ビューティーブランドは、不可欠ではありながらますます競争が激しくなるeコマースマーケットプレイスで成功するため Amazon のプレイブックを作成している。プレミアム、インディーズ系のスキンケア商品や化粧品のメーカーは、Amazonでの足場を固めるために広告に多額の投資を行い、顧客データを注視していると語る。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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ビューティブランドは、不可欠ではありながらますます競争が激しくなっていくeコマースマーケットプレイスで成功するために、Amazonのプレイブックを作成している。
プレミアムあるいはインディーズ系のスキンケア商品や化粧品のメーカーは、Amazonでの足場を固めるために広告に多額の投資を行い、顧客データを注視していると語る。一部のメーカーは、eコマースの巨大企業であるAmazonが、自社のプラットフォームを使用するためのインセンティブとして特定のブランドに提供している独自の特典から恩恵を受けている。
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美容分野への投資と支援
Amazonはここ数年、セフォラ(Sephora)やアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)などの専業小売業者が独占している市場に参入するため、美容品に大きく力を入れてきた。2013年にラグジュアリービューティのサブカテゴリーを開設してから、このハブを「プレミアムビューティ」に改名し、より多くのハイエンド商品を取り入れるように拡大して、現在ではエリザベスアーデン(Elizabeth Arden)、モルトンブラウン(Molton Brown)、リチュアルズ(Rituals)、バーバリー(Burberry)などのブランドから6000以上の商品を掲載している。また2018年にはインディーズのビューティストアを開設し、競合他社では購入できない新進ブランドにスポットライトを当てた。さらには、ヘアケア専門コーナーや自社スキンケアブランドの立ち上げを行ったほか、昨年は英国でAmazonヘアサロン(Amazon hair salon)を開店するといった活動を行っている。
この投資は実を結びつつある。プロフィテロ(Profitero)のデータによれば、Amazonでの美容品の売上は2021年1月から同年11月末にかけ、前年比で13%の急増を見せた。2020年の増加はさらに明白で、2019年と比較して売上は56%も増大した。プロフィテロはこの増加を、パンデミックの最中にオンラインショッピングへの移行が加速したためとしている。Amazonは最終的に、競合的な価格設定と、美容品に適合した機能、たとえば商品を自動的に補充する機能への注力により市場シェアを勝ち取ったと、プロフィテロの最高マーケティング責任者であるマイク・ブラック氏は語っている。
Amazonはメイクアップ・スキンケアのD2Cブランドであるアーリーウープ(Alleyoop)を2年間にわたって勧誘し最終的に合意に達したと、同社の共同創設者でCOOを務めるデビッド・マンシュリー氏は語る。アーリーウープは2021年第2四半期に、指定されたインディーズビューティブランドとして同プラットフォームに参加した。これには独自の特典があった。Amazonは主要な窓口を通してアーリーウープの導入を支援し、ほかの出品者に対してよりも多くのサポートを行い、ほかの出品者は利用できないマーケティング機会へのアクセスを行えるようにしたと、マンシュリー氏は語っている。
Amazonはアーリーウープの商品を自社のビューティページで何回か特集し、ホリデーシーズンの主要なギフトアイテムのリストに掲載した。また同社は、今後のプロモーションについてもアーリーウープに前もって通知した。このような種類の特典は収益に直接影響を及ぼす。マンシュリー氏は、特定のSKUがメインのビューティページに掲載されれば、そのSKUの日ごとの売上は2倍から3倍にもなると述べている。
広告コスト上昇で競争激化
しかし、これらの恩恵は永久に続くものではない。「Amazonは、この特典が最初の年のみだと通知した」とマンシュリー氏は述べる。その点においてこれらの特典は、Amazonプラットフォームで新しい顧客を呼び込めるとAmazonが考えているブランドにとって、簡単に移行できるよう設計されたものだ。
