日本の B2Bマーケティング に、いま何が求められてるか? : パナソニックCNS 関口昭如氏・freee 中東孝夫氏

デジタル化の波は、B2Bマーケティングの在り方にも影響を及ぼしている。

企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するインフォバーンは、2020年1月24日、第2回目となる「B2Bマーケティングナイト」を開催。テーマは「2020年のB2Bマーケティングをやりきるための極意とは?」だ。ゲストとして招かれたのは、パナソニックの社内カンパニーで、B2B事業を展開するパナソニック コネクティッドソリューションズ社(以下、パナソニックCNS) エンタープライズマーケティング本部 Webマーケティング部 部長の関口昭如氏と、freee(フリー)で執行役員/ VP fo Marketingを務める中東孝夫氏。イベント前半は、両氏が実践するB2Bマーケティングの極意が共有され、後半のパネルディスカッションでは、B2Bマーケティングの未来について議論が交わされた。

「日本のB2Bマーケティングは従来、その役割の多くをセールス部隊に委ねてきた。しかし、環境の変化により、その関係性は変化してきている」と関口氏は語る。同氏はこれまで、大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスなどの製造メーカーで、デジタルを中心としたB2Bグローバルマーケティングを牽引してきた。一方の中東氏も、消費財メーカーにてキャリアをスタートした後、外資系IT企業や大手通信会社でB2Bマーケターとして活躍。セッションでは、その経験をもとに同氏が考案した、購買ファネルに変わるフレームワーク、「購買ライフサイクル」を紹介した。

狭義と広義のマーケティング

冒頭のセッション、「B2Bマーケターは、広義と狭義のマーケティング活動両方をやるべし」には、関口氏が登壇。日本のB2Bマーケティングにいま何が求められているのか、そしてパナソニックCNSでの実際の取り組みについて語った。

B2Bにおいても、環境の変化により顧客の行動や関心は多様化している。関口氏は「そんななか、セールスが接触する前段階の、購買ファネルにおける『認知』や『比較検討』段階でのマーケティングコミュニケーションや、製品やサービスを購入した後の『リレーションシップ・マーケティング』の担う役割は、以前より大きくなっている」と語る。

また、こうした狭義のマーケティング活動に加え、関口氏がパナソニックCNSで重きを置いているのが、広義のマーケティング活動だ。「目の前の数値を達成し、成果を出すという狭義のマーケティング活動も大事だ。しかしマーケターは、企業内の組織を繋ぎ、経営全体をサポートする、広義のマーケティング活動にも取り組む必要がある」。多様化しているのは顧客行動やニーズだけではない。それに伴い、さまざまな部署やチームが設けられるなど、企業のマーケティング活動も多様化・重層化しているといえる。こうした状況下では、各ステークホルーダが同じビジョンに向かって行動することが、より一層求められるだろう。

そこで、関口氏が所属するパナソニックCNSでは、現在「マーケティング起点で、『ビジネストランスフォーメーションをドライブする』」活動を積極的に展開している。「プロモーション一つひとつの成功も大事だが、従業員やパートナーが、同じ方向を向いている状態を実現することも大切だ」。

「マーケターは狭義と広義のマーケティング、両方に取り組むべき」と関口氏

「マーケターは狭義と広義のマーケティング、両方に取り組むべき」と関口氏

ライフサイクルで考える

一方、中東氏はセッション、「15分で理解するファネル思考のその先『購買ライフサイクル』」に登壇。従来用いられてきた「購買ファネル」ではなく、B2Bマーケティングにより適したフレームワーク、「購買ライフサイクル」について語った。「購買ライフサイクル」は、中東氏がこれまでの経験で培ってきた、経験やノウハウに基づいて考案されたのだという。

