12月最終週、JCペニーは最高経営責任者のジル・ソルトー氏が12月31日付で退職することを発表した。同氏は2018年にジョアン・ファブリックス氏と入れ替わる形で、10年間で3人目となるJCペニーのCEOとなった。JCペニーの再建計画を立案していた人物が会社を去った今、同社の次の動きが何かは不明だ。
JCペニー(JCPenneys)の再建計画を立案していた人物が会社を去った今、同社の次の動きが何かは不明だ。
12月最終週、JCペニーは最高経営責任者のジル・ソルトー氏が12月31日付で同社を退職することを発表した。ソルトー氏は2018年にジョアン・ファブリックス氏入れ替わる形で、10年間で3人目となるJCペニーのCEOとなった。ショッピングモールを傘下に持つサイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group)やブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)などの買収グループが倒産状態のJCペニーを買い取る契約を結んだ直後に彼女は辞任した。
ソルトー氏の2年間の在職期間中、彼女はいくつかの取り組みを始めた。これには、店舗内品揃えの削減、一部のプライベートブランドのデザイン変更、コロナウイルスの大流行が起こる直前に行われた新しい店舗フォーマットの実験開始などが含まれる。しかし、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)の取材に応じたアナリストのなかには、同氏はJCペニーを黒字に戻すのに十分な速さで動いていない、あるいは黒字に戻すのに必要な大きな変化を起こしていないという人もいた。その後、コロナウイルスの大流行が起こったとき、JCペニーは苦境を乗り切るだけの十分な資金を持ち合わせていなかっただけでなく、セフォラ(Sephora)との重要なパートナー契約も失った。セフォラは最近、大型小売店のなかに展開する店舗機能をJCペニーからライバルのコールズ(Kohl’s)に移すと発表した。
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カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)のビューティー・アパレル部門の主任アナリスト、ティファニー・ホーガン氏は、「(コロナウイルスの流行は)彼らが加速させようとしていた取り組みから勢いを奪ってしまった」と述べた。
JCペニーは新しいCEOをまだ発表していないが、サイモン・プロパティ・グループの最高投資責任者スタンリー・シャシュア氏が暫定CEOに就任することを発表した。ソルトー氏の離脱について、12月末に発表されたプレスリリース以上のコメントはJCペニーからは得られなかった。
原点回帰を中心とした転換
ソルトー氏の前任者たちは、いくつかの点で急ぎすぎていると批判されていた。2011年から2013年までJCペニーのCEOを務めたロン・ジョンソン氏は、ほとんどすべてのセールとプロモーションを中止したことで広く非難された。その代わり、同氏は「エブリディ・ロープライス(everyday low prices)」を前面に押し出した。JCペニーが顧客からの反発を受けたあと、彼は最終的にこの決定を覆した。
2018年10月、ソルトー氏がJCペニーのCEOに就任したとき、状況は悲惨であった。JCペニーは2010年以来赤字が続いており、数十億ドル(数千億円)の負債を抱えていた。彼女はJCペニー店舗のなかでもっとも業績の悪い部分のいくつかを改善するために、家電事業の縮小などの緊急措置を講じた。しかし、翌年の収支報告で、彼女は「小売業の基盤を再構築する」ことが第一の目標だと繰り返した。
彼女は2019年の最初の数カ月を新しい経営陣の結成に費やし、ターゲット(Target)でプライベートブランドの開発に携わっていたミシェル・ブラズロ氏を最高マーチャンダイジング責任者として迎えるなどした。もうひとりの元ターゲットの幹部トリシュ・アダムズ氏は、JCペニーが価格設定とプロモーション戦略を簡素化するのを支援する戦略アドバイザーとして参加した。ソルトー氏は店舗在庫の削減にも努めた。
