米国で大ヒットしたフルーツフレーバー低アルコール飲料「ハードセルツァー」への関心を維持する新たな方法を、アンハイザー・ブッシュは探し続けている。同社のビヨンド・ビア担当バイスプレジデントを務めるラナ・ブキャナン氏に成長に関する考えやメディア支出がほぼすべてデジタルに充てられている理由を聞いた。
フルーツフレーバーの炭酸入り低アルコール飲料「ハードセルツァー」は、2019年夏に米国で大ヒットしたが、アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)はそのハードセルツァーへの関心を維持する新たな方法を探し続けている。新しいブランドやフレーバーを発売するのもひとつの戦略で、ラッパーのトラビス・スコットと提携して、新しいアガベ(リュウゼツラン。テキーラなどの蒸留酒の原料)由来のハードセルツァー「カクティ(Cacti)」を2021年初頭に発売する予定だ。
ハードセルツァーの成長を維持する新たな方法の模索は、アンハイザー・ブッシュでビヨンド・ビア担当バイスプレジデントを務めるラナ・ブキャナン氏の「重要検討事項」のひとつだ。ブキャナン氏は2019年11月に、カンパリ(Campari)からアンハイザー・ブッシュに移籍し、ビヨンド・ビア部門の拡大支援に参画した。
ビヨンド・ビア部門は2018年に設けられ、ハードセルツァーやワイン、蒸留酒、従来型の麦芽由来の飲料、低アルコール飲料やノンアルコール飲料を取り扱う部門となっている。アンハイザー・ブッシュの担当者から記事執筆時までに回答がなかったため、部門の規模は不明だ。とはいえ、新たな飲料やトレンドを見つけて活用することは同社の全体的な成長戦略の一部となっている。そこで、ブキャナン氏と連絡を取り、ビール以外の部門の成長に関する考えや、新ブランドへのメディア支出がほぼすべてデジタルに充てられている理由、スーパーボウルについての意見を聞いた。
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なお、以下のインタビューには、読みやすさを考慮して編集が加えられている。
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──異なるカテゴリーでいくつかの新ブランドの成長を模索中だが、メディアプランニング及び購入への影響は?
ブランドの成長段階の理解に尽きる。規模が小さめのブランドの場合は、ターゲットとなる消費者と進出したい市場の特定に重点を置く。市場を特定したら、今ある資金で消費者にリーチする最良の手段を検討する。多くの場合はデジタルだ。デジタル最優先のプランを用意するようチームに伝えている。TVのような従来型メディアで大ヒットさせる機会が一度あれば、すばらしいことだ。だが、基本はデジタルやソーシャルであるべきだ。
──その理由は?
今日のソーシャルの世界では、有料メディアでキャンペーンのテコ入れをしなければ、誰にも見られないことは皆が知っている。メディアチャネルについて検討する際には、消費者に取ってほしい行動について考える。特に今年は、そうした行動がeコマースにより集中していた。我々の目標は常に適切なタイミングで消費者にリーチし、ブランドや提案にオープンになっているときにエンゲージして、そこから常にシームレスな購入に繋げるようにすることだ。多くの場合、(オンラインアルコール配達サービスの)リザーブ・バー(Reserve Bar)やドリズリー(Drizly)を通じてそうしている。ワインの場合、州ごとに規制が異なるので少し状況が変わる。ノンアルコール飲料ブランドについては、D2C分野でもっと活動できるだろう。
──通常であれば、バーに行ったり、レストランで飲酒したりするのに、今はそれができない。そうしたブランド拡大への取り組みは、パンデミックによってどう変わったか?
一般に、製品の提供方法だけでなく、体験づくりへの貢献方法にも注力してきた。たとえば、当社のハードセルツァーのひとつである「ボン・ヴィヴ(Bon Viv)」がもっとも飲まれる瞬間はブランチだ。そこでブランドのクリエイティブディレクターであるプリヤンカ・チョプラ・ジョナス氏と協力して、各市場の現地企業を支援するキットを作成したり、Zoom版ブランチを推進した。そこで我々は、消費者の機会作りに役立つパッケージをつくることを検討している。もちろん、店で飲むことの代わりにはならないだろう。誰もがバーでカクテルを飲める生活に戻れるのを心待ちにしている。ただ、こうした状況下で、可能な限りポジティブなものをある程度生み出したいと願っているだけだ。
──2021年により重点を置く予定の新たなプラットフォームや新しい宣伝方法はあるのか?
eコマースに対して引き続き重点を置く以外は、特に目新しいものは何もない。一般に、自社にとってどこが適切なメディアパートナー(またはインフルエンサー)かのほうが大事だ。メディアパートナーやインフルエンサーは、消費者に直接話しかける。彼らと提携することで、標準的な広告をただ作るのではなく、素材を共同作成することによって認知度を高めてより適切なものにできる。それが、究極の目標だ。誰かがろくに見ずにスクロールするコンテンツを提供するだけにならないようにしたい。手を止めてエンゲージさせる何かを作りたい。それが、ますます必要なことだと確信している。メッセージをどうカスタマイズし、どんな形でメディアパートナーを活用し伝えていくのか、が重要になるということだ。
──マーケターのほうが、より成長に対して大きな責任を負うことが多い。マーケティングと成長を結びつけることについてどう思っている?
我々はある程度の規模を持った企業であると同時に、比較的小規模なブランドを所有しているが、どのブランドにも世界で最大の予算があるというわけではない。したがって、何をするにしても成長への影響について考えなければならない。どのようにしてすべての機会を最大化しているのかを明確にする必要がある。(ブランドの成長につながる)原動力に目を向け、どれがコンバージョンの増加につながっているかを確認する必要もある。そうすれば、追加のメディア予算を得たときに、どこへ予算を投入するかが明白になる。
──メディア予算についていえば、ほとんどがデジタルに回されるのか?
ソーシャルがデジタルを後押しすることを考慮し、ソーシャルとデジタルの両輪がひとつの大きな「デジタル」として見なされるならば、我々のブランドの大部分では、恐らく予算の95~100%がデジタルに充てられる。重要なマイルストーンを達成しようとしている規模が大きい特定のブランドでは、75%がデジタル、25%が従来型メディアだ。通常はかなりデジタルを重視している。「TVを見せないでほしい」とチームに言ったことがあるほどだ。
──でも、ブランドのひとつではスーパーボウルで広告する?
そのうちわかる、としか言えない。何かを達成するためにあと何日残っているか、という計算が必要なるということだ。
[原文:‘Help create experiences’: Anheuser-Busch vp of beyond beer on finding new ways to grow brands]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島 翔平)