広告主が広告部門をインハウスに移してキャンペーンデータを保有しても、メディア広告枠の入札に関する悩みは完全には解決できないと、あるブランドのマーケティング部門で働くメディアディレクターは気づいた。今回のDIGIDAY「告白」シリーズでは、この人物に話を聞く。
広告主が広告部門をインハウスに移してキャンペーンデータを保有しても、メディア広告枠の入札に関する悩みは完全には解決できない。
そう気づいたのは、あるブランドのマーケティング部門で働くメディアディレクターだ。今回のDIGIDAY「告白」シリーズでは、この人物が、インハウスチームではアトリビューションをなかなかうまく把握できず、代理店やほかのベンダーに助けを求めなければならなかったことなどを明らかにする。
読みやすさを考慮し、発言には若干編集を加えてある。
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――メディア購買チームはどのような編成になっている?
我々には、全社統一のグローバルアプローチというものが存在していない。たとえば、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)でのやり方は、アメリカでのそれとは異なる。
私が籍を置くインハウスチームが担当しているのは、EMEAにおけるすべてのデジタルメディア購買と、SEOのサポートだ。オフラインメディアの購買は、いまも外部の代理店に委託している。オフラインメディアの市場は40カ国以上にも及んでおり、それをインハウスで購買するのは不可能だ。
この代理店は、オンラインキャンペーンの戦略策定にも力を貸してくれている。構想段階から密に連携し、どのメディアキャンペーンでも最初の10〜15%は彼らにやってもらうことにしている。この代理店の幹部たちが、目的を達成するためにはどんなチャネルやパートナーと組めばいいのか、我々のチームに手ほどきしてくれる。
――インハウスチームの編成は大変だった?
すべてをインハウスで取りしきることが決まったのが2年前。それから4カ月以内には、オンラインメディア購買の大部分を管理するようになり、その2カ月後にはオンラインメディアへの投資を全面的にコントロールするようになった。他社のマーケターは、これが難しく、時間もかかる取り組みであるような言い方をするが、そんなことはない。
もちろん、我々のビジネスの仕組みに助けられてきた部分はあるが、これさえ克服しておけば難しくはならないという障壁はふたつだ。ひとつは、インハウスチームみたいなものを成功させるには、うまく対処するしかない社内政治。もうひとつは、広告主にどれだけリスクを負う覚悟があるか、という問題だ。
――インハウスチームにとって、この先一番の課題は?
ファネル全体を一貫して測定する方法がまだ見出せていない。我々のブランドを選択肢に入れていない人たちから、毎日の生活のなかで使ってくれている人たちまで、あらゆるユーザージャーニーをうまく追跡できるようにする必要がある。一番の課題はアトリビューションで、これはパートナー各社ともさらに密接に協力していかなくてはならない分野のひとつだが、自分たちのなかでも検討を重ねている。
――その問題解決に力を貸してくれる適当なパートナーはいるのか?
どんなメディアを購買しているかについては、以前より格段に透明性が増している。それにより、自分たちのアプローチにも自信が持てるようになった。適切なパートナーにメディアプランに入ってもらうように、常に取り組むことができている。
完全な透明化というのは今後も実現されることはないだろう。このサプライチェーンには、それができるようなビジネスモデルを持たないパートナーが多すぎるからだ。
だからといって、広告主は自社のメディア購買についてできるだけ把握しようとしてはならない、と言いたいのではない。広告主がインハウスチームを編成し、透明性の高いメディアに注力しようとする根底には、自社のデータとそのデータの持つ価値を、自分たちの手元に置いておきたいという思いがあるはずだ。
――もう少し詳しく教えてほしい
マーケターは、自社の広告がどう購買されているのかできるだけ明らかにすることに時間と労力を費やしたいのか、自問すべきだろう。というのも、疑っていても、明らかにならない部分はある程度絶対に残るからだ。そこで目を向けるべきは、透明性とどれだけ成果が上がったかのバランスになってくる。
購買の透明性にだけ焦点を当てるというのも構わないが、問題は、そこに注力しても決して満足はできないし、コストを無駄にする可能性が高いというところだろう。だが、その適正なバランスは、まだどこも見出せていない。それを決めるのには理論や実践力、そして勇気も必要だからだ。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)