ジェーン・ハーリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売リサーチアナリストであるジェシカ・ラミレズ氏によると、JCペニーはアパレルの品揃えを顧客にとってより関連性の高いものにするための措置を講じ、アスレチックウェアなどの人気が上昇しているカテゴリーの商品を増やしたが、店内の品揃えを大幅に改善するには十分ではなかったという。「店舗に入るたびに、あまりに多くの特売セールが行われていた。どんなストーリーを伝えようとしているのか理解するのが難しかった」と、彼女は述べた。
JCペニーはまた、まず第一にフォーマルなオフィス用衣服を購入するために訪れる場所であるという百貨店としての認知でも苦戦した。「調査の結果、多くの顧客がJCペニーをカジュアルやデニムの衣料を購入する場所とは考えていないことが明らかになった」とブラズロ氏は2月、JCペニーが新しいプライベートブランドのラインをリリースした際に、もうひとつの米DIGIDAYの姉妹サイト、グロッシー(Glossy)に語った。
JCペニーは、コロナウイルスの大流行が起こる少し前の2019年12月、ダラスの1店舗を改装し、新しい店舗フォーマットのテストを開始した。改装された店内には、フィットネススタジオや子供向けのアクティビティができる集会所的なスペースなどがあった。
パンデミックのあいだの苦しい戦い
今年の3月にコロナウイルスの大流行が起きたとき、JCペニーはカーブサイド・ピックアップ(駐車場など店舗のすぐ外で品物を受け取る形式)のテストを始め、50店舗にそのサービスを展開したばかりだった。そのため必要不可欠でない小売業の店舗たちが一時閉鎖を命じられた時には、何年も前からカーブサイド・ピックアップを提供していたコールズやターゲットのようなほかの小売業者とは異なり、JCペニーは迅速にサービスを強化しなければならなかった。
パンデミックの初期には、別の打撃もあった。何百ものJCペニー店舗においてショップインショップを展開していたセフォラが、16年間の契約の早期終了を求めて同社を訴えたのだ。セフォラが、店舗が閉鎖されているあいだにJCペニー・インサイド・セフォラ(Sephora inside JCPenney:SiJCP)従業員の一部を一時解雇するというJCペニーの決定に憤慨したからだった。両社は最終的に和解した。しかしその数カ月後、セフォラはJCペニーとの契約が終了したあとにコールズへショップインショップを開設すると発表した。
現場でのパンデミックに終わりが見えず、2月の時点で帳簿上の約36億ドル(約3765億円)の負債があるなか、JCペニーは5月中旬に破産を申請することを決めた。
最終的に、JCペニーはショッピングモールのオーナーであるサイモンとブルックフィールドを含む、買い手グループを見つけた。買い手はまだ再建計画を明らかにしていないが、JCペニーの店舗の大部分がショッピングモールにあることを考えると、賃貸料の軽減という形で一時的な救済を提供できるかもしれない。
しかし、JCペニーの店舗の大部分がショッピングモール内にあるという事実は、ショッピングモール外の店舗の方が多かった場合と比べると、再建への道をより複雑にしていると、一部のアナリストは語る。
「百貨店はどのような形を成すのか、ショッピングモールの未来はどうなるのか。JCペニーはアメリカのショッピングモール業界の大きな部分を占めているので、これらの運命は互いにかなり密接に結びついていくだろう」とホーガン氏。
JCペニーの競合他社もコロナウイルスの大流行で大きな打撃を受けており、コールズとメイシーズ(Macy’s)の最新の決算報告によると、同店舗売上高はそれぞれ20.2%と13.3%減少している。しかし、この2社はJCペニーほど多くの負債を抱えていなかったため、立ち直るには有利な立場にあった。特にコールズは、店舗の大半がショッピングモール内ではないという事実からも恩恵を受けている。
多くの点で、ソルトー氏の再建努力にもかかわらず、JCペニーの運命は不可避なものであり、コロナウイルスの大流行によって加速されたにすぎない。
現在、JCペニーは新たなオーナーの下で、小売業における同社の役割が何であるかを再考しなければならないだろうと、ホーガン氏は述べた。
「ほかにどこへ店舗を構えることができるのか、ほかにどのようなプラットフォームを計画することができるのか、そしてもっとも重要なことは、買い物客を店舗に呼び戻すための方法を考え直すことだ」と、ホーガン氏は付け加えた。
[原文:As JCPenney’s CEO exits, a turnaround is still far away]
Anna Hensel(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)
Photo from JCPenneys