Amazonの毎年恒例のプライムデーは、10月13~14日に開催される。通常は7月中旬に開催されているが、Amazonは今年、プライムデーを延期した。今春、Amazonが必需品の出荷用に倉庫にスペースを設けることを優先し、企業の多くが混乱に陥ったため、セラーにより多くの準備時間を与えるためだった。
セラーにとってのカウントダウンが始まった。数カ月遅れてAmazonが公式に、プライムデーの新たな開催日を発表したのだ。セラーは新領域を進むために最善を尽くそうとしている。
Amazonの毎年恒例の販売イベントであるプライムデーは、10月13~14日に開催される。通常は7月中旬に開催されているが、Amazonは今年、プライムデーを延期した。今春、Amazonが必需品の出荷用に倉庫にスペースを設けることを優先し、企業の多くが混乱に陥ったため、セラーにより多くの準備時間を与えるためだった。
セラーはすでに数週間前に、プライムデーが10月に開催されると通知されていたが、残りのホリデーシーズンに匹敵するイベントになるのか、まだ不安を抱いている。セラーにとって、プライムデーが唯一もっとも重要なセールスデーというわけではない。しかし、Amazonにとっては大きなセールスデーであるため、多くのセラーが参加している。Amazonは、プライムデーの売上高を明らかにしていないが、同社によると、昨年の売上高は、前年のブラックフライデーとサイバーマンデーの売上高を合わせたよりも大きかったという。また、昨年は、中小企業の製品20億ドル(約2112億円)相当がプライムデーのあいだに販売された。
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今年の遅い開催は、この大事な日に向けてどう取り組むか考えようとしているセラーにとって、いささか問題だ。一方では、プライムデーを利用してホリデーショッピングを行う顧客が増え、例年どおりに7月に開催されていた場合よりもシェアを伸ばせると、希望を抱くセラーもいる。だが、ブラックフライデーやサイバーマンデーでさらに安く買い物ができることを期待して、あと数週間待とうと決める買い物客が多くなると懸念するセラーもいる。その場合、ブラックフライデーやサイバーマンデーで費やせたはずの多額の資金を、プライムデーでの広告に回すことで、無駄な投資になる恐れがある。Amazonが3月に、必需品以外の製品の出荷受け入れを停止していたことにより、年度の販売目標に達していないセラーにとっては特に懸念材料となる。
頭を悩ます多額の広告費
「セラーとベンダーはいずれも、延期されたプライムデーの開催に期待している。多くのセラーとベンダーは、年間の販売目標がこれに掛かっているように思われる」と語るのは、Amazonのコンサルタント企業であるボブスレーマーケティング(Bobsled Marketing)の広告ディレクター、ステファン・ヨルデフ氏だ。
ヨルデフ氏によると、プライムデーをめぐる興奮は、利ざやが少ないこともあって、近年、顧客である一部のセラーのあいだで冷め切ったように感じられるという。これは、ブランドが提供しなければならない大幅な値引きと、宣伝に気付いてもらうために費やさなければならない多額の広告費も一因だ。
Amazonが今年、エージェンシーに送ったプレゼン資料では、プライムデーに向けた下準備で顧客と協力する方法について助言されていた。このプレゼン資料からは、プライムデーの2〜3週間前に潜在的オーディエンスに対して、店舗との取引を宣伝する広告が流され始めることが窺えた。セラーが、プライムデーに向けて1日当たりの広告支出を200%増やしていることもわかった。
だが、ヨルデフ氏によると、プライムデー後の数週間は「ハロー効果」で売上が急増するため、ボブスレーマーケティングはまだ、プライムデーに参加するようセラーに助言しているという。今回のプライムデーでは特に、それが効果を発揮する可能性がある。プライムデーが終わってからブラックフライデーやサイバーマンデーまで数週間しかないからだ。
あまりにも近い2大セール
その一方で、セラーは、どの取引がプライムデーやサイバーマンデーに最適か、より考えなければならないだろう。加重ブランケットブランドのグラビティ・プロダクツ(Gravity Products)でCEOを務めるマイク・グリロ氏は、同ブランドは毎年、Amazonでふたつのビッグセールを行うのが一般的だと話す。ひとつはプライムデーに、もうひとつはホリデーシーズンの頃に実施し、「特選タイムセール(Deal of the Day)」枠の確保に努めるという。
だが、特選タイムセール枠を確保するのに、直近の60日以内には、提示された取引を下回る割引を提供できなかった。これまでは、それでもグラビティ・プロダクツにとって問題ではなかったが、今年はプライムデーとサイバーマンデーの日があまりにも近い。
「(プライムデーには)以前と比べてさほど積極的ではなくなると思う。サイバーマンデー向けに最安値で最上のものを提供したいということしかわからない」と、グリロ氏は語る。
在庫切れの可能性も懸念材料
セラーのあいだでもうひとつの懸念材料は、プライムデーで売上が大幅に増えれば在庫切れになる可能性があることだ。Amazonに特化した製品リサーチソフトウェアを販売しているジャングル・スカウト(Jungle Scout)が、Amazonのセラー24社を対象に最近行った調査では、うち18社が、第4四半期の在庫切れについて懸念していると回答している。2020年夏のはじめ、セラーがAmazonの倉庫に一度に送れる特定種類の製品の個数について、7月に新たな制限が導入されたあと、一部のAmazonセラーは在庫切れが心配だと報告している。
米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)が、新たな制限についてコメントを求めたところ、Amazonの広報担当者は次のように答えた。「販売パートナーへのコミットメントは、これまでにないほど堅実なものであり、『フルフィルメント by Amazon(FBA)』プログラムを利用しているすべてのセラーが製品用のスペースを確保するのを手助けするため、現在、措置を講じているところだ」。そのうえ、Amazonが、倉庫内で実施したソーシャルディスタンスに関する手順により、在庫をストックするのに、一部の倉庫ではさらに長い時間が掛かっている。
ジャングル・スカウトのCEO、グレッグ・マーサー氏は次のように述べる。「我々はふたつの製品リストを作成するようにセラーに助言してきた。ひとつは、FBAを通じて販売する製品のリスト、もうひとつは『フルフィルメント by Merchant(FBM)』経由で販売する製品のリストだ。こうすれば、セラーは、Amazonの倉庫の在庫量を最大限にでき、売り切れた場合も、補充して出荷すれば、製品をまだ販売できる」。
「穴埋めをしようとするだろう」
そうするには、FBAを利用するセラーは、独自の外部物流業者を抱える必要もあるが、すべてのセラーが、それに支出する多額の金を持っているわけではないだろう。プライムデーとホリデーシーズン両方の広告への支出増加と組み合わさると、売れ行きが良くても、Amazonセラーにとって第4四半期は費用がかさみかねない。
「多くの広告主が今四半期は積極的になり、2020年に入ってこれまでに失われた売上の穴埋めをしようとするだろう」と、ボブスレーマーケティングのヨルデフ氏は指摘する。
[原文:Amazon sellers are anxious about their Prime Day strategies]
ANNA HENSEL(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)