いにサージカルマスクを着用し、離れて座って会議をしたとコスティック氏は語っている。

同氏によれば、100%ピュアの2019年度総売上額は約3000万ドル(約30億円)で、そのうち約10%は中国と香港での売上だという。そして2020年は、中国での売上が前年比60%で成長するだろうと予測されていた。コロナウイルス発生当初は、eコマースでの売上は落ち込むだろうと思われていた。100%ピュアは中国に実店舗を持っておらず、販売はクロスボーダーサイトであるTモール・グローバル(天猫国際)で行なっている。だが中国の国民は、政府の指示で、または自主的に隔離措置を取っているため、インターネットに関心を向けてきた。コスティック氏によれば、売上は回復しており、2020年の目標を上回る可能性もあるという。また、第2四半期にはドウインでのキャンペーン実施を検討しており、それにより売上の伸び率が2倍になることも考えられる。Weibo(微博)やリトル・レッド・ブックにも編集コンテンツを投稿していく考えだ。

「より多くの人たちがオンラインで買い物をしているので、前向きな成長と言っても良いのではないか」と、コスティック氏はいう。「(100%ピュアはオンラインでしか販売していないので、)皆が店頭で買い物をしていれば、別のブランドが選ばれてしまう可能性がある。だが、いまは皆がオンラインで買い物しているので、より多くの人に100%ピュアを知ってもらえるチャンスがある。ただ、収益性が低いまま速く成長したいか、収益性を高くして、より緩やかな成長を目指すかは、ひとつ検討しておかなければならないポイントだろう」。

ライブ配信で売上が150%向上

外に出られずストレスが溜まっている中国の消費者たちは、オンライン上でさまざまな創意工夫をこらしている。アリババは、サージカルマスクを着けた状態でも映えるメイク方法を教える一連のライブストリーミング放送が、2月18日にタオバオライブ(淘宝直播)で820万人の視聴者を集め、それがきっかけとなって、この週の終わりまでのアイシャドウパレットの売上が前月比150%にまで伸びたとしている。

ブランド側の工夫も負けてはいない。上海拠点の化粧品ブランド、フォレストキャビン(Forest Cabin)は、コロナウイルスの影響で中国全土に337ある店舗の約半数を一時的に閉鎖したが、そこからタオバオライブでの配信に注力し、1600人の販売員をトレーニングしてストリーミングに登場させている。同社のワン氏によれば、以前はオンライン売上が全体に占める割合は25%程度でしかなかったが、現在は90%にまで伸びているという。アリババでは、美容カテゴリーの売上は前年比30%減と落ち込んでいるものの、美容ブランドの広告売上は14%減にとどまっており、ブランドパフォーマンスエージェンシーのフォワードPMX(ForwardPMX)で、アジア太平洋地域およびロシア担当マネージングディレクターを務めるリチャード・ブロスギル氏は、これはブランドが失われた売上を取り戻そうとしている表れだとしている。また同氏は、ボディケアカテゴリーの広告売上は前年比で31%増加しており、ブランド側がいまの状況を、自分の衛生状態を気にする人たちをターゲットとするチャンスだと捉えていることも指摘した。

中国では感染拡大の制御が進み、日常生活が戻ってくる日も徐々に近づいてきているようだ。中国の70都市で店舗の10%を閉鎖したセフォラ(Sephora)の広報担当者は、2月最終週、中国政府が15店舗の再開を認めたと明かしている。

「バレンタインデーが近かったこともあり、美容関連ワードの検索数が急速に増えていた。もっとも強いのはスキンケアカテゴリーで、メイクアップにもプラスの傾向が見られた。人々は、この先に戻ってくるであろう日常に備えている」と、ブロスギル氏は話す。

中国以外は引き続き厳戒態勢

ただ、中国の消費者が日常に戻りつつある一方で、ほかの国々は引き続き厳戒態勢にあり、韓国、イタリア、米国といった国々では、コロナウイルスの感染者数が日々増えている。

「100%ピュアは、ここカリフォルニアで製造していることもあり、米国での感染拡大を何より恐れている」と、コスティック氏はいう。「皆が感染予防に取り組んでいるのは良いことだ。(新型コロナウイルスについて)きちんと認識し、アウトブレイクを遅らせるために必要な手段を講じている。だが、国全体が恐怖に襲われてしまう可能性もあるだろう。そうなると、感染拡大などよりも業績に悪影響が出ることも考えられる」。

Emma Sandler (原文 / 訳:ガリレオ)