アパレル小売各社は、1年でもっとも忙しいショッピングシーズンのひとつを、在庫を大幅に減らしたまま迎えようとしている。
アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、前年比で在庫量を約30%減らしたと、8月末に行われた直近の決算発表で述べた。DKNYやカールラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などのブランドを保有しているG-IIIアパレルグループ(G-III Apparel Group)は、前年比で在庫量を23%減らしたと語っている。一方でゲス(Guess)もまた、今年は在庫量を10%減らすことを計画していると語る。
パンデミックによるサプライチェーンの中断や原材料調達の問題などにより、小売業者は2020年および2021年のホリデーには、在庫切れによって売上を取り逃すことを避けるため、在庫供給を増やしていた。。しかしその後、昨年から今年にかけて、サプライチェーンの遅延と消費者需要の激減により、アパレル小売企業は商品を過剰に抱えることになった。それ以来、小売企業は在庫を減らそうとしてきた。アナリストは、アパレルカテゴリーが今年は割引を減らし、ホリデー商戦での売上が低迷すると予想している。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
アパレル小売各社は、1年でもっとも忙しいショッピングシーズンのひとつを、在庫を大幅に減らしたまま迎えようとしている。
アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、前年比で在庫量を約30%減らしたと、8月末に行われた直近の決算発表で述べた。DKNYやカールラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などのブランドを保有しているG-IIIアパレルグループ(G-III Apparel Group)は、前年比で在庫量を23%減らしたと語っている。一方でゲス(Guess)もまた、今年は在庫量を10%減らすことを計画していると語る。
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パンデミックによるサプライチェーンの中断や原材料調達の問題などにより、小売業者は2020年および2021年のホリデーには、在庫切れによって売上を取り逃すことを避けるため、在庫供給を増やしていた。。しかしその後、昨年から今年にかけて、サプライチェーンの遅延と消費者需要の激減により、アパレル小売企業は商品を過剰に抱えることになった。それ以来、小売企業は在庫を減らそうとしてきた。アナリストは、アパレルカテゴリーが今年は割引を減らし、ホリデー商戦での売上が低迷すると予想している。
在庫を減らすことのメリット
配送の遅れが改善されれば、在庫を絞り込んだ方が利点は多い。在庫を減らすことで、小売業者の利益率は上がり、大幅な値下げを行う必要性が減る。
「値下げを行っても売れるという保証はない」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。「ブランドが常にセールや値下げを行うことを消費者が知れば、フルプライスを支払わず、次にセールがあるまで待つように条件付けされてしまう」。小売業者は利益率を守るため、在庫切れになって売上を取り逃すリスクをあえて受け入れようとしていると、同氏は付け加える。
また、アバクロンビーやコールズ(Kohl’s)のようなアパレル小売業者にとっては、在庫を減らすことで新しいトレンドにすばやく対応し、需要のある商品を仕入れることもできる。コールズは直近の四半期に在庫を14%減らし、「顧客の関心を反映して、アパレルの品揃えを最適化した」と述べている。一方でアバクロンビーの経営幹部は、仕入れチームが需要の兆候を的確に把握できていることを、直近の決算発表で評価していた。
「当社には非常に強力な調達・供給チームがあり、極めて機敏だ。毎週ほかの各チームと協力してビジネスに対応し、何が売れるかを常に探求している」と、CEOを務めるフラン・ホロウィッツ氏は投資家やアナリスト向けの決算発表で語った。
サンタクララ大学レイビースクールオブビジネス(Leavey School of Business)のリテール・マネジメント・インスティテュートで教授兼エグゼクティブ・ディレクターを務めるキルティ・カリヤーナム氏は、「アパレルの売上は年間を通して比較的低調で、この傾向は小売業が1年で最も売上を伸ばす時期でも続く可能性がある」と語る。インサイダーインテリジェンスのデータによると、アパレルおよびアクセサリー部門の米国における小売売上高は、このホリデー商戦に前年比3.2%増となる見込みで、これは、この期間に予測される小売売上高全体の平均成長率4.5%を下回っている。
「第4四半期もアパレルの売上は軟調に推移するのではないかという懸念があった。その場合、在庫を減らして臨むのが賢明な戦略だ。消費者の状況は不明で、連邦準備制度理事会(FRB)さえも経済の先行きを読めない状況だ」とカリヤーナム氏は語る。
在庫管理に苦戦する小売企業
G-IIIアパレルグループもまた、今年は仕入れを「調整した」と語る。第3四半期および第4四半期の期末には、前年よりも在庫の水準を引き下げることを予定していると、同社は述べている。
G-IIIは昨年、在庫管理に非常に苦しんだ。前年の第3四半期末において在庫は9億100万ドル(約1340億円)と、2021年の4億4900万ドル(約669億円)に対して大幅に膨れ上がっていた。純利益はその四半期の1億600万ドル(約158億円)から、6100万ドル(約90億9000万円)に減少した。
「在庫は積極的に保有しようとしてはいない。失敗から学んだのだ。実際に起こった物流の危機を、望むほど上手に管理できなかったし、資金はますます貴重になってきている」と、G-IIIアパレルグループのCEOモーリス・ゴールドファーブ氏は、9月初めの決算発表で語った。
過剰在庫と消費者需要の減少に押しつぶされ、前回のホリデー商戦でいくつかの商品を大幅割引することを余儀なくされたアパレル小売企業もいる。リーバイス(Levi’s)は、さまざまなカテゴリーにわたって800点以上の商品をセール対象とし、ナイキ(Nike)は約1万1000点の商品を40%割引した。
潜在顧客を失う可能性も
小売各社は強気を維持しているものの、サプライチェーンのシステムは依然として予測不能だと、調査企業ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は語る。発送遅延により、小売企業は商品が在庫切れとなり、潜在顧客を失う可能性もある。また、小売企業は思ったほど早くトレンドに機敏に対応できない可能性もある。
「サプライチェーンには常に、輸送船が運河で立ち往生したり、空港がロックダウンされたり、天候などの問題によって、在庫をある場所から別の場所に移動させる能力が損なわれるリスクがある。しかし、この数年間にわたってあまりにも多くの障害を経験したため、小売企業は少なくともそのような障害に対応する方法を学んだという自信を感じているだろう」と、ソチャ氏は述べている。
[原文:Apparel retailers are entering the holiday shopping season with leaner inventory]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)