ベンチャーキャピタルのアルパカVCでゼネラルパートナーを務めるオーブリー・パガーノ氏は、2012年に立ち上げたファッションブランド、ボウ・アンド・ドレープの創業者としての経験から、投資する価値がある創業者を見極めることに長けている。同氏は、「ブランドの未来は オムニチャネル にある」と指摘する。
ベンチャーキャピタルのアルパカVC(Alpaca VC)でゼネラルパートナーを務めるオーブリー・パガーノ氏は、2012年に立ち上げたファッションブランド、ボウ・アンド・ドレープ(Bow & Drape)の創業者としての経験から、投資する価値がある創業者を見極めることに長けている。
「顧客がそのブランドに何を求めているかを把握し、創業者の声をブランドにどう反映させるかを理解することが重要だ」と、パガーノ氏はGlossyのポッドキャストで語った。
パガーノ氏がオーダーメイドファッションのブランド、ボウ・アンド・ドレープを創業したのは、Tシャツやメキシコ料理のチポトレボウルなど、顧客が自分の好みにあわせてカスタマイズできる商品の人気が高まりつつある頃だった。「より表現力のあるパーソナライズされたファッションを生み出すことにかなりわくわくしていた」というパガーノ氏は、当時のミレニアル世代をターゲットにした。金色のスパンコールを使って「Goal Digger(註:野心を持って目標へと前向きに進む人のこと)」というロゴを刺繍したボウ・アンド・ドレープのスウェットシャツは、2015年にセリーナ・ウィリアムズ選手が着用し、ベストセラーとなった。「ローンチしたスウェットシャツは、そのフレーズどおりのプロダクトとなった」と彼女は述べている。
Advertisement
パガーノ氏は2019年にボウ・アンド・ドレープを売却したが、同ブランドを育てるのに費やした7年間でブランドの進化を経験することができた。ボウ・アンド・ドレープは2015年、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)やノードストローム(Nordstrom)といった百貨店での売り場を得て小売業に参入したが、パガーノ氏によれば、「当時は共生の機会だった」。ブランドはプラットフォームを獲得し、小売店は新しいやり方で顧客と関わることができた。
現在、「ブランドの未来はオムニチャネルにある」とパガーノ氏はいう。「それがライブコマースや小売だろうが、あるいは従来のPDPによるオンラインだろうが、顧客のいる場所に向かうということだ」。パガーノ氏はブランド創業者からアルパカVCの投資家へと転身したが、創業者の可能性を判断する際に重要なのは、粘り強さと人を引き付ける魅力があるかどうかだという点に気づいたという。
「アルパカは、デジタルとフィジカルの世界が交差する点に着目したアーリーステージのファンドだ。そこでは人々がテクノロジーを使って日常生活を変えようとしている」とパガーノ氏は語る。アルパカに興味を持った理由は、チームが「起業家の遍歴」について理解があることと、「企業への投資方法に対するリサーチ主導型のアプローチ」に惹かれたからだという。
パガーノ氏がアルパカで投資した分野のひとつは「リコマーススペース」、つまり商品の再利用である。これは「消費者、特にZ世代が『物が多すぎる』といっている」ことに関係がある。ライブコマース、返品、国境を越えた商取引も、パガーノ氏が投資に値すると判断した分野だ。
パガーノ氏は、「インターネットによって文化が細分化され、ある領域に非常に特化したオーディエンスに向けて、かなり具体的な話ができるようになった。もっとも重要なのは、特定のオーディエンスと話すこと、そして対話する相手に親近感を抱き共通性を見出すことだ」という。
以下、対談のハイライトを編集して簡潔に紹介する。
Subscribe: Apple Podcasts| Stitcher| Google Play| Spotify
「本当のパートナー」であることについて
「他人からどう思われているか気にしないようにはしているが、影響は受ける。自分の会社を売ろうとしているとき、それはとても重要だ。いま自分に投資してくれている人たちから同意を得なくてはならないこともよくあることだ。私の場合、投資家たち全員を回って、現在の状況や会社と互いにとってベストだと思うことについて話し合った。
会社を売却するという決断を下すだけで約4か月かかり、複雑な計算もたくさん行うはめになったし、会社としてもっともむずかしい決断をしなくてはならなかった。(しかし、そのとき私は)『諦めるなんてお前は最低の起業家だ』とまでいわれて、まるで顔に平手打ちをくらったような気分だった。これは本当のパートナーのやることではない。本当のパートナーなら、これまでともに歩んできた相手がある決断にいたったとき、それは決して簡単なことではないとわかるはずだ」。
投資する価値のある創業者とは
「アーリーステージの投資の大半の決め手となるのは、最終的には人だ。結局のところ、創業者に投資をするのだ。そこで私がいくつか注目している点がある。ひとつは粘り強さと根性。パイロット版を立ち上げる、目立たない場所で顧客を見つける、おもしろいネットワークの観点からパートナーシップを確保する、そういったことに関して未熟なところがないか。たとえアーリーステージであっても、その人の内面を知り、どのようなモチベーションや意欲があるのかを把握する方法はある。ふたつめは、人を引き付けるような魅力がある人と組むこと。『この人には他人を動かす力があるだろうか?』とあらゆる状況で問いかけてみる。そして3つめはファウンダーマーケットフィットと呼んでいるものだ。その人はまさにそのビジネスを行うためにこの世に存在しているのか?」。
今後は「返品」がブランド体験の特徴になる
「サプライチェーンの側面において、ふたつの分野への投資に興味がある。ひとつは返品だ。これまでも私は、配送と同じように返品もブランド体験の特徴になるだろうといい続けてきた。Amazonやアパレル関連の通販のザッポス(Zappos)では「当日配送」がデリバリーのゴールドスタンダードだと我々は教育されてきている。 返品についても同じことが起こるだろう。返品ポリシーが厳しいことが判明したり、返品の際にラベルや梱包、処理の面で嫌な思いをした経験があれば、顧客の購買意欲は低下する。(すでに)多くのことが構築されているが、返品に関しては徹底した(エンド・ツー・エンドの)ソリューションを提供する余地がまだある」
[原文:Alpaca VC’s Aubrie Pagano: ‘The future of brands is omnichannel’]
NITYA RAO(翻訳:Maya Kishida 編集:戸田美子)