金融テクノロジーのスタートアップとの連携が深まるにつれ、革新的な取り組みをすばやく実行できない縦割りのお役所的組織というイメージのあった銀行が変わりはじめている。銀行に対する米国民の信頼度がどの政治的立場の層でも50%を下回っているように、銀行はブランディングの問題を抱えているからだ。
金融テクノロジーのスタートアップとの連携が深まるにつれ、革新的な取り組みを素早く実行できない縦割りのお役所的組織というイメージのあった銀行が変わりはじめている。
銀行に対する米国民の信頼度がどの政治的立場の層でも50%を下回っているように、銀行はブランディングの問題を抱えている。そして、ほかの業界との提携が必要となったときには、このことがより大きな問題となる。
「銀行にはフェイルファースト(早めに失敗しておくこと)という文化がない」と、エンパイアスタートアップス(Empire Startups)の創設者で、テックスターズ(Techstars)が運営するアクセラレータープログラム「バークレーアクセラレーター(Barclays Accelerator)」のニューヨーク担当マネージングディレクターも務めるジョン・ザノフ氏は言う。同氏は、「フィンテックウィークNYC(FinTech Week NYC)」カンファレンスの一環として米時間4月26日に開催された「フィン✕テック アニュアルサミット(FinXTech Annual Summit)」に、銀行業界の文化について意見を述べるパネリストとして参加し、「リスクを負ったり失敗したりするチャンスを人々に与えなければ、革新を実現することはできない」と語った。
Advertisement
お互いに学び合う関係
ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)は、スタートアップとのコミュニケーションを円滑にするための取り組みを積極的に行っている大手銀行のひとつだ。ほとんどの大手銀行がアクセラレータープログラムを運営しているが、ウェルズ・ファーゴによれば、同行のスタートアッププログラムで重視していることのひとつは、スタートアップと銀行が互いのカルチャーを理解できるよう支援することだという。ウェルズ・ファーゴのプログラムでは、企業に対して半年間助言を行うほか、一部の企業に対して最大50万ドル(約5000万円)の株式投資を行っている。また、プログラムを終了した企業が、銀行内で異なる複数の事業分野にまたがって概念実証を行えるようにもしている。
「我々は社内アクセラレーターを立ち上げ、フィンテック企業を迎え入れている。ここでは、我々も学べるし、彼らも学べる」と、ウェルズ・ファーゴの社内イノベーション戦略担当エグゼクティブバイスプレジデント、シェリー・リトル・ジョン氏は言う。「我々は、何が可能かを検討するときの彼らの思考方法を学び、彼らは、大企業で仕事をする方法や規制当局に対応する方法を学ぶのだ」。
専門家によれば、こうした取り組みでは、どのような職場環境を準備するかが重要だという。ザノフ氏によると、バークレイズ銀行(Barclays)とテックスターズが運営する13週間のスタートアップ向け開発プログラム「バークレーアクセラレーター」では、チームで素早く仕事ができるオープンな設計の職場が、クリエイティビティを促進しているそうだ。これは、オープンな役員室の採用が進む業界の流れに同調した動きといえる。
「バークレイズが行っていることの多くは、大きな損失を出さないようにしながら、これからの職場をどのようなものになるのかを知るための取り組みだ。そのため、3~5名の小規模なチームが素早く仕事に取り組めるようなオープンな職場を作っている」と、ザノフ氏は説明する。そうすることで、「彼らがどれほど素早く動けるのか、そして我々がそのテクノロジーをどのように取り入れられるか」を判断しているのだ。
関係を生産的にするために
もっと小規模な銀行の場合は、より集中的なアプローチが、両者の関係を生産的なものにするために欠かせない。ボストンを本拠とする無店舗のネット銀行、ラディウス・バンク(Radius Bank)は、スタートアップとの提携を専門とするスタッフをひとり配置し、各スタートアップとの親和性を厳しく吟味している。
ラディウス・バンクのプレジデント兼CEOを務めるマイケル・バトラー氏は、スタートアップの調査について、「スタートアップが開発しようとしているものとうまく連携できるか? 彼らは我々の問題を解決してくれるか?」といったことを調べるのだと、述べている。
小規模な組織ほど徹底した評価プロセスが重要なのは、スタートアップに問題が起きた場合、銀行の業務におよぶ影響がかなり大きくなる可能性があるからだと、リーダー・バンク(Leader Bank)でリテールバンキングと住宅融資担当シニアバイスプレジデントを務めるジェイ・ツーリ氏は言う。
「我々は、彼らが事業を継続している期間とその事業を営んでいる理由について調査する。また、採算が見込めるかどうか、彼らが事業をやめたときにどのような影響が及ぶのかを調べている」と、リー氏は語った。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)