「サブスク疲弊」回避のため、手段を模索する新興企業たち

サブスクリプション制を売りにするスタートアップは成長してきているが、顧客層を増やすためには、自社のビジネスモデルに柔軟性や多彩さを常に増やしていかなければならないことを実感している。

バーク(Bark)やスティッチ・フィックス(Stitch Fix)、レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)は、従来のサブスクリプションサービスでは毎月1日きっかりに商品が到着し、注文をキャンセルするには30日前までに通知が必要であったところを、より柔軟な条件を提供するという付加価値を提示している。これらの企業は、新しい顧客を引き込むには、いつ、どの程度の量の製品を顧客が受け取りたいと考えているかに配慮して、顧客の選択肢を増やし続ける必要があることを理解しているのだ。そのため、過去のサブスクライバーから収集したデータを利用して、新しい顧客向けの体験をより良くパーソナライズしはじめた。

顧客定着率は、サブスクリプションモデルに頼っている企業だけでなく、より多くの企業にとって意味がある。ほかのeコマースリテーラーは、顧客に定期的なペースで注文をしてもらえるようにすることで、収益性を常に向上させようとしているが、これは、顧客がサブスクリプション制の利用に慎重である場合は、一層難しくなる。たとえば、新規株式公開したペットケアマーケットプレイスであるチューウィー(Chewy)は、顧客に自動配送サービスに申し込んでもらおうと努めている。顧客はこのサービスに申し込めば、同じ製品を定期的に受け取ることができる。チューウィーはこのサービスを会費なしで提供している。

CEO(最高経営責任者)のスミット・シン氏は、先週、チューウィーのはじめての業績発表の際に次のように述べている。同社に定期的に注文をしている顧客や、書類記録からは自動配送サービスに申し込みたいと考えているように思われる顧客のなかには、おそらく注文品を受け取るにあたっての物流が原因であったり、サブスクリプションサービスに疲弊してしまったことが原因で、実際には自動配送サービスを利用したいと考えていないことがわかったという。

代表的な成功・不成功事例

サブスクリプションが収益性を高めるうえでどれほど強力なツールであるかを示す、もっとも代表的な例が、スティッチ・フィックスだ。同社はこれをサブスクリプションサービスではなく、スタイリングサービスと呼んでいる。スティッチ・フィックスの付加価値提案は、顧客が衣類の配送を受け取りたい時間を指定できるようにすることだが、同社は、商品の品質の良さが反復注文の推進力になればよいと考えている。2019年第2四半期で、スティッチ・フィックスは、純利益が700万ドル(約7.6億円)、310万人のアクティブ顧客がいると報告している。

一方で、ブルーエプロン(Blue Apron)は、ブランド離れがサブスクリプションビジネスに痛手を及ぼした代表例だ。新規株式公開後、このミールキットお届け会社のサブスクライバー数は、2017年には100万人であったのが、2019年の第1四半期には55万人まで減少し、収益を上げることができなかった

「商品のカテゴリが、買い物を楽しむという類のものではなく、配送が容易で、補充サイクルが予想でき、買いに行くのをつい忘れてしまうような商品の場合は、このサブスクリプションというシステムが百発百中でうまくいく」と、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)で最高知識責任者兼リテール統括者を務める、ブライアン・ギルデンバーグ氏は述べる。

柔軟に変化を続ける企業

「私は間違いなく、サブスクリプションの支持者ではない顧客のひとりだった」と、サブスクリプション制ドッグフード会社、オーリー(Ollie)の共同創業者兼最高体験責任者であるギャビー・スローム氏は言う。しかし、彼女と彼女の共同創業者は、2015年に開始したサブスクリプション制は、オーリーにとっては理にかなっていると思っていたと、彼女は言う。なぜなら、製品のカテゴリが頻繁に補充する必要のあるものであり、飼い主たちは自分の飼っている犬が毎月どれくらい食べるかをよく知っているものだからだ。

