Amazonに出店する小売企業にとって、クリスマスはすでに始まっているようだ。例年より遅いプライムデーもすでに終わり、この巨大プラットフォームで出店・販売する外部事業者たちは、この勢いを11月の感謝祭とその先の商戦につなげようとしている。
Amazonに出店する小売企業にとって、クリスマスはすでに始まっているようだ。
例年より遅いプライムデーもすでに終わり、この巨大プラットフォームで出店・販売する外部事業者たちは、この勢いを11月の感謝祭とその先の商戦につなげようとしている。
プライムデーはAmazonが有料会員向けに開催する毎年恒例のビッグセールだが、グローバルデータ(GlobalData)の調べによると、今年はパーソナルケア部門と美容部門の健闘により過去最高益を記録し、結果的に2020年を「eコマースの年」として決定づけた。Amazonの発表によると、中小の販売業者による売上高は前年より60%増加して、35億ドル(約3665億円)に達したという。年末商戦に向けて、出だしは好調だ。
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eコマースが大躍進するなか、プライムデーの後ろ倒しによって、今年は大きなショッピングイベントが年末に集中することとなり、Amazonに出店する小売企業は、目下その準備に追われている。パンデミックの初期に敷かれた都市封鎖中、配送業務の遅延で大きな影響を受けた非生活必需品の販売業者はことさら準備に余念がない。
具体的な対策としては、例年より長く忙しいシーズンに向けて慎重に計画を練りながら、人手の確保に動いている。さらに、十分な在庫量を維持し、Amazonのエコシステムで最大限効率よく事業を回すために、生産量も増やしている。
失われた時間の埋め合わせ
オンライン注文の需要増に伴い、配送の遅れが見込まれる今年、上手な買い物の秘訣は早めにショッピングを済ませることだ。小売企業各社は、地域限定の即日配送サービスを自前で用意するなど、注文の殺到に備えている。
カスタマーエクスペリエンスプラットフォームのブルームリーチ(Bloomreach)が出した最新データを見る限り、年末商戦は何週間も前からすでにはじまっているようだ。「クリスマス」という言葉が検索キーワードの上位20位以内に登場しはじめたのは、2019年よりひと月早い9月のことだ。同じく同社の予測によると、年末の買い物を11月初旬にはじめる消費者も、昨年より11%多く、68%に達するという。
Amazonに出店するあるブランドは、この傾向に乗じて、コロナ禍で逃した売上を取り戻したいと期待を寄せる。ナチュラルスキンケアブランドのリブバイビーイング(Live by Being)は、手作りの雑貨やコスメを専門に扱うAmazon Handmadeに出店するブランドだが、パンデミックの勃発に伴い、Amazonが生活必需品の配送を優先するという方針を出したため、出荷の中断を余儀なくされた。設立者のケネディ・ローリー氏は、米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(MODERN RETAIL)による取材のなかで、「プライムデーの開催が第4四半期になったことは、不意の営業中断を経て、再開の準備に追われはしたが、売上回復への足がかりとなった」と語っている。
ローリー氏は夏の終わりの大半を秋冬に予想される販売増への戦略策定に費やし、プライムデーの開催に備えて、プロモーションの適用商品を手配した。また、この先数カ月におよぶ年末商戦で在庫切れが起きないように、Amazonの倉庫に入荷する製品の増産と、追加的な人手の確保にも投資した。
「私のストアは7月まで休業を余儀なくされた。売上を取り戻すには、プライムデーの延期は好都合だった」とローリー氏は明かす。今年は、材料の調達に例年より時間がかかるなど、サプライチェーンの問題に直面したが、プライムデーに向けた再始動は十分な利益を生んだ。
「さきほど確認したところ、1日当たりの売上が倍増しているようだ」。プライムデーの実績について、ローリー氏はそう報告する。2日にわたるこのイベントで、同氏のブランドは前年同期比30%増の売上高を達成したという。
現在、ローリー氏はプライムデーの売上を原資として、このさき数週間にわたる年末商戦のプロモーションを計画している。Amazonのハンドメイド部門はニュースレターを通じて入庫の期限を告知しており、同氏はこのような仕組みを「計画を立てるうえでとても助かる」と評価している。11月3日の期限に合わせて、ブラックフライデーとサイバーマンデー向けの商品を補充する予定という。
長期戦に備えて初期の需要を抑制
ロレンゼンキャンドルカンパニー(Lorenzen Candle Co.)のプレジデントを務めるボビー・ケイ氏が、モダンリテールの取材で語ったところによると、コロナ禍初期に生じた物流の遅延が今も尾を引いているという。ホリデーシーズン向けに販売するアロマキャンドルのガラス容器がそろわず、商品数を縮小することになった。少数の人気商品を展開しつつ、在庫量を通常の10倍に増やして、ホリデーシーズンの需要増を乗りきる構えだ。さらに、この夏、ケイ氏は追加的な人員を雇用し、新たに2棟の物流倉庫を手配した。
ケイ氏によると、年末のホリデーシーズンはキャンドルの需要が伸びる重要な時期で、「年間の売上高の80%を年末商戦で稼ぎ出す」という。当然のことながら、十分な在庫を確実に確保しなければならない。ここ数カ月、プライムデーと年末商戦をにらんで生産量を増やす一方、受注量には歯止めをかけてきた。ケイ氏の話では、「需要を抑制するためだけに」、一時的に30%の値上げをおこない、アマゾン広告の出稿も削減したという。
新事業の立ち上げもホリデーシーズンに照準
ホリデーシーズンに合わせて新ブランドを立ち上げる向きもある。たとえば、サプリメント販売のスポア(Spore)は、先月店を開き、プライムデーの開催中に25%の値引き販売を展開した。共同設立者のマイケル・ザベット氏は「9月に創業したばかりだが、プライムデーに合わせて5つの商品を準備した」と打ち明ける。
同氏によると、スポアは創業まもないブランドであるため、Amazonが販促活動をおこなう「通常のプライムデープロモーション」は適用されない(一般的に、値引きやお買い得品をフィーチャーしてもらうには、プライムデー当日までに、ストア評価の数や売上高などで一定の条件を満たしている必要がある)。これを補うために、同社はプライムデー向けの自前のプロモーションを準備して、新規顧客の獲得を図ることにした。
プライムデーが終了すると、スポアのマーケティングチームとコンサルタントはただちに次の需要期と在庫確保の計画に乗りだした。「年末商戦はもとより、新年の抱負に連なる需要増を見込んで、十分な在庫を確保する必要があるため」と、ザベット氏は説明している。
先行きは確かに不透明だが、少なくともAmazonに出店するブランドの一部は、プライムデーを通じた大幅な売上増によって、堅実な四半期を確保した。「年間の収益総額に占める比率は大きくない」としながらも、「事業運営に重要な役割を果たす時期ではある」とザベット氏は語った。
[原文:Amazon sellers prepare for a long holiday season]
Gabriela Barkho(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)