全米広告主協会(Association of National Advertisers)による年に1度のカンファレンス「マスター・オブ・マーケティング(Masters of Marketing)」が21日、フロリダ州オーランドのローゼンシングル・クリークで開催される。その最大のトピックは消費者行動の変化だ。
全米広告主協会(Association of National Advertisers:ANA)による年に1度のカンファレンス「マスター・オブ・マーケティング(Masters of Marketing)」が21日、ゼネラル・モーターズ(General Motors)、P&G、そしてレゴ(LEGO)のプレゼンテーションで開始される(※原文記事は21日公開)。
フロリダ州オーランドのリゾート地、ローゼンシングル・クリークにマーケターたちが集まり、3日間のカンファレンスを通じて、お互いに交流を深めるのが通例だが、このイベントもまたバーチャルに切り替わった。
当然、バーチャルへの変更、そして現在進行形のパンデミックが始まり7カ月が経っても、その必要性があること自体が参加者と業界関係者の一番の話題となっている。カンファレンスを目前にしたマーケターたちのフォーカスは成長を牽引し、消費者が存在するところでリーチする方法を探ることにあると、業界関係者たちは言う。
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デジタルシフトの必要性を継続して説いていたマーケターたちが、ただ話題にするだけでなく、実行に移す必要が出てきたことで、業界の変化は加速された面があり、そのことから強気に感じているマーケターたちもいる。また、こういった変化にブランドたちが実際に取り組まざるを得なくなったことで、マーケターたちはブランドパーパスの定義と同時に、ブランドの差別化にフォーカスを戻すことができるだろう。
「CMOたちは目を覚ましつつある」
「自分たちが抱える問題をすべてテクノロジーが解決してくれるだろうという幻想から、CMO(最高マーケティング責任者)たちは真に目を覚ましつつある」と、フォレスター(Forrester)の主任アナリストであるジェイ・ペティサール氏は言う。「カーブサイト・ピックアップ(ドライブスルー販売)やeコマースのような単独のフォーカスではなく、ブランドをユニークにするためのクリエイティブなソリューションにフォーカスし始めている」。
コロナウイルスによって、eコマースの拡張追加にフォーカスしたり、何年もかけてD2Cを完璧に仕上げようとするのではなく、消費者側の気に入る条件や状況でプロダクトを提示する方法をマーケターたちは探るようになった。この変化を加速させることで、マーケターたちはブランドパーパスの定義付けという作業に尽力することができている。それは長期的にはブランドの健全性に良い影響を与え、成長を助ける可能性が高いだろう、とペティサール氏は言う。
とはいえ、この数カ月に現れた消費者行動の変化と、この変化がどれほど長続きするのかはまだ、マーケターたちも結論を出していない。
消費者の気分が最重要事項のひとつ
「Covidがさまざまな異なるカテゴリーにおいて消費者行動をどのように変えたか、が大きなテーマのひとつだ」とピンタレスト(Pinterest)のCRO(最高収益責任者)であるジョン・キャプラン氏は言う。そしてコロナ禍が起きる前の状態に消費者行動が戻るのかどうかが、マーケターたちにとっての大きな関心事のひとつだとも付け加えた。
キャプラン氏はペルノ・リカール(Pernod Ricard)のCMOであるパム・フォーバス氏とともにカンファレンスの最初の議論を担当する。マーケターたちは広告が表示されるコンテンツやコンテキストについて考えてるだけでなく、広告を提示させられたときの消費者の気分についても考えているという。
「我々が新しく持っている議論のひとつは、さまざまなプラットフォームに滞在しているとき、それぞれの個人がどのような気分でいるか? についてのものだ。ポジティブかつ生産的な気分なのか。それとも世界で起きていることに圧倒されて一杯一杯になっていたり、怒りや悲しみを感じているのか、といった具合だ。自分たちの広告とブランドの成果に、この気分がどのような影響を与えるかについてマーケティング責任者たちは考えを巡らせている」と、キャプラン氏は言う。
「コスト削減を通じて成功はできない」
マーケターたちはブランドの成長が止まっていることの言い訳として、コロナウイルスを使うのではないかと心配する人もいる。「状況が異なっている理由としてCovid-19の後ろに隠れてしまうことに満足するCMOもいるかもしれない」と、トリニティP3(TrinityP3)のエグゼクティブ・チェアマンであり『マディソンアベニュー・マンスローター(Madison Avenue Manslaughter)』の著者であるマイケル・ファーマー氏は言う。「成長が起きていないもうひとつの理由は、人々がショッピングの方法を変えたことであり、それは業界によっては完全に混乱を生んでいる」と付け加えた。
ファーマー氏はCMOたちはコスト削減に注意するばかりに、エージェンシーがブランド成長の助けをできないレベルになっている、と述べる。「長期的には、コスト削減を通じて成功することはできない」。(コスト削減に注力する)この戦略はほとんどのマーケターたちにとってうまくいっていない、とのことだ。「(マーケターたちは)10年間、それを行ってきていたが、今後10年間同じことができるようには思えない」。
コロナウイルスの影響による成長や変化以外には、マーケターたちは真の多様性と包括性に取り組む必要性について語る可能性が高い。それもコマーシャルにおける多様性だけでなく、仕事場における多様性も含めて、だ。ここ数カ月のあいだ、エージェンシーにおいてはダイバーシティとインクルージョンに関して注目が当てられてきているが、業界を観察する人々は、この問題は「企業とエージェンシーにとって最優先事項のひとつだ」と、カンファレンスでマーケターたちが議題にする可能性が高いと考えていると、ペティサール氏は述べる。「それは企業の社会責任の問題だ」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)