9月12日、ニュース記者たちはAppleについてツイートし、新しいiPhoneとApple Watchの詳細を共有するために何時間も費やした。しかし、こうしたコストのかからないプレスからの注目にもかかわらず、数名のマーケターにいわせると、テック大手の同社は、相当額をTwitterに費やしているそうだ。
9月12日、数十名の記者たちはAppleのスティーブ・ジョブズ・シアターのなかで、または自分たちのオフィスに戻ってからAppleについてツイートし、新しいiPhoneとApple Watchの詳細を共有するために何時間も費やした。
しかし、こうしたコストのかからないプレスからの注目にもかかわらず、数名のマーケターにいわせると、テック大手の同社は、相当額をTwitterに費やしているそうだ。9月12日、Appleはプロモトレンド(1日で20万ドル・約2239万円)、「ライク・フォー・リマインダー(リマインダー用いいね)」のカスタムビルド(数日間で25万ドル・約2798万円)、少なくとも12カ国語でのプロモツイート(50セントから8ドルまでの予算に応じたCPM)、そしてイベントのハッシュフラッグとライブストリーム配信を行った。情報筋によると、最後のふたつはおそらく無償で、そのほかの価格は標準的なものだという。価格は、6人のマーケターとのインタビューから得た、Twitterがそのプロダクトに対して個別に課金する料金に基づいて算出したものであり、Appleはそれらを抱き合わせで購入していたかもしれない。
FacebookやGoogleではないプラットフォームでそれだけの金額を費やすという決定は、1兆ドル企業にとってはさほど常軌を逸しているとはいえないだろう。Appleの支出は、新製品の発売時にTwitter上のやり取りを独占し、ファンたちやジャーナリストにアピールする試みの一例であり、Twitterはほかのソーシャルメディアよりもコミュニケーションをリードするプラットフォームとしてこれまでずっと自身を宣伝してきている。ジャーナリストを含めApple商品をすぐに購入する人たちは、おそらくは現在Appleが広告を一切掲載していないFacebook上よりも、Twitter上でより広く見つかるのだろう。
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「Appleはもっとも熱心なファンやApple嫌いの人たちとの関係を深め、発売をめぐるやり取りのデータすべてについての洞察を得ている。そのキャンペーン投資で得たものについての収穫を見てみたい」と、AARPでソーシャルマーケティングをけん引していたベリファイド・ストラテジー(Verified Strategy)のプレジデント、タミー・ゴードン氏は述べた。
Twitterは本記事へのコメントを拒否した。Appleからはコメント要請に対する回答は得られていない。
AppleのTwitter戦略
秘密主義のAppleは、これまではソーシャルネットワークをほとんど利用してこなかったが、それに変化が表われている。2016年3月にはAppleサポートアカウントが開設された。その年の9月、iPhone 7の発売に合わせて、同社のメインアカウントからツイートが始まった。1年後、インスタグラム(Instagram)に参加したが、それでも、Appleは組織的にツイートしたことは一度もなかった。Twitter上では広告購入に限られており、広告購入の一部であるため、それらすべてはダークポストとして表示される。
Only @apple can pull off having a twitter account since 2011, and not have a single tweet. Yet still run ads from the account. #AppleEvent pic.twitter.com/7as8jf7GBN
— Tyson Cremeens (@Tyr0n313) 2018年9月12日
@Appleさんはまだツイートしていません
ツイートがあるとここに表示されます。Tyson Cremeens
@Tyr0n313
2011年に開設されたTwitterアカウントを使えるのは@appleだけで、一度もツイートされたことがない。しかし、それでも広告がそのアカウントから流れている。#AppleEvent
今年の夏、Twitterの広告透明性センターの立ち上げに伴い、このようなツイートが知られるようになり、AppleのTwitter戦略を垣間見ることができるようになった。たとえば、Appleはプロモツイートを少なくとも12の異なる言語で作成している。Twitterはツイートを自動的にローカライズしないので、広告主が対象地域に応じて広告を作成し、ターゲットを設定する必要があると情報筋は述べている。
Appleは9月12日にTwitterを独占するため、ユーザーのタイムラインへのツイートを促し、その投稿に「いいね」するようリクエストする「ライク・フォー・リマインダー(リマインダー用いいね)」または「ハート・フォー・リマインダー(リマインダー用ハート)」と呼ばれるプロダクトを購入している。そのあとで、同アカウントは「いいね」を押したユーザーだけにリマインダーをツイートする。Appleの場合、リマインダーにはライブ配信へのリンクが付与され、発売イベント開始時に送信された。HBOは毎週の放送時に『ウエストワールド(Westworld)』を宣伝するため同じ機能を使っている。Amazonは今年のプライムデーにそのプロダクトを購入した。
ベータ版のTwitter新商品
情報筋によると、「ライク・フォー・リマインダー」広告は、カスタムメイドであり、また、ベータ版であるということだ。つまり、Twitterは同社のプラットフォームに相当額を支出するクライアントや、それにふさわしい企業にしか売り込まない模様だ。
Join us September 12 at 10 a.m. PDT to watch the #AppleEvent live on Twitter. Tap ❤️ below and we’ll send you updates on event day. pic.twitter.com/i9mGHTKhvu
— Apple (@Apple) 2018年9月10日
Apple ✔
@Apple
9月12日太平洋夏時間の午前10時、Twitterで#AppleEventをライブ配信。下の❤️をタップすると、当日にリマインダーが送信されます。
「Appleのライブ配信に関するアップデートの受け取りに、ハートマークを使った独自の告知ツイートを行う戦略は素晴らしい。この機能をブランドが具体的に利用しているのを目にするのはこれまで数回ほどだ。これはもっと詳しく確認すべき機能だ」とソーシャルメディアエージェンシー、ワラルー(Wallaroo)の創設者であるブランドン・ドイル氏は語っている。
この機能を売り込まれたマーケターの1人は、コストが高すぎてその当時のビジネスにはそぐわなかったと述べたが、航空会社のセールスやAppleのiPhone発売などのイベントではうまく機能していることを認めている。
@kerrymflynn The #AppleEvent is about to start. Tap below to watch live on Twitter. Reply #stop to opt out.https://t.co/oNC3CTeA2n
— Apple (@Apple) 2018年9月12日
Apple ✔
@Apple
#AppleEvent開始の時間です。下をタップしてTwitterでライブを見ましょう。#stopに返信すればオプトアウトできます。
気持ちをつかみ続けるため
Appleの投資収益率はいくらだったのかは明らかではない。ソーシャルアナリティクス企業のクリムゾン・ヘキサゴン(Crimson Hexagon)によると、9月12日にAppleのイベントと商品に関する約190万回のツイートがあった。それに対して、昨年のツイート回数は300万回、そのうちiPhone Xに関するツイートが150万回だった。近日発売予定の商品の販売数量データを得るのは時期尚早だ。
これから先の数週間で、記者たちがその新しいデバイスをレビューし、AppleはTwitterでさらに多くの無償プレス記事を得ることになるだろう。しかし、マーケターたちはこのAppleの広告が終わってしまうとは思っていない。
「Appleのようなブランドであっても、たくさんの無償プレスを獲得しており、オーディエンスの気持ちをつかみ続けるために戦わなければならない。Twitterの場合、注目される期間はもっと短い。それは単純にそのプラットフォームの性質だ。有償の拡散戦略を使用することで、メッセージが自分たちにとって重要な人々の目の前に届くようになる」と、インクハウス(InkHouse)のソーシャルメディアストラテジスト、ハンナ・マクゴールドリック氏は述べている。