消費者は、生活必需品の価格が上がり続けるのに応じて予算を節約するようになり、安価な プライベートブランド が市場シェアを伸ばすようになるかもしれない。労働省からの最新のデータによると、インフレの重要なバロメーターである消費者物価指数は2021年12月に前年比で7%上昇した。1982年6月以来最大の年間上昇率だ。
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生活必需品の価格が上がり続けるのに応じて、消費者は予算を節約するようになり、安価なプライベートブランドが市場シェアを伸ばすようになるかもしれない。
労働省からの最新のデータによると、インフレの重要なバロメーターである消費者物価指数は2021年12月に前年比で7%上昇した。これは1982年6月以来最大の年間上昇率だ。12月には、家庭用家具や業務用機器、衣料品、食料品など、いくつかのカテゴリーのコストが増加した。消費者の給料の多くが生活費に費やされるようになったため、定番のナショナルブランドからプライベートブランドの商品へと支出が移行する可能性がある。同時に、大手小売企業は過去数年間にわたって売上を伸ばすために、新しいプライベートブランド商品の開発に注力してきた。
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インフレ時に台頭するプライベートブランド
顧客がプライベートブランドの商品をより多く買うという兆候はすでに表れている。ターゲット(Target)の保有するブランドは第1四半期に36%の伸びを示し、同社が記録したなかでもっとも大きな成長を見せた。3月にはクローガー(Kroger)が、自社のストアブランドにおいて、前年比で13.6%の記録的な売上の成長を見せ、262億ドル(約3兆100億円)に達したことを報告した。
プライベートブランドは歴史的に、インフレのときや経済の先行きが不透明なときに成長してきたと、プロフィテロ(Profitero)の戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるキース・アンダーソン氏は語る。1970年代の大インフレのとき、プライベートブランドは有名ブランド商品の費用対効果の高い代替品として、顕著な成長を見せた。2008年に経済が急速に収縮したときにも、アメリカの家庭はストアブランドを選ぶようになった。
アンダーソン氏は次のように述べている。「何を買うかについて、ある程度慎重に計画するようになることは珍しくない。生活の困難を感じるようになれば、予算を考えるようになり、買い物に行ったときには、ただ探すだけでなく、何を買うかについて、正確に判断するようになるのだ」。
大手メーカーによる相次ぐ値上げ
価格上昇はすぐには停止しないようだ。キャンベルスープ(Campbell Soup)やモンデリーズ・インターナショナル(Mondelez International)などの大手食品メーカーや、消費者向け商品メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)は、食料品の値上げを発表した。ベッドブランドのバフィー(Buffy)や、食品容器ブランドのストージョ(Stojo)など、いくつかのD2Cブランドは、材料費、人件費、またはそのほかのサプライチェーンの制約を相殺するために値上げを行うと発表した。
ニューメレイター(Numerator)のデータでは、消費者の55%は昨年7月の値上げによって、買い物習慣の一部をすでに変更したと回答している。調査対象者のうちの54%は、今後の価格高騰を「多少」または「かなり」懸念していると回答した。
消費者が新しいブランドの商品を試したり、有名ブランドからストアブランドに乗り換えたりする傾向が強くなるのはこのような時期だ。このような商品は一般に有名ブランドより安価である。「これらのプライベートブランドは、そのカテゴリーのなかで安価に設定されているため、購入しやすい」とアンダーソン氏は語る。
IRIの最新データによると、プライベートブランドを熱心に支持している消費者は年齢層が高く、大所帯で買い物をする傾向がある。このようなプライベートブランドを支持する消費者の半分強(55%)は、世帯所得が7万ドル(約805万円)未満だ。
品質も重要な要素
価格に敏感な消費者たちにとって、プライベートブランドの商品は手に入れやすくなっている。近年では大手小売業者が、トレンドのカテゴリーで市場シェアを獲得するために、プライベートブランドや独占ブランド商品を増やしてきた。ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)は3カ年戦略の一環として、2021年に8つのプライベートブランドの立ち上げを計画した。ターゲットには45を超えるプライベートブランドがあり、家庭整理用品ブランドのブライトルーム(Brightroom)はもっとも新しいブランドのひとつだ。
近年に立ち上げられたプライベートブランドの多くは、従来のような「安かろう、悪かろう」のイメージはない。たとえばウォルマート(Walmart)は昨年、高名なファッションデザイナーであるブランドン・マクスウェル氏を、自社の高級ブランドであるフリーアッセンブリー(Free Assembly)とスクープ(Scoop)のクリエイティブディレクターに起用した。メイシーズ(Macy’s)も昨年、アンド・ナウ・ジス(And Now This)という新しいプライベートブランドのラインを立ち上げ、「最先端のファッションを手頃な価格で」提供することを標榜している。
アンダーソン氏は次のように述べている。「私は、北米における長期的な動向として、プライベートブランドがゆっくりと、しかし着実に成長していくと考える。これらのブランドの多くは、消費者が低価格の代替品として一時的に使ってみることで、短期的な利益を得ることができるだろう」。しかし最終的には、品質こそが、プライベートブランドがそのカテゴリーにおいて恒久的な地位を得る要素となる。
ピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)の北米における小売戦略リーダーを務めるヒルディング・アンダーソン氏は、過去にインフレによって引き起こされた習慣が再度発生する可能性はあるが、過去のインフレは今日の消費者が直面している環境とはまったく異なるものだと付け加えている。
同氏は、小売業者は過去20カ月連続で前年比売上増を記録しており、そのような環境下では、供給と需要の著しい不均衡がインフレの主要な要因になっているという。「全体として、現在は強いインフレの時代だが、過去20年間においてもっとも小売市場が強い時代のひとつでもある」と同氏は述べている。
[原文: As inflation rises, private labels are quietly taking over retail ]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
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