Amazonには、ラグジュアリーブランドに限定されたプレミアムビューティの指定もある。ドランクエレファント(Drunk Elephant)、マリン&ゴッツ(Malin + Goetz)、ジ・オーディナリー(The Ordinary)、スーパーグープ(Supergoop)などのビューティブランドなどを取り扱うeコマース代理店のスーパーオーディナリー(SuperOrdinary)でCOOを務めるスティーブ・ストロング氏によれば、精選されたこのサブカテゴリーに属する企業は、ビジュアルや、使用するコピーについて厳格なガイドラインに従い、価格設定のコントロールをAmazonに委ねる必要がある。
同社の米国のクライアントはすべて、Amazonで販売を行っている。しかしスーパーオーディナリー社のブランドは、市場のハイエンドで営業しているにもかかわらず、プレミアムカテゴリーには含まれていない。「これらのブランドは、コントロールのバランスを重視している」とストロング氏は述べ、プレミアムに指定されるには「自社によるコントロールの制限」が伴うとつけ加えている。
初年の特典があるにもかかわらず、アーリーウープは依然としてより多くのリソースをAmazonに注ぎ込んでいる。同社には、マーケットプレイスで自社ブランドの地位を固めるために代理店と連携して作業する社内チームがある。ほかの多くの企業と同様、アーリーウープは競合が激化するなかで自社商品リストの充実を図るため、広告費をより多く投じている。
マンシュリー氏は、「従来のAmazonはよりオーガニックだったが、今日では有料プラットフォームの要素が強くなっている」と述べ、「広告のコストは2年前より増加している」と付け加えている。
スーパーオーディナリーも同様な課題に取り組んでいる。各ブランドはもはやAmazonのオーガニックなSEOマーケティングに頼れなくなったと、ストロング氏は語る。その代わりに各ブランドはリスティングの結果に「ファーストビューで」表示されるために広告に投資し、自社のランクを上げるために独自の戦略を編み出す必要がある。
ボブスレーマーケティング(Bobsled Marketing)の創設者でCEOを務めるキリ・マスターズ氏は次のように述べている。「Amazonにおける競争は従来よりも激化している。プラットフォーム全体でクリックあたりのコスト(CPC)が高騰している。我々はそれをブラックフライデーとサイバーマンデーのショッピングホリデーに目の当たりにした」。
マスターズ氏によれば、広告のコスト上昇は、パンデミックのあいだに各ブランドがマーケティングの投資をeコマースに転換したことと、Amazonアグリゲーターの成長という2つの動向により加速した。このうち後者は、買収した多数のブランドの市場シェアを増やすことに強く特化している。これは多くの場合、広告投資の増加を中心とする戦略になり、短期的な収益性は二の次となる。これらの要素すべてが「Amazonのようなプラットフォームで広告に巨額の投資が流入し、競争が激化して」、結局はCPCの上昇を招いているとマスターズ氏は語っている。
それでもAmazonを無視できない
パックビュー(Pacvue)の四半期レポートによれば、Amazonで1日に消費される広告の平均額は第2四半期に前年比で82%も増大した。一方でスポンサー付き商品広告のCPCは同じ期間に36%上昇し、1.22ドル(約139円)になった。これら2つの指標は第3四半期には変化していない。
投資の増額にもかかわらず、ビューティブランドはAmazonを無視することはできないと語っている。Amazonが非常に大きな販売チャネルであるためだ。「Amazonで販売しないのは、Google検索結果に表示されないようなものだ」とマンシュリー氏は述べる。
スーパーオーディナリーは、Amazonのプラットフォームで顧客レビューやエンゲージメントによって生み出されるフィードバックが、ブランドの商品ロードマップと、ほかの小売業者への販売方法を形成するための強力なツールだと主張する。
ストロング氏は次のように述べている。「当社が協力しているブランドでは、購買の対象層が『Amazonで販売を行う』ことを要求している。Amazonは世界最大のフォーカスグループだ」。
[原文:Amazon Briefing: Amazon is becoming more competitive for beauty brands ]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu