BRANDS IN CULTURE

仏・高級ブランドのバッシュ、新しくスニーカー分野に参入:Z世代を取り込むために

パリのシックなスタイルで知られている、フランスの高級ブランド「バッシュ(Ba&sh)」は3月17日、商品構成に新たなカテゴリーとしてスニーカーを加えた。

ザ・クラッシュ(The Crush)という名が、同ブランド初のスニーカーとなる。薄いプリムソールやミニマリストのテニスシューズではなく、90年代の厚みのあるアーバンなシルエットーーなかでも象徴的なジョーダン・ワン(Jordan One)をモデルにしたスタイルを選んだ。CEOのピエール・アーノード・グレナド氏は、スニーカーへの進出は、バッシュの将来にとって重要なZ世代をターゲットにするための手段だと語った。同ブランドの顧客層は広いが、20歳代、30歳代の女性が多い。スニーカーは昨年の時点で800億ドル(約8兆円)のビジネスで、ストックX(StockX)やゴート(Goat)のような再販プラットフォームの消費者の大半は25歳以下だ。

バーチャル試着サービス

新しいカテゴリーに参入するだけでない。バッシュはスニーカーを新しい方法で宣伝している。Snapchatと提携して、顧客が靴を購入する前にバーチャル試着できる新しい拡張現実(AR)フィルターを開発した。グレナド氏によると、この機能はあらゆる消費者のスマートフォンで利用でき、同ブランドのすべてのソーシャルチャンネルやSnapchat広告で、スニーカー自体と一緒に宣伝されている。バーチャル試着機能は、200店舗以上あるバッシュの店舗の販売員が提供することもできる。店内でバーチャル試着したあとは、店頭ではなくオンラインで注文しなければならない。

このバーチャル試着サービスは、既存の顧客がなじみのない新しいカテゴリに容易に入っていけるよう支援するものだ。靴を買う前に履いたときの靴がどのように見えるかを見る機会を彼らに提供すると同時に、Snapchatが持つ広大なZ世代オーディエンスにリーチすることができる。スナップ社(Snap)は同アプリがアメリカの13歳から24歳の90%にリーチしていると主張している。

ARフィッティングルーム技術企業のパーフィットリー(Perfitly)の共同創業者で拡張現実(AR)の専門家であるラガフ・シャーマ氏は、「アパレルのeコマースが直面している最大の課題のひとつは、コンバージョン率が低いことだ」と述べた。「その理由のひとつは、買い物客が新しいブランドやフィット感、スタイルを試すことをためらうことにある。なぜなら、彼らは新しいものを着用する自分自身を上手く想像できないからだ。ARと(衣服などの)フィット感をビジュアル可する技術は、このギャップを埋め、コンバージョンと売上を向上させるのに役立つ。このようなサポートがあることで、消費者に購入を決心してもらうのに大いに役立ち、(結果として)返品または(購入の)諦めの可能性が低くなる」。

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ナイキ・アディダスに追随

バッシュのスニーカーの発売は、Z世代からのトラフィックを増やそうとする試みだが、グレナド氏によると、目標はナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)のようなブランドと直接競合することではない。このふたつのブランドはどちらもバーチャル試着機能活用した経験がある。このスニーカーの価格、構造、色使いはすべて、グッチ(Gucci)のような高級ブランドのスニーカーを競争相手として位置づけている。295ドル(約3万2000円)で、ポルトガル製の革製、落ち着いた色合いが特徴だ。

「スポーツ用品ではなくファッション用品だと考えている」とグレナド氏は述べた。

しかし、バッシュはナイキとアディダスの戦略によく似た動きを見せていることは注目に値する。それは、このスタイルの3色展開の初期リリースが限定販売となっている点だ。グレナド氏は第1弾リリースがどれほどの量、販売されるかについては語らず、発注の規模は「控えめ」であるとだけ述べた。そのバランスを取るため、同社はリリースの24時間前に自社のeコマースサイト上で、消費者に購入権を渡すための抽選を行った。

スニーカー購入権の抽選は、スニーカーマニアにとってはよく知られたプロセスであり、発売時点でプロダクトが貴重である雰囲気をもたらすことをグレナド氏は期待している。しかし彼は、製造部門は「素早い動きをとれる体制をキープしている」とも述べた。発売までの期間は3カ月なので、需要が高ければ、ブランドはすぐに追加生産できる。

「Z世代は将来、市場を支配する」

バッシュは拡張モードにある。グレナド氏は、スニーカーをブランドの永続的な一部にしたいと述べており、今後もさらなるスニーカーが登場する予定だ。LVMH傘下のプライベート・エクイティ企業Lカタートン(L Catterton)は2015年に同社の株式の50%を取得し、2019年には同ブランドの売上高は4倍の2億5000万ドル(約270億円)超に達した。同社は今、その高まったエネルギーを放出する先を見極めている。商品拡充は重点分野のひとつであり、中国を中心に店舗数を増やすことも彼らの重点分野のひとつだ。

「Z世代は将来、市場を支配するだろう」と、グレナド氏は述べた。「ただ若い方が良いから若い消費者を引きつけたいのではない。我々が今のうちに彼らを引きつけることができれば、年齢を重ねても長期に渡ってバッシュの顧客でいてもらい続けることができる」。

[原文:Ba&sh turns to sneakers and Snapchat in bid for Gen-Z

DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)