いまやあらゆる人々が、ポッドキャストを活用したいと考えている。ゲームインフルエンサーもそうだ。ポッドキャストは、Twitch(ツイッチ)やYouTubeで有名なゲームやeスポーツのコンテンツクリエイターに、新規オーディエンスやスポンサーシップ、そしてブランドパートナーシップ獲得の機会をもたらしている。
いまやあらゆる人々が、ポッドキャストを活用したいと考えている。ゲームインフルエンサーもそうだ。ポッドキャストは、Twitch(ツイッチ)やYouTubeで有名なゲームやeスポーツのコンテンツクリエイターに、新規オーディエンスやスポンサーシップ、そしてブランドパートナーシップ獲得の機会をもたらしている。
「フェイズ・ラグ(FaZe Rug)」の名で知られるブライアン・アワディス氏も、数週間前にポッドキャストの世界に飛び込んだ著名なゲームインフルエンサーのひとりだ。人気eスポーツチーム、フェイズ・クラン(FaZe Clan)の共同オーナーを務める24歳の同氏は、現在さまざまなプラットフォームで、合計2000万人以上のフォロワーを抱えている。
アワディス氏は7月18日、自身にとって(そしてフェイズ・クランにとって)初となるポッドキャスト番組、「オール・グローン・アップ(All Grown Up)」の第1話を公開した。「私たちは、フォーマットとプラットフォームを全面的に拡大しようとしている」というのは、フェイズ・クランでコンテンツ担当エグゼクティブバイスプレジデントを務める、ビル・マッカロー氏だ。「私たちはポッドキャストをその絶好の機会と捉えている。いまのところ、オーディエンスのロイヤルティとエンゲージメントは非常に高い」。このポッドキャストは、YouTubeのほか、Spotify(スポティファイ)、Apple、スティッチャー(Stitcher)などの主要なポッドキャストプラットフォームで広く配信されている。
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オール・グローン・アップのリスナー数は、アワディス氏のYouTubeチャンネルには遠く及ばないものの、ひとつのエピソードで50万~100万人のリスナーを集めはじめるなど、数週間前に開設されたチャンネルとしては驚異的だ。マッカロー氏は、フェイズ・クランのファンがポッドキャストという形式に慣れてくれば、ポッドキャストが従来の動画コンテンツをサポートしてトラフィックを集めるようになるため、オーディエンスを食い合うこともないと考えている。このオール・グローン・アップの成功は、アワディス氏がどのようなメディアに移っても、同氏のファンが熱心について来てくれることを示すものだ。
ピュー研究所(Pew Research Center)によれば、ポッドキャストのリスナー数はここ数年で着実に増加している。2021年の調査では、12歳以上の米国人41%が過去1カ月間にポッドキャストを利用したと回答していた。
いかに既存コンテンツとの差別化を行うか
インフルエンサーを追いかけて、新しいプラットフォームやメディアにやって来たファンは、新しいトーンのコンテンツを期待する。そこでアワディス氏は、これまで同氏がYouTubeに投稿していたゲーム実況やいたずら動画ではなく、フェイズ・クラインのメンバーであることの意味について、友人や親しい人物と語り合うコンテンツを展開。これは、ゲーム実況者でインフルエンサーでもあるルートヴィヒ・アーグレン氏が、7月8日にはじめたポッドキャスト番組、「ザ・ヤード(The Yard)」で取り入れた戦略と似ている。アーグレン氏は、今年はじめにTwitchでもっとも購読者の多いゲーム実況者となっている。また、同氏のザ・ヤードはYouTubeでも展開されており、これまで15万~30万回の視聴数を記録している。
ザ・ヤードの共同ホストのひとりであるニック・ベルシーロ氏は、「さまざまな点で、これはゲームを中心としたものではない」と話す。「私の考えでは、人々はその人の個性により大きな関心を抱くものだ。人々があなたを見つけてくれたのは、彼らの好きなゲームをプレイしていたからかもしれないが、たとえ嫌いなゲームをプレイしていても彼らは見てくれるだろう」。
オール・グローン・アップと同じく、複数の主要なプラットフォームで広く配信されているザ・ヤードも、トークがメインだ。また、Twitchでのゲーム実況ほど、話す内容に制限を設けていない。「多くの点で、この番組はとても自由だ。スポンサーから『この言葉は使わないでくれ』といわれることもあるが、それほど多くない」と、ベルシーロ氏は説明した。
ポッドキャストは、インフルエンサーがオーディエンスにあらためて自分をアピールするのに役立っているだけでなく、スポンサーやブランドとのパートナーシップを獲得する新たな機会ももたらしている。いまのところ、ザ・ヤードがスポンサー契約を結んでいるのはコインベース(Coinbase)のみだが、現在も多くのパートナー候補と交渉を進めているという。ベルシーロ氏によると、ポッドキャスト番組の広告は、「番組の冒頭と途中」にホストによって読み上げられる」という。
インフルエンサー自身の「個性」が大事
「インフルエンサーの人気にもよるが、非常に熱心なオーディエンスは30分~数時間も番組を聴き続けてくれる」と、ジャーナリストであり、eスポーツニュースのポッドキャスト番組「FTW・ウィズ・イマド・カーン(FTW with Imad Khan)」のホストを務めるイマド・カーン氏はいう。「テレビで1本の30秒広告を流すのとは異なるパワーがあることに、広告主は気付きはじめているのではないか」。
もっとも、既存のオーディエンスを楽しませることだけが、ゲームやeスポーツのポッドキャストを成功させる方法ではない。カーン氏のFTWのようなニュース主体の小規模なポッドキャストは、ドット・イースポーツ(Dot Esports)のようなメディア企業の支援を得ることで、この分野においてニッチなオーディエンスを新規に獲得することに成功している。カーン氏によれば、自身のポッドキャストがドット・イースポーツに買収されて以来、「オーディエンス規模が、少なくとも5倍にはなった」と述べる。
ただし、オーディエンスがポッドキャストを聴く目的は、特定のインフルエンサーやクリエイターが見せる、「いつもと異なる姿」を楽しむことにあるとカーン氏。「インフルエンサーたちの個性が、毎週のように耳を傾けてくれる熱心なオーディエンスをもたらしている」。
ゲームインフルエンサーがポッドキャストに参入すれば、そのファンもポッドキャストに流れる。インフルエンサーと、彼らを支援するブランドの両方に新たなチャンスが生まれるのだと、カーン氏は語った。
ALEXANDER LEE(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)