D2C企業のワービーパーカー(Warby Parker)とオールバーズ(Allbirds)は、直営店に多額の投資を行ったきたが、実店舗でプレゼンスを上げることが必ずしも良い結果をもたらすとは限らないことに気づきはじめている。
新興企業である両社が8月8日(オールバーズ)、9日(ワービーパーカー)にそれぞれ発表した四半期決算では、売上がわずかに改善し、損失が減少した。オールバーズの売上は第2四半期に減少したが、それでも予測を上回った。収益は前年同期比9.8%減の7050万ドル(約102億円)となり、損失は2890万ドル(約41億9000万円)だった。ワービーパーカーの合計売上高も、前年同期比11%増だった。純損失は1590万ドル(約23億1000万円)で、前年同期の3220万ドル(約46億7000万円)よりも減少した。
両社にはひとつの大きな共通点がある。数年前と比べて、新規出店による新規顧客の獲得が減少していることだ。オールバーズは、収益性の改善と、サードパーティーパートナーを通じた販売の拡大に軸足を移すようになり、新規出店を実質中断している。これに対して、ワービーパーカーは、出店数を増やているにもかかわらず、アクティブ顧客数の増加ペースが過去数年よりも低下している。iOS14の更新に伴い、D2Cブランドが新規顧客を獲得するためのより投資対効果が高い方法として、実店舗が注目された。しかし、これらのブランドが多くの店舗を出店するにつれ、最初の頃に店舗を開設したときと同じような成長率は得られなくなってきた。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
D2C企業のワービーパーカー(Warby Parker)とオールバーズ(Allbirds)は、直営店に多額の投資を行ったきたが、実店舗でプレゼンスを上げることが必ずしも良い結果をもたらすとは限らないことに気づきはじめている。
新興企業である両社が8月8日(オールバーズ)、9日(ワービーパーカー)にそれぞれ発表した四半期決算では、売上がわずかに改善し、損失が減少した。オールバーズの売上は第2四半期に減少したが、それでも予測を上回った。収益は前年同期比9.8%減の7050万ドル(約102億円)となり、損失は2890万ドル(約41億9000万円)だった。ワービーパーカーの合計売上高も、前年同期比11%増だった。純損失は1590万ドル(約23億1000万円)で、前年同期の3220万ドル(約46億7000万円)よりも減少した。
Advertisement
両社にはひとつの大きな共通点がある。数年前と比べて、新規出店による新規顧客の獲得が減少していることだ。オールバーズは、収益性の改善と、サードパーティーパートナーを通じた販売の拡大に軸足を移すようになり、新規出店を実質中断している。これに対して、ワービーパーカーは、出店数を増やているにもかかわらず、アクティブ顧客数の増加ペースが過去数年よりも低下している。iOS14の更新に伴い、D2Cブランドが新規顧客を獲得するためのより投資対効果が高い方法として、実店舗が注目された。しかし、これらのブランドが多くの店舗を出店するにつれ、最初の頃に店舗を開設したときと同じような成長率は得られなくなってきた。
高効率運営を進めるオールバーズ
オールバーズはこの数四半期において、すでに成長の鈍化に直面している。同社は今年初め、事業の「リセット」を発表した。しかし、3月に再建計画を発表して以来、進展があったという。この再建計画には、店舗の開設ペースを落とすことと、卸売販売を拡大することが含まれている。
オールバーズは2022年、北米で12店舗を新規出店したが、第2四半期は、コネティカット州とサンフランシスコ・ベイエリアに2店舗をオープンしただけだ。また、この四半期の期末には、オハイオ州にも出店し、米国での店舗数は合計44店舗となった。また同社は、サードパーティーによる販売への転換も進めており、特に、グローバル市場では、この四半期で売上が4.3%増加した。現在は、ノードストローム(Nordstrom)や、アールイーアイ(REI)、パブリックランズ(Public Lands)、および欧州のザランド(Zalando)を通じて販売を行っている。
オールバーズの共同創設者でCEOを務めるジョーイ・ズイリンガー氏は決算説明会で、実店舗を急速に拡大し続ける替わりに、「店舗における収益性」を重視していくと述べた。「新店舗はすべて2022年初期のリース時期に合わせてオープンしたもので、現在のところ、米国でさらに出店する計画はない」と述べた。
投資銀行ウィリアムブレア(William Blair)の小売アナリストであるディラン・カーデン氏は、オールバーズが来年までに事業運営を再調整する準備ができていると語る。「これらの取り組みの要点となるのは、不運な製品拡張を促進するために積み上げられた在庫を一掃することだ」と同氏は述べた。この取り組みには、余分な在庫を処分し、中核となる製品ラインナップに集中するといった資金節約の作業も含まれる。
またオールバーズは、通常売上の25%を占める海外事業をサードパーティーによる流通モデルに切り替えることで、海外での販売を効率化しようとしていると同氏は付け加えた。カナダや韓国のディストリビューターとの契約は、年末に締結される見込みだ。
事業の生産性低下が指摘されるワービーパーカー
ワービーパーカーは新店舗への投資を続けており、視力検査センターの建設も進めている。同社は第2四半期に13店舗を出店し、店舗数は合計217店舗になった。
グローバルデータ(GlobalData)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は、店舗数が増えてもアクティブ顧客数の伸びが鈍いことが、ワービーパーカーの懸念点だと語る。第2四半期にワービーパーカーのアクティブ顧客数はわずか1.2%しか増加しなかったと同氏は記している。
「この1年間に39店舗を新規オープンし、昨年から21.9%も店舗数が増えたにもかかわらず、このような結果となった。公平にいえば、この多くはオンライン顧客の減少によるものだ。しかし、店舗は本来、すべてのチャネルに対して新規顧客を集める役割を果たし、さらに顧客の増加率を引き上げる力になるはずである」と同氏は記している。
同氏は、店舗での顧客獲得の活動について、「1年以上にわたり、拡大のペースが減り続けている」と述べた。2022年にはワービーパーカーの全店舗で1万2679人のアクティブな顧客が存在したが、今年はこの数値が1万507人に減少したと同氏は注記した。
これは全体として、ワービーパーカーの事業の生産性が下がってきていることを示唆しているとサンダース氏は語った。それでも同社は、今年も新規出店を続け、年末までに全40店舗を出店する計画であることを認めた。具体的な市場についての言及はないが、共同創業者で共同CEOを務めるニール・ブルーメンソール氏は決算説明会で、同社が「長期的には少なくとも900店舗に達する可能性がある」と述べた。
しかし、実店舗に投資する大きな利点のひとつは、顧客による支出が増えることだと、サンダース氏は語る。ワービーパーカーでの顧客の支出は前年同期に比べて9.2%増加した。また、新店舗ではすべて、ワービーパーカーの視力検査サービスを提供する。「これによって、視力検査料から新しい収益源を生み出し、より高価なアイウェアのレンズやコンタクトレンズのサブスクリプションの売上を促進する」と同氏は述べた。
[原文:Allbirds and Warby Parker are acquiring fewer customers from new store openings]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Allbirds