8月某日、都内でAmazon広告の販売と運用代行を行うあるエージェンシーに、Amazonから一通のメールが届いた。内容は、プログラマティック広告サービス、Amazon DSPにおいて、はじめてアドフラウドが発見されたこと、そして、過去の事例も含めた不正に対して、同社がその全額を補償するというものだった。
Amazonも、広告不正問題の対応に動き出した。
8月某日、東京都内でAmazon広告の販売と運用代行を行うあるエージェンシーのもとに、Amazonから一通のメールが届いた。その内容は、同社が提供するプログラマティック広告サービス、Amazon DSPにおいて、はじめてアドフラウドが発見されたこと、そして、過去の事例も含めた不正に対して、同社がその全額を補償するというものだった。
同メールによるとアドフラウドが発見されたのは、モバイルアプリの一部のキャンペーン。Amazonはアドフラウド防止のため、定期的にインプレッションの品質測定システムの見直しと、改善を行なっている。今回のアドフラウドはその過程で発見された。
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同社から提示された補償方法は「ボーナスimpの付与」もしくは「キャッシュバック」の2パターン。国内のエージェンシー各社に、8月中に広告主と協議し、補償方法に関してフィードバックを求めていた。
広告主の反応
メールを受け取ったエージェンシーのCEOが、匿名で語ったところによると、同社のクライアントが受けた被害額は、1社あたり最大で数百万円。これまでの累計出稿費の1%ほどだったという。
同エージェンシーでは事態を受けて、事実と補償フローを広告主に説明。多くの広告主は、あまり気に留めず、むしろ「『正直に話してくれて、ありがとう』という声もあった」という。だが、そもそもほかのプラットフォーム含め、ディスプレイ広告市場には平時からアドフラウドが横行しているという認識がない広告主からは、「恐ろしい剣幕で、詳細を問い詰められた」ケースもあったようだ。
なお、今回発覚したアドフラウドへの改善対応はすでに完了したと、Amazonはメールで伝えているが、具体的な対応の仕方や、原因の詳細な説明はなかった。今後もし、アドフラウドが再発した場合は、説明責任を問われる可能性も考えられる。
「ほかよりは好印象」
一方、このエージェンシーのCEOは、Amazonに対し、「もちろん、アドフラウド自体はあってはならないことだが、過去の損害をすべて補償するというやり方は評価したい。少なくとも、だんまりを決め込むほかのプラットフォームよりは好印象だ」と語る。「ほかの大手広告プラットフォーマーが、広告主に対して過去のアドフラウドによる不正分をすべて補償したケースは、前例が見られない」。
そんななか、なぜAmazonは全額補償に踏み切れたのか。その理由についてこのCEOは「Amazon DSPの歴史がまだ浅いから」だと推察する。同サービスがスタートしたのは、グローバルでは2012年、国内では2015年。過去に遡っても、不正分の金額は、ほかのプラットフォームに比べると大きくはならないというわけだ。
ほかのプラットフォーム勢も、アドフラウドの発生を「未然に防止」するため、ここ数年さまざまな取り組みを行なっている。たとえばGoogleは、2017年、同社が取り組む不正トラフィックなどのアドフラウド対策の方針を発表し、無効なトラフィック検出精度や払い戻しの自動化を実施。しかしこうした動きは、過去の損害を補償するためのものではない。
「彼らがなぜ過去の補償に踏み切れないか」と、そのエージェンシーCEOは語る。「それはおそらく、経営状況に関わるほどの金額を支払うことになるからだろう」。
※記事公開後、一部表現を修正しています
Written by Kan Murakami