「B2Bマーケティングにおける顧客の購買プロセスは、認知してすぐに興味が湧いて、比較・検討して購買に至るという、個人的な心理に基づいたものではない」と、同氏は語る。「購買ライフサイクル」は、顧客の心理ではなく「現状維持」からはじまり、「課題の顕在化」や「仕様策定」「ショートリスティング」「発注・導入・運用」など、企業がB2B商材を検討・導入から現状維持に戻るまでのプロセスを、一連のサイクルとして捉えたものだ。

あああああ

中東氏が紹介した「購買ライフサイクル」モデル

   

「以前、ハードウェアを扱う企業に勤めていた際、あることに気付いた。それは、ハードウェアの場合、顧客は3年か5年のサイクルで、また新しい商品を購入するというサイクルが続いていたのだ。そこで、ファネルではなく、サイクルで顧客の心理や購買プロセスを捉え直そうと考えたのがはじまりだ。そうした顧客の購買サイクルの中で、自社の商材がなぜ脱落しているのか?という視点が生まれた」と述べた。

「購買ライフサイクル」の着想について語る中東氏

「購買ライフサイクル」の着想について語る中東氏

チームビルディングの肝

また、イベント後半にはインフォバーン 取締役COO 田中準也をモデレーターに、パネルディスカッションが実施された。その際、まずトピックに上がったのがチームビルディングだ。それぞれ向いている方向が異なるメンバーの意識をまとめるには、どのような方法を実践するべきなのか。

この問いに口火を切ったのが中東氏だ。「私も、過去にはメンバーに対して『私が必要だと思うことをやらせよう、意識を変えてやろう』と考えていたこともあった。しかし、そんな私のマネジメントには、誰もついてきてくれなかった。いまにして思えば、ついてきてもらえないのは当然だと思う」。

このような過去の経験を踏まえ、同氏が実践しているのが、「ストーリーを紡ぐ」ことだという。「そのメンバーがやりたいことと、マネジメント側が求めていることを繋ぐストーリーを考えてコミュニケーションを取ることで、業務に対してきちんと納得感を持ってもらうことを心掛けている。こうした努力こそが、メンバーの自立自走を促進し、チーム全体の成長にも繋がる」。

一方関口氏は「”How”も重要だが、『何を実現したいのか』という”What”を、チーム内に浸透させることが重要だ」と強調。施策ひとつにしても、目的を定義し、ドキュメントに落とし込む作業を欠かさず行っている。我々はこれを『ブループリント』と呼んでいるが、場合によってはこれをまとめるのに何日もかかることもある。しかし、ブループリントが用意できないと、施策を実行できないようにしている。それほど、マーケティングにおける”What”と”How”のアラインの重要性は非常に高い」。

パネルディスカッションの様子。向かって左から田中、関口氏、中東氏。

パネルディスカッションの様子。向かって左から田中、関口氏、中東氏。

B2Bマーケティングの未来

最後に、B2Bマーケティングは今後どのように変わっていくのか、その未来について議論が交わされた。中東氏は、B2Bマーケティングだけでなく、「今後のマーケティング業界は、各国のガラパゴス化が起きるだろう」と、論を展開する。「分析や、コミュニケーションのためのツールは、グローバルで共通していた方がいい。しかし、その国の文化的背景にあったマーケティング手法が、開発されていくべきだ」。

一方関口氏は、EUの一般データ保護規則(GDPR)の施行をはじめ、世界では昨今、企業活動に関して、社会的な視点が重視されつつある点に触れる。「いままでのB2Bマーケティングは、リードの獲得数やまとめた案件数を増やすために前進あるのみだった。しかしこれからは、GDPRの施行や、Cookie使用の是非など、ユーザが自由に選択し、自分で学べる環境を作ることが必要だ。B2Bマーケティングも、売上が伸びればそれでいいという従来の在り方では通用しなくなるだろう」。

こう述べたうえで関口氏は、以下のように締めくる。「だからこそ、狭義のマーケティングに取り組むだけでは不十分なのだ。社会の一員として、企業のあるべき姿を描き、それを達成するためにはどうしたらいいのかを考える、広義のマーケティング活動にも取り組む必要があるだろう」。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 合田和弘