熾烈な「配送サービス」合戦、米・リテーラーたちの思惑:ホリデーシーズンを前に

Amazonが君臨する現在、迅速かつ確実な配送オプションは従来型リテーラー勢に欠かせない。ブラックフライデーやクリスマスといった一大ホリデーセール期を目の前に控えるいま、マーケティング戦略におけるその重要度はさらなる高まりを見せている。

ブラックフライデーを前にして、多くのリテーラーは無料配送の条件である最低購入価格の制限を取り払い、とりわけ忠実な顧客に最速での配送を含むフルフィルメントオプションを提供するなど、さまざまなサービスを積極的に提供している。しかも、今年の競争は例年にもまして熾烈だ。感謝祭(米国では11月の第4木曜日)とクリスマスのあいだが昨年の32日に対し、今年は26日しかないためであり、これはつまり、顧客にとってはショッピングに費やせる日数が、リテーラーにとっては商品を予定どおり届けるための日数がそれぞれ例年よりも限られていることを意味する。

大々的なアピールが必要

11月第3週、米大手小売チェーン、ターゲット(Target)は新規顧客を取り込むべく、当日配送サービス会社シップト(Shipt)を自社のモバイルアプリに組み入れた。顧客はこれまで、ターゲットのウェブサイトで注文するか、別個にシップトのアプリを利用するしかなかった。さらに、11月26日一杯までに総額75ドル(約8200円)以上の買物をした顧客には、当日配送も約束している。米大手百貨店チェーン、メイシーズ(Macy’s)も30の地域で当日無料配送を提供すると、すでに発表している

目的はひとえに、できるだけ早期に顧客を取り込み、ホリデーショッピングをすべて、あるいはそのほとんどを自社店舗/ウェブサイトで行なわせることにある。そのためには、欲しい物がすべて揃っており、購入した商品を遅延なく配達できると消費者に確信させることが不可欠となる。米大手家電量販チェーン、ベスト・バイ(Best Buy)は12月25日一杯まで顧客全員に無料配送サービスを、総額35ドル(約3800円)以上の購入者には翌日無料配送サービスを提供するとともに、ハヌカーやクリスマス、クワンザといった米市民の祝日/行事日までに商品を手にするための注文期日が配送先ごとにわかるページをウェブサイトに設けている。

「こうしたサービスはその存在を大々的にアピールする必要がある。消費者に周知できなければ、当然、高コンバージョン率は期待できない」と、米デジタルマーケティング調査会社eマーケター(eMarketer)のeコマースアナリスト、アンドルー・リップスマン氏は指摘する。
ホリデーシーズン中、リテーラーが無料配送オプションを餌にして顧客の取り込みを狙うこと自体は、決して目新しいことではない。ただし、今年は例年にもまして、配送の迅速性を売りにできるところが増えており、多くが当日または翌日配送や「オンラインで購入/実店舗でピックアップ」サービスを導入している。

配送遅延を顧客は不安視

大手リテーラーであるウォルマート(Walmart)は、2019年前半にいくつかの地域に無料翌日配送を導入したばかりであり、同じく大手のターゲットは2017年のシップト買収後にはじめて当日配送を導入した。

「昨年はとくに、新たなフルフィルメントオプションの提供合戦と、それをさまざまなプラットフォームで激しくプロモーションをかける様子が多々見られた」と、リサーチ会社ガートナー(Gartner)のアソシエートディレクター、ビル・ダフィ氏は語る。同社がリテーラー100社弱を対象に毎年実施している調査によれば、2018年のホリデープロモーションでは、約2割のリテーラーが無料配送に必要な最低購入金額の縛りを一時的に外した。

オンラインでのホリデーショッピングを好む人数が増加の一途を辿る一方、多くの顧客はオンライン購入した商品の配送遅延を不安視しており、そのため、その点に関して安心度の高いリテーラーを選ぶ傾向が高いと、リップスマン氏は指摘する。2017年のホリデーシーズンでは、米運送会社UPSが記録的な数に上った小荷物を捌き切れず、12月前半、配送予定日よりも1日ないし2日遅れる旨の発表を余儀なくされるという事態が生じた。

オプション対応でカバー

だからこそ、2018年はより多くのリテーラーがクリック&コレクトや「ドライブ・アップ・アンド・ゲット・イット・トゥデイ(drive up and get it today:指定されたターゲットの商品引き渡し地点まで、顧客がクルマで行くオプション)」を推奨するキャンペーンを張ったのであり、ホリデーシーズンが例年より短い今年もその傾向が持続するのは間違いないと、リップスマン氏とダフィ氏はともに指摘する。ガートナーの調査結果では、2018年11月から12月にかけてリテーラーが送信したeメールのうち、インストアフルフィルメントオプションの宣伝が2017年の22%から44%に倍増した。たとえば、米スポーツ用品小売チェーン、ディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)は2018年、12月21日にオンライン購入し、店舗ピックアップを選んだ顧客に10ドルのディスカウントサービスを提供した。

「直前にプレゼントを購入する消費者は、商品を何としてもホリデーまでに手に入れたい、ならば配達予定日まで律儀に待つ必要はない、と考える。したがって、実店舗に足を運ぶ人数はさらに増えることになるだろう」と、ダフィ氏は語る。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)