中国でのスターバックス(Starbucks)の宅配オプションが実現したのは、アリババ(阿里巴巴)との提携を通じての結果だ。両社は8月に、アリババのオンラインマーケットプレイスや配送ならびにロジスティクスネットワークとオンサイトのモバイルアプリ、モバイル決済ツールをスターバックスとつなぐと発表した。
中国でのスターバックス(Starbucks)体験は他国とは違う。たぶん最大の違いは、中国の顧客はフラペチーノを自宅まで配達してもらえることだ。
宅配オプションが実現したのは、同国のeコマースプラットフォームであるアリババ(阿里巴巴)との提携を通じての結果だ。両社は8月に、アリババのオンラインマーケットプレイスや配送ならびにロジスティクスネットワークとオンサイトのモバイルアプリ、モバイル決済ツールをスターバックスとつなぐと発表した。
スターバックス・インターナショナル(Starbucks International)でチャンネル開発ならびにグローバルコーヒー・紅茶部門担当グループプレジデントを務めるジョン・カルバー氏は次のように語る。「この提携は宅配だけに関わるものではない。これは、中国における我が社の全体的なデジタルフライホイール戦略のための推進剤になるだろう」。
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スタバの中国戦略
中国でのビジネスをスケールアップするために、スターバックスは、アリババの「ニューリテール」コンセプトを実践しようとしている。このコンセプトは、モバイルショッピングやモバイル決済のようなeコマースのデジタルファーストのタッチポイントと伝統的な店頭販売とを結合させるものだ。スターバックスは中国での店舗数を増やしている。2017年9月~2018年9月の間に、スターバックスは予定を凌ぐ585の関連ストアを新たにオープンし、同期間中に17都市に新規参入した。さらに、アリババの「Amazon Go」スタイルのレジなしスーパーマーケット「ヘマ(Hema)」では、スターバックスへの注文がオンサイトのキッチンを通じて受け付けられ、店内で商品を受け取れる。
スターバックスの中国戦略は、サードパーティの配送プラットフォーム、モバイルの注文プラットフォームと物理的店舗でデジタルによって実現される体験との統合を通じて、大手小売業者である同社が他の市場でやっていることを映し出している。スターバックスとアリババのタイアップには、アリババが4月に買収した食品宅配プラットフォーム「Ele.me」も含まれる。店に行きたくない顧客は、「Tモール(天猫)」のようなオンラインマーケットプレイスや「タオバオ(淘宝网)」のようなピアツーピアマーケットプレイスを使えばいい。スターバックスはまた、3500軒のカフェをデリバリーハブとして利用してもいる。
オンライン小売業者を対象にした予測分析プラットフォーム、カストラ(Custora)の最高経営責任者(CEO)であるコレー・ピアソン氏は、「中国の消費者は、非常に大きなモバイル市場にいて、モバイルショッピングやモバイル取り引きに関しては米国のはるか先を行っている。米国のブランドで、中国市場での拡大を考えているなら、ここには大きな成長のチャンスがある」と話す。
中国という国の重要性
中国はスターバックスにとって2番目に大きく、成長がもっとも早い市場だ。配達に対する顧客の需要は増えている。小売業シンクタンクのコアサイト・リサーチが引用した(アリババが2017年に買収したロジスティクス企業)チャイニャオ(Cainiao、菜鳥)のデータによると、中国での荷物の速達便利用は2014年~2017年の間に42.1%増加した。小売業者は、デジタル発のトランザクションと物理的店舗ではじまることの両方で、期待に応えようと大急ぎで取り組んでいる。
「オンラインセールスの増加は、配達の需要の増加につながる。そして中国の顧客は、そうした配達がいままで以上に早くなることを望んでいる」と、コアサイト・リサーチCEOのデボラ・ウェインスウィグ氏はいう。
スターバックスの中国での配達サービス開始は、米国内で提供されるかもしれないもののヒントになっている。第4四半期決算の電話会見で、スターバックスの最高執行責任者(COO)であるロザリンド・ブリューワー氏は、同社は今夏フロリダ州マイアミで宅配サービスをテスト的に行い、結果は「将来性がある」ものだったと述べた。
顧客にとって便利に
ムーディ(Moody)の上級信用調査担当者、ビル・ファイー氏は、他の小売業者と同様にスターバックスも、サードパーティのプロバイダーを使って宅配のテストを行い、効率性や費用対効果を査定していると話す。外部の宅配業者が顧客の期待に応えられず、さらに他の欧米ブランドや地元の競合他社との競争が激化したら、ブランドがダメージを受ける危険性がある。中国市場はここ数年、欧米ブランドで溢れかえり飽和状態にあるが、スターバックスは信頼と持久力を伴うユニークさを維持し続けていると、ファイー氏は付け加える。実店舗のネットワークもまた、地元企業との競争するうえで重要な資産になるだろう。
「スターバックスは、モバイル決済であろうと、ロイヤルティプログラムであろうと、事前注文であろうと、フリクション(摩擦)を最低限にして、顧客にとって可能な限り便利になろうとしている」と、ファイー氏は語った。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)