米最大のアボカドブランド、アボカドス・フロム・メキシコ(Avocados From Mexico)は10月29日、レシピの材料を購入可能にするサービスをはじめた。その他、米大手食品関連各社も、過去1年ほどのあいだに、こぞってセレクトブランドサイト上の全レシピの材料を購入可能にしている。
米最大のアボカドブランドであるアボカドス・フロム・メキシコ(Avocados From Mexico)は10月29日、他の大手食品各社に続き、レシピの材料を購入可能にするサービスをはじめた。米アボカド市場の8割以上を握る同社は、自社サイト掲載の700におよぶレシピの材料をすべて購入可能にすると、同社社長兼CEOアルヴァロ・ルケ氏は発表した。
これら各社サイトにはいずれも、各レシピの下に「材料を入手(Get Ingredients)」と記されたタブがある。ユーザーがこれをクリックし、郵便番号を入力すると、発送方法の選択肢が表示される。アボカドス・フロム・メキシコの場合は、Amazonフレシュ(Fresh)、インスタカート(Instacart)、ウォルマート・ピックアップ・グローサリー(Walmart Pickup Grocery)、ピーポッド(Peapod)の4社で、レシピの全材料か、欲しい材料のみの配送を選択できる。
「弊社は顧客から、可能な限り多くのデータを得る努力を続けている」と、ルケ氏は語る。「顧客を弊社ブランドにできるだけ引き寄せることを目標に、きわめて強固なCRMシステムの構築に努めている。弊社の増資はすべて、この巨大なデータベースの形成に寄与するものだ」。氏いわく、 データ蓄積量の増大は、顧客のeコマース志向に対する理解と顧客経験価値の向上につながるという。
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アボカドスの狙い
アボカドス・フロム・メキシコの利点は複数ある。まず、郵便番号から顧客の位置データを入手できるため、購入場所の地域の特定が可能になる。また、何人がレシピを閲覧し、続いて注文するのか、そしてどんなコンテンツがその購入を促したのかも把握できる。たとえば、アボカドの栄養素に関するコンテンツを消費するユーザーは、サラダレシピを閲覧する、あるいは注文する傾向が高い可能性がある、という具合だ。さらに、他社製品も含め、材料がショッピングカートに追加される数量および頻度も確認できるようになる。
この行動データをもとに、アボカドス・フロム・メキシコはマシンラーニング(機械学習)を利用し、過去の行動にもとづいたパーソナライズドコンテンツを顧客に送る。たとえば、卵を使うレシピをたびたび見ているユーザーがいれば、ソフトウェアはそれを認識し、同ユーザーに向けた卵レシピの作成を開始する。
レシピ材料の購入可能化により、アボカドス・フロム・メキシコは彼らのレシピを自社製品に使用したい企業とのパートナーシップを、そしてそうした企業とのマーケティング費の分担も狙っている。同社は10月29日、サラダトッピングメーカー、フレッシュ・グルメ(Fresh Gourmet)および米農務省が支援する委員会AEBのサイト、インクレディブル・エッグ(Incredible Egg)と、サラダ関連のアボカドレシピを掲載するサラダ・ハブ(Salad Hub) における提携を発表した。
食品各社の動き
キャンベル・スープ・カンパニー(Campbell Soup Company)、ジェネラル・ミルズ(General Mills)、モンデリーズ・インターナショナル(Mondelēz International)、パーデュー(Perdue)といった米大手食品関連各社も、過去1年ほどのあいだに、こぞってセレクトブランドサイト上の全レシピの材料を購入可能にしている。今年7月、モンデリーズ・インターナショナルは自社サイト、スナックワークス(Snackworks)に掲載の、オレオ(Oreo)、リッツ(Ritz)、チップス・アホイ(Chips Ahoy)といった食品ブランドの製品を含む全レシピの材料を買えるようにした。
その前月には、キャンベル・スープ・カンパニーがキャンベルズ・キッチン(Campbell’s Kitchen)に掲載の全3000レシピの材料を購入可能にした。2017年には、ジェネラル・ミルズが自社サイトであるベッキー・クロッカー(Becky Crocker)に、パーデューも自社サイトにそれぞれ同様の機能を加えている。この機能に関して、アボカド・フロム・メキシコをサポートする企業、チコリ(Chicory)のCEOユニ・サメシマ氏いわく、同社は現在、今年中に自社サイトに掲載のレシピ材料の購入可能化を目指す複数の企業と計画の実現に向けて動いているという。
チコリはまた、アボカドス・フロム・メキシコのネイティブ広告のディストリビューションも自社ネットワーク上のパブリッシャーサイトに対して行なう。アボカドス・フロム・メキシコは、その広告キャンペーン費とショッピングカートに移された商品の総価格とを比較することで、ROIにきわめて近いメトリックを算出できると、同社は言う。
Amazonとの関係
ROIはしかし、少なくともセールスに関するかぎり、この場合、もっとも価値の低いKPIとなる可能性もある。サムズ・クラブ(Sam’s Club)、ウォルマート(Walmart)、クローガー(Kroger)といった大手小売業者はAmazonとの戦いにおいてフレッシュダイレクト(FreshDirect)やインスタカートを利用しており、そうしたデリバリー事業者のオプション数は今後も増えていくと考えられる。同時に、Amazon自体もグローサリーのeコマース市場における占有率を順調に拡大している。Amazonは10月25日、傘下のマーケットチェーン、ホール・フーズからのデリバリーは現在、63の都市で利用可能と発表した。
「消費者は普通、グローサリーを注文する際に、どこかひとつのブランドのサイトに行くようなことはしない」と、小売業界で働いていることを理由に匿名を希望するあるマーケターは言う。「理由は単純で、Amazonやウォルマートのほうが商品の種類が多いからだ。誰もがAmazonで買物をするようになる前に、どうにかして顧客データを手に入れようという必死さの現れだよ」。
だが、アボカドス・フロム・メキシコはAmazonを敵ではなく、むしろパートナーとして見ている。実際、 同社はAmazonに対し、プラットフォームにおけるアボカド販売増を後押しするため、マーケティング費を投資している。同社は購入可能なレシピをeコマース市場のパイを勝ち取るための手段ではなく、あくまで自社の顧客に対するサービスの一環と見ている。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)