2019年、 Amazon がターゲットを買収すべきではない理由

もしeコマース最大手のAmazonがターゲット(Target)を買収すれば、同社は巨大な実店舗小売事業を獲得することになる。だが、時機を逃したのではないだろうか。

ミネアポリスを拠点とするベンチャーキャピタルのループ・ベンチャーズ(Loup Ventures)の創設者、ジーン・ミュンスター氏は先週、Amazonがもしターゲットを買収すれば、ウォルマート(Walmart)に対する攻勢を強めることができるとの見解を示しているAmazonによるターゲット買収の噂は2018年をにぎわせたが、現時点でいまだ憶測の域を出ない。Amazonからのコメントはなく、ターゲットは年間収益が720億ドル(約79億円)とされており、売りに出されるとも限らない。だが、次にAmazonがどの企業を買収するかを考えたとき、もしターゲットを買収すればAmazonは、1800の実店舗を獲得することになり、同社のもっとも弱い分野であるマーチャンダイジング、そして最適な商品を提示するキュレーション、買い物における体験といった分野を強化できる。ターゲットからしても、Amazonの物流や技術、サプライチェーンを活用して、実店舗ネットワークを強めることができる。

ターゲット買収の難点

これは買収の理由付けとしては大きい。一方、ターゲットの実店舗ネットワークは巨大すぎて、現時点のAmazonでは手に余るとの見解を示すアナリストもいる。Amazonはホールフーズ(Whole Foods)を買収したことで、双方のサービスと物流、ワンクリックでの支払い機能の統合を迫られている。そこに加えて、ターゲットを買収すればオンラインとオフラインを組み合わせた最適な小売モデルを決める必要がでてくるだろう。いまのAmazonにとって大きな負担だ。

フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、サチャリタ・コダリ氏は「Amazonのこれまでの買収を見ても、かならずしも同社は買収によって大きく収益を増やすことに長けているわけではない。ターゲットの買収でうまくいくという確証はない」と指摘し、「買収が2年前であれば2017年のホールフーズ買収とおなじく驚きをもって迎えられただろう。だがいま、Amazon Primeのロゴがついた店舗やロッカーができたところでさほど驚きはない」と語った。

コダリ氏はAmazonはホールフーズをまだまだ完全に統合できておらず、ターゲットについても買収後のしっかりとした計画がなければ逆に足枷になるだろうと分析している。Amazonのターゲット買収における課題は、実店舗ネットワークの最適な活用方法にある。ターゲットを買収すればさまざまなことが可能になる。eコマースで購入したあと商品を実店舗で受け取ったり、配送センターとして活用したり、返品を受付けたりといったことも可能だ。ホールフーズ買収の動きをみるに、Amazonはさらなる拡大を狙っているのは間違いないだろう。ホールフーズとターゲットでは同じ小売でも分野が異なる。ホールフーズが行っているのはAmazonがまだ発展途上である食料品の小売だが、ターゲットはAmazonの中核である総合小売業だ。このような違いがあるにしても、ターゲットの買収によって上記のようなサービスが簡単に実現するわけではないと、コダリ氏は指摘する。

ホールフーズとの違い

既存の実店舗による小売モデルと、デジタルファーストのeコマースを組み合わせるには困難が伴う。大きくかけ離れた企業文化の統合も高いハードルだ。

フルーエント・コマース(Fluent Commerce)のマネージングディレクターを務めるビル・フレンド氏は次のように語る。「実店舗の小売は難しい。ターゲットがすでに手をつけていないやり方を実現するのは容易ではない。Amazonのサプライチェーンを活用すれば、価格を下げられる可能性はある。だが同時に、両社の事業で重複する部分を明確な形で合理化する必要があるだろう」。

また、Amazonはこれ以上ほかの小売企業を買収することなく、実店舗の分野に進出しようと試みる動きもみせている。同社の物流網に加えて、他社と提携する形で店舗ネットワークを拡大させ、商品のマーケティングや新機能の実験を行う試みだ。Amazonには、空港やオフィスビルなどにレジを置かない小売店のAmazon Goを2021年までに3000店舗展開する計画がある。Amazonが研究している、こうした「外に出るだけで会計が済む」技術をホールフーズの店舗にも試験的に導入し、実店舗展開の足がかりにするのではないかという考えは根強い。ホールフーズの店舗数は500以下で、ターゲットよりも実験しやすい規模なのは間違いない。

業務提携という道もある

調査会社のマーケター(eMarketer)でeコマースおよび小売分野のアナリストを務めるアンドリュー・リップスマン氏は、Amazonの他社との提携について次のように語っている。「解決すべき大きな課題は残されているものの、返品サービスでコールズ(Kohl’s)と提携したのと同様に、ほかの小売企業と提携する可能性はあるだろう。提携であれば、買収のようにさまざまな業務が付随することもない。Amazonはこれまでも自社の強みをしっかりと見定め、長期的な視野からその強みだけを活かすことを非常に得意としてきた。そうして一歩ずつ成長してきたのがAmazonという企業なのだ」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)