毎年人気のAmazonプライムデーだが、今年は少し様子が異なるようだ。毎年恒例の同イベントも、今年はパンデミックの影響を受けて、開催時期は例年の夏よりもだいぶ遅くずれ込むことになる。
毎年人気のAmazonプライムデーだが、今年は少し様子が異なるようだ。毎年恒例の同イベントも、今年はパンデミックの影響を受けて、開催時期は例年の夏よりもだいぶ遅くずれ込むことになる。今年のプライムデーは、パンデミックにより生活必需品のフルフィルメントを重視する販売ポリシーのなかで何度も延期されてきたが、ついに開催されることになる。
時期についてAmazonからの公式発表はないものの、10月またはクリスマスシーズンの数週間前に行われるとも報じられている。繰り返し延期されたことに加えて、ブラックフライデー同様、人目を引くプロモーションを控えている企業が多いなか、Amazonの販売業者にとっても今年はどうなるのか見通しが立たない状況だ。例年以上の売上を期待する声もあがるなか、需要増に備えてサプライチェーンの確保に向けて動いている業者も少なくない。いずれにせよ、Amazonの全ブランドは現在、在庫とマーケティングの準備を進めている。
経済および健康面で先行き不透明な状況が続いているが、プライムデーを楽しみにしている消費者は多い。9月第1週にピープルセイ(Piplsay)がアメリカで約2万4000人を対象に行ったアンケートによると、49%がこの毎年恒例のイベントを楽しみにしているという。さらに、48%が「昨年と同程度か、少し多めに使う予定」と回答している。
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Amazonのブランドをクライアントに抱えるボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)の創業者でありCEOのキリ・マスターズ氏は今年の同イベントの売上について、ブランドとプロモーション、開催時期によって変わるだろうと語る。たとえば10月に開催されるのであれば、日焼け止めやサンダルといった商品では上手くいかなくなる。
さらにマスターズ氏は、例年、夏に行われるプライムデーを第4四半期における戦略の実験の場として利用している企業が多い点を指摘している。「だが今年はプライムデー自体が第4四半期に開催される。在庫の需要やマーチャンダイジング、宣伝面で対応する時間はあまりない」。
「Amazonがもたらす価値は大きい」
そんななか、プライムデーを控えて勢いに乗っているブランドのひとつが免疫力を高めるサプリのスタートアップであるヒルマ(Hilma)だ。共同創業者ヒラリー・クォートナー氏によると、1月の創業以降、右肩上がりで成長を遂げている同社は9月からAmazonで試験的に商品展開を行っている。
「Amazonで商品展開することで、カスタマー層を増やせると考えている。Amazon展開について懸念し、二の足を踏むD2Cブランドは多い。だが特に現在の環境下では、Amazonがもたらす価値のほうがはるかに大きいはずだ。消費者の集まる場所で販売するのは当然だと考えている」。
「現時点でAmazonに参加するのは、簡単なことではなかった」と同氏は語る。「現在の自宅でなるべく多くのことを済まそうとする環境下で、なるべく多くの消費者に買い物しやすい環境を提供したい」。また、これによって10月の第1週から第2週までに、同社のユーザーレビューは増え、在庫を準備できる。プライムデーで取り上げられる可能性も高まっている。
プライムデーでは、実際の需要に応えられる在庫計画が必要であり、これが「新興ブランドにとって制約となりうる」とクォートナー氏は語る。また、第4四半期にプライムデーが開催されることについて、クリスマスシーズンが間近であり、早めにこの時期に買い物をする人も出てくるのではないかと期待している。「クリスマスシーズンとの境目があいまいな時期だ」と同氏は語る。
需要が生産を上回るとの予測も
クラフトキットブランドのグロウ・アンド・マーク(Grow and Mark)創業者、ウィル・ジョンストン氏は、米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に対し、例年であればプライムデーはさほど売上げ増につながらないものの、今年の開催時期を考えると状況は変わるかもしれないと予測している。同社は、8年間に渡ってAmazonで商品を展開しており、年末などの休暇シーズンに売り上げを大きく伸ばす。だがジョンストン氏は、今年のプライムデーはクリスマスシーズンが近く、トラフィックが増えることでその後の販売増にもつながる可能性もあると考えている。
一方、在宅の時間が増えている今年、「プライムデーの時期に販売自体が伸びるかは不明」であり、それにより出荷の影響も受けるだろうと語る。同社は「例年より遅れているが、可能な限り生産量を増やしている」という。また、プライムデーの直後にブラックフライデーとサイバーマンデー来るため、需要が生産能力を上回るだろうとジョンストン氏は予測している。パンデミックによる在宅時間の増加を背景に、グロウ・アンド・マークは広告を出さずとも1月から3月まで売上が大幅に伸びている。
デジタルコンサルティング企業のアビオノス(Avionos)でデジタル戦略実行責任者を務めるムースミ・ベハリ氏は「販売側は、プライムデーに向けて利益を最大化するため競争力のある価格を設定すべきだろう」と語る。プライムデーは多数の商品が割引されるため、価格設定やAmazonプライムの出荷オプションといった面で事前に調整することが望ましいのだ。また、今年のクリスマスシーズンには、この春のようにAmazonが物流面でパンクすることも考えられる。
「Amazonに、販売価格が一番安い商品を求めて来る人は多い」とベハリ氏は語る。「過去数年、プライムデーは記録的な売上となっている。販売側には、カスタマーの需要を満せるような在庫の透明性と準備が求められる」。
「完璧ではないが恩恵を受けてる」
Amazonは、プライムデーの度重なる延期のなかでも販売業者への情報提供を続けてきた。クォートナー氏もジョンストン氏も、Amazonから今後数週間の予定について細かく連絡を受けているという。
「私はAmazonが好きだ」と、ジョンストン氏は語る。「完璧ではないが、当社はAmazonの恩恵を受けている」。
[原文:Amazon sellers prepare for a different kind of Prime Day this year]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:長田真)