度重なる出荷の遅延や、工場の突然の操業停止が2年近く続いた結果、初期段階の新興企業は物流のコントロールをますます重視しつつある。この1年で、多数の初期段階の新興企業が、物流と流通に多くの社内リソースを振り分けるようになってきた。
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度重なる出荷の遅延や、工場の突然の操業停止が2年近く続いた結果、初期段階の新興企業は物流の管理をますます重視しつつある。
この1年で、多数の初期段階の新興企業が、物流と流通に多くの社内リソースを振り分けるようになってきた。物流の専門家を雇用したり、生産施設を開設したりといった初期投資には多くのコストを要する可能性がある。しかし、エッグライフ(Egglife)やフレームブリッジ(Framebridge)といったブランドのエグゼクティブは、この1年間でサプライチェーンに関する予期しない障害が発生したことから、このような投資は不可欠になったと主張している。
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運用リーダーの雇用により在庫の遅延を管理
2017年の創設以来、D2Cのベーカリーブランドであるスーパーナチュラル(Supernatural)は、サプライチェーンの大部分が創設者であるカーメル・ハーゲン氏のコントロール外だった。同社はより健康的な着色料やスプリンクルなどのベーキング材料に特化し、ほとんどの商品を香港で製造している。
ほかのベーカリーブランドと同様に、スーパーナチュラルもコロナウイルス流行のあいだに、Amazonやホールフーズ(Whole Foods)などの食料品店パートナーによって記録的な売上を達成した。同社のフルタイム従業員はいまでも創設者のハーゲン氏だけで、同氏は何年にもわたり、広告やブランディングなどの運営を代理店に外注してきた。
しかし、需要の増大からスーパーナチュラルの輸入する注文に遅延が発生し、日常的に1人で管理することは困難になってきた。このためハーゲン氏は2021年2月に、運用責任者を契約社員として招き入れた。この運用責任者はスーパーナチュラルのD2C在庫の管理と、小売業者との日常的な連絡、たとえば発注の監視などを担当する。
「企業を創設したごく初期には、時間をうまく分けて多くの役割の仕事をこなすことができる」と同氏は説明している。しかし、ブランドが成長してD2Cだけでなく多くの卸売ベンダーを含むようになると、これは困難になっていった。「厳密に言えば、運用責任者を雇うのに適切な時期は、私がそうしたより3カ月から6カ月前だったろう。しかしいずれにしても、もう雇うべきときだと私は悟った」とハーゲン氏は述べている。
最高サプライチェーン責任者の雇用
2019年10月に設立された卵白ラップブランドのエッグライフフーズ(Egglife Foods)は、社内での生産と流通を拡充しようとしているブランドのもうひとつの例だ。最高販売責任者として2020年にエッグライフに入社したロス・リパリ氏は次のように述べている。「我々は、CPGブローカーを使用せず、自分たちで小売バイヤーと連携することを決めた」。このために社内の販売および流通チームを雇用することになった。同社には現在、同氏の販売チームの5人を含めて30人ほどの従業員がいる。
エッグライフは最初に、中西部の地域食料品チェーンであるコボーンズ(Coborn’s)やカップフーズ(Cup Foods)で操業を開始した。今年末には販売店を2000軒から8000軒に拡大し、今年中に最初の全国小売業者としてスプラウト(Sprouts)やホールフーズマーケット(Whole Foods Market)と取引を開始する予定だ。
エッグライフは独自の製造工場を保有しており、これは2019年にインディアナに開設された。「この1年間、小売業者や自社のD2C顧客に直接発送できるよう、商業ラインを運用するためのスタッフを雇用した」とリパリ氏は述べている。同社はAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)を通じた発送も行っている。
昨年には、専任の最高サプライチェーン責任者として元クラフトフーズ(Kraft Foods)のシンシア・ワゴナー氏を招き入れ、生産と流通の戦略を強化している。同社は2022年に予測される需要を満たすため、製造工場の生産能力を倍増しようとしている。今後数カ月の間に10人の営業担当者を追加採用することを計画しており、リパリ氏のチームの規模は2022年の最初の四半期には3倍となる。
製造能力を自分たちでコントロールできるようにしておくことが、「当社の迅速な成長の鍵となってきた」とリパリ氏は述べる。
製造施設の保有への注力
D2Cフレーミングサービス、フレームブリッジ(Framebridge)の創設者であるスーザン・タイナン氏は、同社が「最初の日から自社独自の製造施設を保有すること」を目標に掲げていると語っている。
これはおもに、同社が短納期のオンデマンドのカスタムフレーム製造業者であり、顧客に対して平均2日間の納期でフレームを提供することを約束していることが影響している。「我々が運用に多くの時間と予算を割かれているのに対し、D2Cの同業者がブランドに注力できることを羨ましく思ったことがある」とタイナン氏は述べている。同社はケンタッキーにふたつの製造工場を持ち、11月にはニュージャージー州ムアズタウンに新しい工場を開設した。
ニュージャージーの施設は、シカゴ、ブルックリン、フィラデルフィアの郊外にあるフレームブリッジの店舗に商品を供給する。フレームブリッジは来年、ニューヨーク市にさらに2店舗の開設を計画している。
初期段階の新興企業にとって、マーケティングと顧客の獲得は重要だが、適切なフルフィルメント能力を保有していることは、特に社外のサプライチェーンに問題が発生したとき大きな優位点になると、タイナン氏は語る。同社は運用責任者であるマイク・ケイン氏を2018年に雇用した。ケイン氏は過去にティファニー(Tiffany & Co.)の経営も務めており、2020年と2021年に同社の製造とロジスティクスの取り組みを先導したと、タイナン氏は語っている。「過去2年間に、当社自身の生産をコントロールし可視性を保つことで、社外の課題すべてを克服できた」とタイナン氏は述べている。
このホリデーシーズンに向けた準備として、フレームブリッジはニュージャージーの工場で150人のフルタイム従業員を新たに雇用する計画だ。「この新しい製造施設により、当社の顧客にさらに迅速な配送を行うことができ、品質の基準も高くなる」とタイナン氏は述べている。
参入の適切な時期は企業で異なる
ブランディング代理店フォージ(Forge)の創設者であるアシュウィン・クリシュナスワミー氏は、ブランドが製造やロジスティクスの能力を自社保有すべき適切な時期は、その企業のカテゴリと生産数量によって異なると述べている。
たとえば、ブランドがニッチ商品を販売しようとしているなら、初期段階で自社独自のロジスティクスに投資する必要があるかもしれない。スナックブランドのマディバイツ(Muddy Bites)は2018年に設立された企業で、フォージのクライアントだが、初期資金の相当部分をカスタム製造に投資した。同社の商品はドイツで製造され、チョコレートを注入したアイスクリームコーンの先端部分を再現している。これはサードパーティーに生産を発注するのは難しいとクリシュナスワミー氏は語る。「この会社の場合、このプロセスを自社内で行うのが理にかなっていた」。
ほかのオンデマンドのサービスや独自商品にも同じ原則があてはまり、アスレジャーや美容品などの単純なD2Cカテゴリとは異なると、クリシュナスワミー氏は語る。「サプライチェーンを社内で保有するのは非常にコストが高い」と同氏は言う。「小規模で体力のない企業にとって、必ずしも選択肢になるとは思えない」。
[原文:After a year of supply chain woes, DTC brands are investing more in logistics]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Framebridge