「フルフィルメントは軍拡競争」:店舗改装か専用設備か? リテーラーたちの悩ましい配送戦略

ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)といった大手リテーラーたちは続々と実店舗を配送のためのフルフィルメントセンターとしても機能することを狙っており、店舗のリモデル自宅配送サービスとのパートナーシップに取り組んでいる。彼らにとって実店舗は、Amazonに対して彼らが持っている最大の競争優位である。Amazonはプライム会員向けに数百万ものプロダクトを対象に翌日配送を行っており、そのため100以上のフルフィルメントセンターを全国に構築してきた。

ターゲットは5月の第1四半期の収支報告において、この四半期のデジタル注文のうち80%が店舗で処理されたと述べた。これによって配送スピードの改善とコスト削減につながったと、CEOのブライアン・コーネル氏は言う。

先日、ウォルマートのCEOであるダグ・マクミラン氏は実店舗を活用して、オンラインにおける競争優位につなげることに対する興味を示した。フォーチュン(Fortune)によるブレインストーム・テック会議で「店舗にはアドバンテージが存在しており、それを最大限活用しようとしている」と彼は語った。

フルフィルメントに伴う制限

しかし店舗がオンライン注文のフルフィルメントを行うにも、制限が伴う。

ひとつの問題は量だ。eコマースのフルフィルメントセンターは大手店舗のなかでも最大規模の店舗と比べても、数千以上多いプロダクトを処理することができる。そして店舗をフルフィルメントセンターとして使うことはコストを追加する。店舗内で顧客の対応をすると同時にオンラインの注文を処理するため、追加でスタッフが必要になる。また注文を梱包して処理するためのスペースも必要となる。本来なら店舗でプロダクト展示に使えていたスペースを使うことになる。

「指をパチンと鳴らして達成できるようなことではない」と、eマーケター(eMarketer)のeコマース・アナリストであるアンドリュー・リプスマン氏は言う。

店舗がフルフィルメント・センターとして機能するためには、顧客にも、フルフィルメントがもっとも容易で、コスト効率がもっとも良い方法で購入してもらえるように誘導する必要がある。ウォルマート、ターゲットともに、それは店舗ピックアップだ。ターゲットはまた、同日配送を処理するために2017年に配送プラットフォームであるシップト(Shipt)を買収した。ウォルマートは食料品の自宅配送の代わりに、まず店舗でのピックアップができる店舗を増やしている。年末までに食料品ピックアップに対応している店舗数は3100店舗となる予定だ。その一方で食料の自宅配送に対応する店舗は1600となっている。より多くの顧客が自宅配送ではなく店舗ピックアップを習慣づけることを狙っている。

機能確立には時間も必要

忍耐強さも必要だ。効率的な実店舗フルフィルメント機能を確立するには、数年は必要となるからだ。

「我々が最初に注文ピックアップを2013年にローンチしたとき、バックルームにおいて折り畳み式のテーブルを使っていた。何年もかけ、たくさんのテクノロジーとプロセスの改善のおかげでそんな状態からスムーズな運営へとたどり着いた」と、ターゲットの最高オペレーティング責任者であるジョン・ムリガン氏は、3月に開催された投資家向けプレゼンテーションで語っている。

ウォルマートに関しては、以前と比べると新鮮な食料が痛む前にピックアップしてもらう、もしくは注文を処理することに関して店舗の効率性が上がっていると、マクミラン氏は述べる。フォーチュン・ブレインストーム・テックで、ウォルマート店舗のうち60%が食料雑貨のオンライン注文を配送処理する能力を持っていると語った。

店舗改装と専用施設の天秤

しかし社内では、店舗を配送のために改装することと、eコマースのフルフィルメント専用のセンターを構築すること、どちらに資金を投入すべきか緊張が高まっているようだ。リコード(Recode)は今月頭、ウォルマートのアメリカeコマース部門の責任者であるマーク・ロア氏が数十億ドルを専用センターに投資するべきだと考えている、と報じた。これはAmazonのプロダクト・セレクションに対抗するためだ。現在、ウォルマートは約20の専門eコマースフルフィルメントセンターを持っており、店舗数はアメリカで4700店舗以上になる。

しかし実行が不可能であろう、Amazonのプロダクト・セレクションと同じレベルの達成、を目指すのではなく、オンライン食料雑貨ピックアップと配送により投資を行うべきだと考えるウォルマートのリーダーシップもいる。この方向であれば、すでに存在する店舗ネットワークを活用して注文の処理ができるからだ。

店舗を使ってオンライン注文のフルフィルメントを行うことで、ターゲットはプロダクトがより早く顧客に届くようになったという。これは多くの店舗が郊外もしくは都市圏に存在しているからだ。これはターゲットが腰を据えて取り組んでいる戦略のひとつだ。

「フルフィルメント機能の中心に実店舗を据えることが長期的に有効なのかどうか、多くの質問を耳にする。我々の回答は力強いものだ。これがターゲットにとってもベストな長期的なソリューションだと自信を持っている」と、コーネル氏は言う。

Amazonだけが仮想敵ではない

しかし、競争はAmazonだけではない。ほかのプラットフォームもコストがかかるフルフィルメントセンターに投資を行っているなかで、この2社の判断はビジネス損失につながる可能性がある。

6月に行われたショッピファイ(Shopify)のユナイト・カンファレンスにおいて、ショッピファイは10億ドル(約1150億円)以上を投資してフルフィルメントセンターのネットワークを構築していると発表した。これが完成すれば販売者の在庫を保管し、顧客への配送を2日以内に行うことができるようになるだろう、とのことだ。ターゲットもウォルマートも、両方とも現在、自らのマーケットプレイスを構築しようとしているところだ。オンライン注文に対応するプロダクトの数を増やしてくれるマーケットプレイスを実現するためにも特に、実店舗フルフィルメントのオペレーションと新しいフルフィルメントセンターを構築することの間のバランスを見極めなくてはいけない。

「Amazonとウォルマートの両方を使って販売を行う独立系のセラーの多くが、ショッピファイのフルフィルメント・ネットワークを使えば、ウェブサイトを通じてフルフィルメントの一部を行うことができるようになるだろう」と、ガートナーL2(Gartner L2)のリサーチ部門アソシエイト・ディレクターであるビル・ダフィー氏は言う。

「軍拡競争の様相を呈している」

顧客がオンラインで注文できるプロダクトの種類に関しては、リテーラーたちは自分たちの野心を抑制する必要が出てくるかもしれない。たとえば、11月にターゲットはサードパーティ・マーケットプレイスを構築していると発表した。名前はターゲット+だ。プレスリリースでは、「キュレーションされた」プロダクト群を作りたい、と述べた。その理由は「ターゲットでは、ただ無数のオプションを閲覧することなしに自分が気に入ったプロダクトを見つけることができる。それを顧客が期待していることを理解している」からだという。

「フルフィルメントに関しては軍拡競争の様相を呈している。そしてそれはどんどんと高価になっている」と、ダフィー氏は言う。

Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)