広告主たちは、Amazonにおける広告キャンペーンを自社内でマネジメントしたい。そのため、ますます拡大するAmazonの広告ビジネスを上手くナビゲートしてくれる人材を探しているという。バイイングを自分たちで行いたいわけではない。戦略を自分たちで設定して、その遂行をエージェンシーに託したいと考えているのだ。
広告主たちは、Amazonにおける広告キャンペーンを自社内でマネジメントしたいと考えている。そのため、ますます拡大するAmazonの広告ビジネスを上手くナビゲートしてくれる人材を探しているという。バイイングを自分たちで行いたいわけではない。戦略を自分たちで設定して、その遂行をエージェンシーに託したいと考えているのだ。
これは、Facebook投稿やGoogleの検索広告と同じといえるだろう。ボーダフォン(Vodafone)やイーベイ(eBay)は検索マネージャーを配置し、Googleの広告キャンペーンを運営。フィリップス(Philips)や日産(Nissan)も同じ試みをFacebookで行っている。
ブランドたちの最新動向
日用品メーカーのレキットベンキサー(Reckitt Benckiser)の求人広告では、検索キャンペーンをマネジメントできる人材を求めているようだ。この広告では消費者向けプロダクトビジネスが、Amazonを巨大なスーパーマーケットとして捉えており、検索マネージャーを用いてそのプロダクトのプロモーションを行おうと計画していることが明らかだ。
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ファッション業界のリテーラーであるGスター(G-Star)も、このような人材を自社で抱えたいと思っている広告主のひとつだ。Amazon上のプロダクト販売に特化したeコマースマネージャーを採用している。これも求人広告からの情報だ。ほかのeコマース職とは異なり、この職では、Gスターの広告エージェンシーを指示する専門知識と経験が必要とされている。ただプロダクトを販売するだけではなく、Amazon上でブランドの存在を高めるための広告の重要性を、この求人広告では強調している。Gスターもレキットベンキサーも本稿に対するコメントのリクエストには応えなかった。
「ブランドたちはAmazon向けの専門人材を自社で抱えようとしている」と、Amazon広告・マーケティングのコンサルタントであるダニエル・テジャーダ氏は語る。彼はパフォーマンス・エージェンシーであるクイヴァー(Quiverr)で務めていた。「こういったマーケターたちは、Amazon上でのブランドの方向性をマネジメントしてエージェンシーを使うか、もしくは小規模な自社のチームを使ってそれを遂行する」。
整備されるAmazon環境
Amazonは他のビジネス分野でダイレクトな関係性を持っている。このことが今回の分野に対するマーケターたちからの需要を増加させている。小規模なエージェンシーたちは通常、クライアントのためにAmazon上の広告をマネジメントした経験を持っているのに対して、大手ネットワークはプラットフォームについてまだよく理解できていない。しかし、Amazonは彼らのオファーをアグレッシブに推し進めている。以前抱えていた複雑なオファーを今夏シンプルに変更して以来、その傾向がさらに強まっている。自社内で専門家を抱えるというアイデアについて再考するマーケターの数は増えている。テジャーダ氏によると、Amazonのデマンドサイドのプラットフォームに対するブランドからの興味において、この傾向が明確になっているという。
「AmazonはDSPを広告エージェンシーにプッシュしている。しかし、いまやかなりの数のブランドたちが、自分たちでDSPについて学びはじめている」と彼は言う。
広告認知(Advertising Perceptions)による最近のレポートによると、AmazonのDSPは、Googleを越して広告主たちによってもっともよく使われているという。今年7月の段階でAmazonのDSPを使用する広告主は、41%と他のDSPを越えている。
エージェンシーらの対応
広告プラットフォームのダウンストリーム(Downstream)のファウンダーでありAmazonの元エグゼクティブであるコナー・フォーリー氏によると、最近ダウンストリームを使い始めた大手消費者電子機器ブランドのひとつも、自社でAmazon広告を運営したいと思っているという。だが、そのブランドが使っているエージェンシーが、Amazonにおける売上と広告についてちゃんと理解できているのか自信がないようだ。
「Amazonが決定的に重要なチャンネルとして台頭したことで、Amazon専門のエージェンシーが『風土病のように』業界としてたち現れた。そんななか、いまではブランドたちがこういった機能を自社内で抱え、エージェンシーたちと決別しようとする傾向が観察されている」と、フォーリー氏は言う。
エージェンシーたちはまた、その知識におけるギャップを閉じようと必死だ。
オグルヴィ(Ogilvy)もビームリー(Beamly)も両方が、Amazon広告ビジネスの知識を持ったシニア・エグゼクティブを求人募集している。しかし十分な人材が存在していない、という可能性がある。Amazonの広告ビジネスはまだ歴史が浅く、専門家と言えるほどの経験がある広告エグゼクティブはそれほど存在しない。リケットベンキサーやGスターのようなブランドは、競合他社だけでなく彼らが使うエージェンシーと人材を奪い合っている可能性もある。
「クライアントとエージェンシーのあいだで、人材を巡る競争が確実に起きている」と語るのは、マインドシェアUK(Mindshare U.K.)のeコマース部門責任者であるユリア・リヴニー氏だ。「メディアとeコマース、両方の経験を有するスペシャリストを見つけるのはほぼ不可能だ。そのうえ、コマーシャル、コンサルティング、そしてアナリティカルにおける経験なども役立つ知識分野となっている」。
需要が増すAmazon知識
Amazonに関する専門知識を有するというのは大変な業績である。まずAmazonが持つ検索アルゴリズムを本質的に理解している必要がある。それだけでなく、オンラインにおけるショッピング行動についても理解が必要だ。リサーチ企業サーヴァータ(Survata)によると、プロダクト検索のほぼ半数はAmazonで開始されるという。次に、専門家としてはAmazonが持つディスプレイ・ビジネスを駆使できる必要がある。ここにおいてはプログラマティック同様、ブランドたちがより多くの予算を注ぎ込みつつある。そしてプロダクトのページをマネジメントでき、顧客レビュー、そして在庫量の管理も出来なくてはいけない。これらすべては、広告セールスに対するリターンに影響を与える重要なコンバージョン要素となっている。そして最後に、適正な価格がどこか、適正なプロモーション戦略は何か、そして同じ商品をめぐって競争をしないようにサードパーティの販売者とも協働するにはどうすれば良いか、といったことも判断できなくてはいけないのだ。
「Amazon上でメディアがどう機能するのか理解しているだけでは成功は保証されない」と、リヴニー氏は言う。
人材を巡っての争いは、今後Amazon広告の支出が増えるにつれて激化するだろう。
最近のDIGIDAYのリサーチによると、広告バイヤーのうち73%が来年のAmazonにおける支出を増加させる計画をしているという。たとえば、アイプロスペクト(IProspect)は2018年、Amazonにおける支出を2倍以上増加させ、2019年にはさらに支出を増やす予定だ。
Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)