自動車メーカーのビュイックは、GM(General Motors)傘下の広告主として、Amazonの音声アシスタントアレクサ(Alexa)にフォーカスしたマーケティングキャンペーンを展開するはじめての企業となった。
ほとんどのマーケターは、Amazon広告をパフォーマンス広告だと考えている。だが、ビュイック(Buick)のマーケティング幹部は、Amazon広告でのブランディングに可能性を感じているようだ。
自動車メーカーのビュイックは、GM(General Motors)傘下の広告主として、Amazonの音声アシスタント、アレクサ(Alexa)にフォーカスしたマーケティングキャンペーンを展開するはじめての企業となった。同社のSUV、アンコールGX(Encore GX)に乗れば、運転中にアレクサを使って、音楽の再生や商品の注文などさまざまなことができるという。
ビュイックのマーケターは、アレクサを活用した車内体験だけでなく、Amazonのさまざまなプラットフォームでマーケティングを展開できることに大きな期待を寄せている。「このキャンペーンは、音声ベースの体験を顧客に提供するだけでなく、自動車販売をAmazonのエコシステム内で行うための最初のステップだ」と、ビュイックでマーケティングおよび広告担当マネージャーを務めるケイト・フラボフスキー氏はいう。
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ブランディングのためのチャネル
ビュイックはこのキャンペーンで、アレクサの技術を活用するだけでなく、アクレサの「会話」をカスタマイズし、人々がAmazonのあらゆるデバイスからビュイックの車について質問できるようにした。また、Amazonとの提携や、Amazonのマーケットプレイスに開設した専用のバーチャルショールームをアピールする広告を展開している。ビュイックの狙いは、車のなかだけでなく、マーケットプレイスやAmazonのFire TV(ファイヤーTV)など、さまざまな場所でターゲティング広告を展開し、Amazonをブランディングのためのチャネルにすることだ(人々が、車のなかでいつものようにAmazonで買い物をするのは、いまはまだ難しいだろう)。
「アレクサと連携し、新車の発売という機会を最大限に活用したいと考えている我々にとって、Amazonはブランディングに取り組む場所として最適だ」と、フラボフスキー氏はいう。「また、この取り組みは、人々にアレクサの新たな利用方法を提示するとともに、ブランドに対しても、テクノロジーが顧客のショッピング体験を向上する一助になることを示唆している」。
いまのところ、ビュイックのマーケターが力を入れているのは、自社の車に関する情報をAmazonからすぐに入手できるようにすることであり、Amazonのプラットフォームから車を購入することはできない。
「車の購入方法はまだ変わらない」と、フラボフスキー氏はいう。実際、Amazonでのマーケティングの取り組みは、その大半が人々をサイトやショールームに呼び戻すためのものになると同氏は説明した。Amazonの広告枠を購入する広告主のほとんどがAmazonで商品を販売していることを考えると、ビュイックは逆張りのスタンスを取っているといえる。
Amzaonにとっては、ブランド予算を獲得する好機
Amazonの広告ビジネスは成長を続けているが、ブランド予算を本格的に獲得するには至っていない。ほとんどの広告主は、ダイレクト広告におけるAmazonの魅力に惹かれているからだ。しかし、音声技術がこのような状況を変えるかもしれない。アレクサを搭載した車を増やすことにAmazonが目を向け始めれば、その可能性はさらに高まるだろう。
Amazonは、いまもスマートスピーカー市場をリードしているが、GoogleとAppleには、自社の音声アシスタントが自社のスマートフォンに組み込まれているというアドバンテージがある。自動車はAmazonにとって、アレクサをさらにモバイル市場に引き込む手段となるだけでなく、自社の広告ビジネスをマーケティング予算の潤沢な自動車会社のマーケターに近づける手段となるかもしれない。
「増え続ける音声アシスト対応の車のリストにビュイックが加わったことで、Amazonは『Alexa everywhere(どこでもアレクサ)』というビジョンに一歩近づいた」と、音声エージェンシーのラビット・アンド・ポーク(Rabbit & Pork)で、ビジネスディレクターを務めるシュテフ・プライアー氏はいう。「音声検索機能は、家のなかだけで行われる独立した活動ではなく、どこでも利用できるチャネルとなりつつある。そうなれば、人々は毎日好きなときにさまざまなモノに向かって音声で命令し、望む結果を得られるようになるだろう」。
自動車業界の動向を象徴する動き
今回のビュイックとAmazonの取り組みは、自動車業界の広告主のあいだで起こっている傾向を象徴するものだ。
多くの実店舗が3カ月以上にわたって閉鎖された今年、オンラインで商品を購入する人が増えただけでなく、より多くの人がロックダウン後もオンラインで買い物を続けようと考えている。そこで、自動車メーカーはオンライン販売を見据えた取り組みを強化しはじめているのだ。
フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)によれば、フランスのグループPSA(Groupe PSA)や、ドイツのフォルクスワーゲン(Volkswagen)とダイムラー(Daimler)など、さまざまなメーカーがこの数カ月間に自動車のeコマース戦略を検討しているという。
Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)