東京五輪 中止なら、販売された広告資金は市場から消え去る :「基本的に替えがきかない」

NBCユニバーサル(NBCUniversal)は今年のオリンピックに向けて、12.5億ドル(約1350億円)以上分の広告を販売した。だが、もしコロナウイルスの大流行によりオリンピックが中止された場合、この広告資金の大半はほかのチャネルに割り当てられることはない。

国際オリンピック委員会の役員が2月25日に、コロナウイルスの大流行が5月下旬までに終息しなかった場合、オリンピックが中止となる可能性について言及。この場合、オリンピックでの宣伝用の契約となっている各社の広告資金はどうなるのだろうか。広告エージェンシー役員らに聞いたところ、広告主はNBCユニバーサルやほかのチャネルで、この資金を使うことなくキープする企業が多いようだ。

あるエージェンシー役員は「この資金をボトムラインに組み入れるか、いざというときのための準備金とする広告主が大半なのではないか」と語る。

広告資金をキープする2つの理由

広告主が、オリンピック用の広告資金を、少なくとも一部はほかのチャネルで利用しないと考えられるのには、主に2つの理由がある。まず1つ目が、オリンピックほどのリーチがある代替チャネルはなかなか見つからないという点だ。「2000万人が、2週間にわたって毎晩観るようなフォーマットを探すのは不可能だ。オリンピックは替えがきかないイベントなのだ」と、別のエージェンシー役員は語る。そして2つ目の理由が、もしオリンピックが中止になった場合、広告主はオリンピックを視聴するはずだったオーディエンスへのリーチ以上に深刻な問題に直面すると考えられるためだ。メディアを企業はすでにコロナウイルスにより業績予想を下方修正しており、広告資金の減少に向けてた準備を進めている

ハバス・メディア(Havas Media)で戦略投資担当シニアバイスプレジデントを務めるジェフ・ガニェ氏は、「もしオリンピックが中止された場合でも、広告主はその広告資金を使う義務があるわけではない。世界は中止されたスポーツのイベントよりはるかに深刻な問題に直面する可能性がある。オリンピックとは無関係な問題により、苦境に追い込まれる企業はたくさん出てくるだろう」と語る。

オリンピックが中止された場合の広告主のこういった対応は、あくまで現時点で導き出される推測だ。広告主やエージェンシーは、実際に中止が発表されるまでは、実施されるという仮定のもとで企業活動を続ける。あるオリンピックの広告主は、詳細は明かせないものの現状を監視していると語った。少なくともあるエージェンシーのホールディングカンパニーは、オリンピック中止についてクライアントが話題にしたときどう受け答えすべきかをメモに書いて、アカウントの役員に伝えているようだ。このメモを見た人間によれば、基本的にエージェンシーもまた状況を注視しているといった内容になっているという。

グループエム(GroupM)のビジネスインテリジェンス担当グローバルプレジデント、ブライアン・ウィーザー氏は次のように語る。「具体的な影響があるとして、どのようなものになるか現時点で断言するには早すぎる。だが非常時の対応策は、全員が考えておくべきだ」。

「非常時の対応策などない」

ほかのエージェンシー役員も広告バイヤーは非常時の計画をまとめておくべきだと同意する一方で、オリンピックの中止といった事態に十分な対応など取れるのかといった疑問も抱いている。「オリンピックに非常時の対応策などない。規模が大きすぎる」と、ガニェ氏は語る。

NBCユニバーサルにとっての非常時の対応策は、広告主のオリンピック用の広告予算を同社のほかのインベントリーに向ける事だろう。広告主たちはNBCユニバーサルとの関係性を保つため、資金の一部を同社内のインベントリーに使うことに同意するかもしれない。NBCユニバーサルは、米国におけるオリンピックの放映権を2032年まで有しているのだ。「NBCユニバーサルやIOCに対し、誠意ある対応を行い、非常時計画についても両者と協力しつつ進めたいと考える広告主は多いだろう」と、上記の1番目のエージェンシー役員は語る。

だが、NBCユニバーサルが、オリンピックについて広告主が契約した12.5億ドル(約1350億円)全額分の広告インプレッションは持ち合わせていない可能性もある。「オリンピックのゴールデンタイム枠となる90万ドル(約9700万円)から100万ドル(約1億800万円)を、12万ドル(約1300万円)のゴールデンタイム枠に置き換えることになる。露出頻度の管理や枠の数といった面から、支出額全体を支えるだけのインベントリーはないだろう」と、2番目のエージェンシー役員は指摘している。「守るべき関係性があるといえば確かにそうだが、オリンピックの広告枠を買ったブランドは、オリンピックだから買ったのだ」。

Tim Peterson(原文 / 訳:SI Japan)