Amazonが、顧客のフィードバックに基づいて商品の品揃えを決めるリアル店舗「Amazon 4-star」新たにオープンした。この店舗は、Amazonが販売業者に自社をさらにアピールする手段となるだけでなく、未来のデパートの姿を垣間見せてくれるものになるだろう。
Amazonが、顧客のフィードバックに基づいて商品の品揃えを決めるリアル店舗「Amazon 4-star」新たにオープンした。この店舗は、Amazonが販売業者に自社をさらにアピールする手段となるだけでなく、未来のデパートの姿を垣間見せてくれるものになるだろう。
たとえば、買う側ではなく売る側が品揃えを決める従来の販売モデルにとって、この店舗は新たなチャレンジャーだ。そのため、大手小売企業は、市場調査や推測だけを頼りに品揃えを考えるのではなく、顧客のフィードバックに従って品揃えを決めるべきだというプレッシャーをますます受けることになる。
また、売れ行きが良くなかったという理由で商品を安く売るディスカウントモデルに警告を発することになる。
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「我々がこれまで見てきたなかでもっとも有効なデータの利用方法であることは間違いない」というのは、小売マーケティングエージェンシーのセオリーハウス(Theory House)でプレジデントを務めるジム・カズン氏だ。「あらゆる小売業者にとって、もっとも大きな懸念は在庫維持費だ。売れ行きが保証された商品を店舗の棚に並べることができれば、実に大きなアドバンテージが得られる」。
この件に関してAmazonのコメントは得られていない。
立場が危うくなる格安店
コンサルティング企業のIHLグループ(IHL Group)が最近発表したレポートによれば、小売業者は商品が予想外に売れた場合に備え、巨額の資本提携を結んで安全在庫を確保しているという。IHLの推計によれば、北米の小売業者が在庫管理の問題をカバーするために結んでいる資本提携の金額は、合わせて240億ドル(約2.7兆円)に上っている。売れ行きの悪い商品は、コストを少しでも回収するためにディスカウントストアに送られることが多い。しかし、小売業者が顧客データの利用によって、商品の売れ行きを最初からもっとうまく予測できるようになれば、ディスカウントストアは不利な立場に立たされることになる。
「TJマックス(TJ Maxx)やマーシャルズ(Marshalls)といったディスカウント業者は、大手小売ブランドが売り切ることのできなかった商品やヒットしなかった商品を売ってお金を稼いでいる」と、カズン氏は述べたうえで、次のように指摘する。「Amazonが(そうした商品に)門戸を開放するようになり、その商品が顧客の共感を得る可能性の高いものであった場合は、Amazonが大きなアドバンテージを得ることになる(中略)。もっとも多くのデータを持っているのは彼らだからだ」。
ただしカズン氏は、この新たなチャレンジャーがディスカウント業者にとって真の脅威になるかどうかは、ユーザーフィードバックに基づく販売というコンセプトがどれくらいのペースで拡大するか、ほかの業界のプレイヤーがAmazonの取り組みにどう対応するかにかかっていると話す。また、TJマックスが最近明らかにした成長プランが示しているように、顧客によっては、商品をくまなく探してバーゲン品を見つけ出すという「宝探し」的体験に魅力を感じている人たちもいる。
Amazon 4-starで売られているのは、Amazonサイトで星4つ以上の評価を獲得した製品と、「新着」「急上昇」「売れ筋」に分類されている製品だ。製品カテゴリーには、家電、キッチン、ホーム、おもちゃ、本、ゲームなどがある。また、Amazonサイトの「ほしい物リスト」にもっともよく追加されている製品、ニューヨークで流行っている製品、頻繁に合わせ買いされている製品、「Amazon限定」製品といったカテゴリーも設けられている。
従来業者の生き残り方
Amazon 4-Starはデータを利用した品揃えの実験場だが、顧客データを利用して在庫を管理しているブランドはAmazonだけではない。たとえば、通販サービスのStitch Fix(スティッチフィックス)は、顧客データを利用して、顧客にすすめる製品をパーソナライズしている。Amazon 4-starが登場したことで、今後は従来型の小売業者が、顧客データから得た情報を利用して品揃えを決める取り組みへの投資を増やすだろうと、調査会社のeマーケター(eMarketer)でeコマースおよび小売担当アナリストを務めるアンドリュー・リップスマン氏は予測している。
ただし、顧客データを利用した販売モデルが広がっても、小売バイヤーが排除されることはないとリップスマン氏はいう。彼らの役割が変化する可能性があるからだ。
「同じようなことが彼ら(小売バイヤー)にできないということはない。(中略)大手小売企業を考えてみればいい。オンラインストアやリアル店舗から独自のデータを得ている彼らなら、製品のレビューや評価を(在庫管理に)取り入れることができるだろう」と、リップスマン氏は語った。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)