オーリーは、ほかの数多くのスタートアップ同様、柔軟なサブスクリプションモデルからスタートした。このモデルでは、顧客は配送ペースを選択できる。毎週商品を受け取ることもできるし、最長で4週間に1回にすることもできる。しかし、顧客の調査を実施して、オーリーは、顧客は商品の配送をそんなに頻繁にしてほしいとは考えていないことを知った。そのため、3月には、オーリーはパッケージを刷新し、商品をより出荷しやすく、これまで以上に大量のパッケージを保存できるようにして(オーリーのペット用食品は冷蔵庫あるいは冷凍庫に保管する必要がある)、顧客がときたま、8週間に1度ほどの頻度で商品を受け取る選択をできるようにした。ここまでのところ、同社は、平均注文額は上がったと発表している。

オーリーと同様に、子供用衣類のサブスクリプションサービス会社、キッドボックス(Kidbox)は、顧客が自身のサブスクリプションを常に管理したいと考えていることを知った。同社は今年、サブスクライバーがシーズンボックスを受け取るときに、最大で年6回までの配送間隔を選択ができるようにした。

「私たちが学んだことは、当社のシーズンの開始時期がそれぞれの顧客がシーズン開始を望むタイミングと必ずしも一致しないということだ」と、CEOのミキ・ベラルデリ氏は以前にモダンリテール(Modern Retail)に語っている

キッドボックスは、また、2019年夏の新学期シーズンに「自分専用のボックスを作る」サービスを開始した。このサービスでは、顧客は自分のボックスに受け取りたい商品をあらかじめ選択できる。

旧来の方法にこだわる企業

サブスクリプション制を開始したペットカテゴリの会社のバークは、商品が毎月配送され、発送日は毎月15日に固定という、比較的古いモデルにこだわる決断をした。最高執行責任者であるマイク・ノボトニー氏は、同社が1カ月ペースにこだわる決断をした理由についてこう述べる。、「犬は、習慣の生き物であり」そうした方が、バークも顧客が好む商品の種類に関するデータをより多くより容易に集められるからだ。

2012年頃の創業以来、バークはサブスクリプションモデルの先を進んできた。現在は、顧客がバークボックス(Bark Box)のサブスクリプション・アラカルトで紹介されている玩具を購入できる、別のeコマースサイトも有している。しかし、サブスクリプションが依然としてバークの収益の80%以上を占めていると、ノボトニー氏は言う。同社のサブスクライバー数は65万人以上にのぼり、2019年初旬には、Amazonを介してボックスの販売を開始した。

ノボトニー氏によると、同社は既存顧客を定着させ、新たな顧客を惹きつけるうえでは、パーソナライゼーションがもっとも有効だと理解したという。バークにとって、これは顧客から得たフィードバックをもとに独自の製品を作れるようになることを意味する。ペットがバークボックスの玩具をあまりにもすぐに壊してしまうという顧客からのフィードバックを受けて、同社は2年前に独自の耐久性に優れた玩具製品群を発表した。また、新規顧客がサインインするときに、ペットが現在どのような種類の玩具で遊んでいるか、どういったテーマのものに興味を持っているかといった質問を増やしている。そのようして、最初のボックスが顧客の嗜好に可能な限りかなうものにしようとしている。

Amazonの動きにも注目

しかし、これらの企業が、顧客がより多くの商品を購入し、サブスクリプションの条件を変更できる権限を与えようと努力すれば、これが原因となって、選択肢が多くなりすぎ、サブスクリプションが複雑になることを見て取った顧客が離れていくというリスクを背負うことにもなる。Amazonが独自のサブスクリプションボックスプラットフォームを構築しようとしていることからも、この脅威は大きくなる一方だ。Amazonは、顧客はAmazonのプラットフォームをすでに定期的に利用しているという現実を利用し、顧客がAmazonのプラットフォームを通して複数のサブスクリプションを管理したいと考えるようになると良いと願っている。

「この市場においては、すべてのサブスクリプションを簡単に管理する方法はないという事実が、パズルの足りない1ピースのようだ」と、ギルデンバーグ氏は言う。「いずれは、Amazonのような企業がこの暗号を巧みに解読しはじめるだろう。それがリスクだ」。

Anna Hensel(原文/訳:Conyac