アイザック・シャピーロ氏が、約20年前にボディケアブランド、クリーンロジック(Cleanlogic)を立ち上げたとき、製品ラインを視覚障害者にも手に入れやすいものにしたいと考えた。当時、製品パッケージに点字を活用することはほとんど前例がなかったが、彼の頭にあったのは、子どもの頃に視力を失った彼自身の母親だった。
アイザック・シャピーロ氏が、約20年前にボディケアブランド、クリーンロジック(Cleanlogic)を立ち上げたとき、製品ラインを視覚障害者にも手に入れやすいものにしたいと考えた。当時、製品パッケージに点字を活用することはほとんど前例がなかったが、彼の頭にあったのは、子どもの頃に視力を失った彼自身の母親だった。
クリーンロジックは3月16日、リニューアルを行い、外観を一新。すべて紙素材のパッケージに移行した。同ブランドはソフトプラスチック包装を廃止し、すべての商品に点字を印刷できるようになった。正確さを保証するため、米国盲人協会(American Foundation for the Blind)とも提携。また、非営利団体を支援したり、パンデミック前には目隠しされた状態での晩餐を小売業界のエグゼクティブたちと一緒に開催したりすることで、業界の視覚障害に対する認識を高めるよう呼びかけている。
ベビーブーム世代の高齢化に伴い、米国では失明率が上昇している。米国疾病予防管理センター(CDC)は、今後30年間で視覚障害の症例数が倍増すると予測している。
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クリーンロジックが2001年にローンチして以来、消費者セクター全体でアクセシビリティの進歩が加速しているとシャピーロ氏は言う。「この3年間は間違いなく非常に興味深かった」と同氏は、社会で見られる視覚障害者のためのアクセスの増加に向けた取り組み全般について語った。彼はウノ(Uno)による点字カードとレゴの点字ブロックを例として挙げた。
クリーンロジックのフェイスタオル
点字を追加するブランドたち
美容業界では、点字を追加するブランドが徐々に増えている。ファレル・ウィリアムスのヒューマンレース(Humanrace)は2020年に点字のパッケージをもってローンチし、2019年にはP&G(Procter & Gamble)はハーバルエッセンス(Herbal Essences)の触覚で区別できるボトルをデビューさせた。パッケージに点字を提供するブランドは、ロクシタン(L’Occitane)、ドクター・ジャート(Dr.Jart)、ワミサ(Whamisa)、ビオデルマ(Bioderma)など少数に限られているが、これらに他企業が少しずつ加わって来ている。
ヒューマンレースのスキンケア製品
視覚障害児を出産した母親によって設立されたスタートアップ、ヴィクトリアランド・ビューティ(Victorialand Beauty)は、一次包装と二次包装に製品識別のための凹凸がつけられた記号システムを持っている。また、包装に凹凸を頼りに見つけられるQRコードを加え、それをスキャンすることで音声による指示を読み上げる機能も加えた。パッケージにQRコードを加え、スマートフォンの利用を利用してアクセシビリティを向上させる動きに参加している。
これらの慣習を採用しているブランドは多くなく、視覚障害者にとって買い物は苛立たしい経験である。「近所の人や家族にわざわざ製品すべてを点字形式にするのを手伝ってもらっている人々がいる。そのプロセスに費やす時間という点で非常に面倒だ」とシャピーロ氏は言う。
アクセスしやすいブランドサイト
新しいeコマース技術が視覚障害者のアクセシビリティを向上させているなか、ブランドたちもアクセスしやすいウェブサイトを通じて認知度を高めている。スキンケアのスタートアップであるトピカルズ(Topicals)は、サイト上にアクセシビリティ用のウィジェットを用意しており、最近イコールウェブ(EqualWeb)技術を使ったアクセシビリティ・タブを立ち上げ、テキスト読み上げ機能を使えるようにしている。また、文字サイズを大きくしたり、画像の内容を音声で描写する機能もある。イコールウェブを使用しているその他のブランドには、ダーマE(Derma E)、アディダス(Adidas)、ヘッドスペース(Headspace)、ボッシュ(Bosch)などがある。
トピカルズサイト上のアクセシビリティ・タブ
トピカルズの創設者で最高経営責任者を務めるオラミデ・オロウェ氏はeメールで、「2021年にこれだけ利用可能なテクノロジーがありながら、視覚障害者を含むすべての顧客にサービスを提供できない理由はない」と述べた。「美容業界は近年、特に障害のある人たちのための包括性に関しては、ある程度の進歩を遂げてきたが、全体としてはまだまだ道のりは長い」。
シャピーロ氏によると、パッケージに点字を追加することは、著しく高価なわけではないという。「製品の鋳型の一部だ。これはすべて事前に印刷されており、色染めの工程を経るときに、これをプリントするスタンプ機によって行われる」。彼によると、1日に何百万もの製品を出力している大企業にとっては、新しい鋳型はインディーズブランドが取り組むよりもずっと少ない費用になる、とのことだ。
「日常に存在するヒーローを称える」
「知識は力。(目的は)人々を教育し、それをちゃんと情報を伝える方法で行うこと」と、クリーンロジック社のマーケティング部門ディレクター、バイスプレジデントのカレン・ウォーターズ氏は語る。ブランドのインクルーシビティ(包括性)についてのメッセージは、「高圧的な態度によるものではなく、障害者をめぐる環境を改善している人々を称えるものだ。スポットライトを集めている人々だけでなく、変化を起こしてくれている、日常に存在するさまざまなヒーローたちを称える方法を考えている」と、同氏は述べた。
[原文:Beauty brands are improving accessibility for visually impaired customers]
LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)