GDPR 施行間近、パートナーに遵守を求めるマーケター

メディア業界ではこれまで例になかったことだが、昨今広告主とパブリッシャーの意見が一致している。パブリッシャーと広告主は、2018年5月25日から施行が始まるEU圏のGDPR(一般データ保護規則:General Data Protection Regulation)を無視するアドテク企業のサプライチェーンを一掃しようと躍起になっているのだ。

この規制が施行開始まで一カ月を切ってから、サプライチェーンの見直しを迫られている広告主のあいだでは、データを見失ってしまうのではないかという不安が募っている。たとえばアメリカの大手電池メーカーのデュラセル(Duracell)は、データの二次販売元に対し、GDPRに沿った形でデータを販売する必要があること、そしてそれが守られなかった場合は、規制に従わない二次販売元との取引を打ち切ることをサプライチェーンにおけるほかの取引先に伝えるとしている。

「一任」はできない

広告主は、データ管理に関わるすべてのリスクマネージメントを単にパートナーに「一任する」ことはできないことを分かっていると、位置情報マーケティングのプラットフォームのティーモ(Teemo)でCEOを務めるベノイト・グローシュコ氏は語る。そして彼らは現在、広告業界全体としてどのようにデータが取引されるべきか、という明確な指標を示すうえで、協働するアドテク企業の数を減らすだけでは不十分だということにも気づいている。

ある広告主にいたっては、それを心配するあまり、GDPRに準拠するアドテク企業と協働していることを証明できない場合には、プログラマティック予算を削減するかもしれないとエージェンシーに伝えていると、あるパブリッシャーのトップは語る。直近の英DIGIDAYによるプログラマティックマーケティングサミット・ヨーロッパ(Digiday Programmatic Marketing Summit Europe)において、複数のエージェンシーが、彼らのサプライチェーンの一部が月末まで生き残ることができるかを問いかけられた場合には、同様に予算を削減する可能性があることをクライアントに明らかにしている。そのほかの広告主も、巨大なテクノロジープラットフォーム以外のデータ提供元、つまりサードパーティ経由で購入したデータがGDPRに準拠しているかどうかが確かではないような企業との協働を避けはじめている。匿名希望のメディア幹部が語ったところによると、ある広告主は、あるベンダーから購入したデータが使用できなかったことがきっかけで、信頼できるデータを安全な場所から購入することを真剣に検討しているという。

「オンラインのテック企業のデータセットの規模や、広告主にはGDPRとeプライバシー規則(ePrivacy regulation:EUクッキー法)に準拠しているかどうかを徹底的に調べ上げている法務部門があることを考えれば、広告主のこうした決断は妥当だ」と、その幹部は語る。

ベンダーのリスク

広告主からの脅威のなかで、ベンダーはいまだ不透明なサプライチェーンで、これ以上データを活用するリスクを取るかどうかを恐れている。たとえば、広告主が要求を受けたら個人情報を削除できる権限を与えられ、しかもエージェンシーやベンダーにはどのような記録が削除されたかを知るすべがなかった場合、エージェンシーやアドテクベンダーにとって、このような新たなパートナーシップが公平なものであるとは言い難い。また、なかにはエージェンシーとの契約改定を利用して、そのリスクをさらにサプライチェーンに押し付けようとしているブランドも存在すると、位置情報データ計測を行うリップル(Rippll)でCEOを務めるダグ・チズム氏は語る。

「誰もが『契約内容は更新しているので問題はない』と言っている」と、チズム氏。「だが、必ずしもその改定内容を立証するテクノロジーがあるわけではなく、どのデータがサプライチェーンから削除されたかをアドテクベンダーが知るすべがないというのは大きなリスクであり、アドテクベンダーにとっては厳しい状況となる。この問題を解決できる契約など、存在しない」。

世界屈指の広告主の何社かはこの問題に取り組むため、GDPR施行後のより効果的なサプライチェーンの運用法を模索している。WFA(The World Federation of Advertisers)は、ユニリーバ(Unilever)、ディアジオ(Diageo)、ディズニーやペルノ・リカール(Pernod Ricard)などの企業からマーケターを引き抜き、自身のデータや、直接的または間接的なビジネスを通じて購入したデータの管理の主導権をどのように保持するかを検討中だ。広告主は、「彼ら自身のバリューチェーンを、もっとシンプルな形に改変しようとしているのは明らかだ」と、WFAのCEOのステファン・ローク氏は語る。「なぜなら、ブランドオーナーには法的責任があるからだ」。

さらなる精査の実施

全世界で累計650億ドル(約7兆1000億円)を広告に費やしている計34人のWFAの会員に行なった最近のアンケートによると、回答者の3分の2近く(64%)が、エージェンシーなどのサードパーティとの契約を見直す予定だという。

広告主がさらなる精査を行うことで、エージェンシーとの亀裂がさらに深まる可能性がある。そこにはエージェンシーが次々とテクノロジーをホワイトラベル化しつつ、それをあたかも自分のもののように振る舞うという危険性をはらんでおり、広告主がこれを発見すればするほど、そのデータの出どころや、正当に使用権が得られているかどうかの疑惑が強まる。パフォーマンスエージェンシーのロースト(Roast)でモバイル/ディスプレイ部門のトップを務めるルーシー・カニンガム氏によると、エージェンシーはテクノロジーのホワイトラベル化を当たり前のように行なっているという。よくあることだがプロバイダがマーケットリーダーでもある場合、エージェンシーは常に個々のクライアントに対してすべてのプロバイダの調査と評価を行うことで、はじめて優位な立場でいられると、カニンガム氏は語る。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac