ニールセン(Nielsen)の数値は、広告購入の基準として使用されており、今後も主要な指標であり続けるだろう。だが、ニールセン以外の測定プロバイダーのデータを、第2の指標または「影の」指標として育てようとする動きが出てくるはずだと、複数のテレビ局やエージェンシーの幹部が述べている。
ニールセン(Nielsen)の数値は、広告主とテレビ局がその年のアップフロント契約交渉で合意した広告購入の基準として使用されており、今後も主要な指標であり続けるだろう。だが、ニールセン以外の測定プロバイダーのデータを、第2の指標または「影の」指標として育てようとする動きが出てくるはずだと、複数のテレビ局やエージェンシーの幹部が述べている。第1の指標を提供するニールセンから別のプロバイダーに切り替えることになった場合に必要な基準を確立するためだ。
「昨年は予算の100%(がニールセンのデータに基づいて取引された金額)だったとすれば、今年は90%ほどかもしれない。だが、30~40%のクライアントが、試験的あるいは同時並行的に取り組むことになるだろう」と、あるエージェンシー幹部は述べ、ニールセンの測定値と並行してほかのプロバイダーの測定値を追跡する場合があることに言及した。
ほとんどの場合、この第2の指標はニールセンの測定値の代役を務めることになる。アップフロント取引では、ニールセンの数値が保証の基準となるが、アイスポットTV(iSpot.tv)やビデオアンプ(VideoAmp)といった測定プロバイダーの数値も、ニールセンの数値と並行して追跡できるように設定される。
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ニールセンと並行して
こうした追跡は、テレビ広告のバイヤーやセラーがある事情に対処するために行われる。その事情とは、アップフロント契約の基準となるニールセンの測定データは数年分に及ぶため(数十年分に及ぶことも珍しくない)、利用をやめるのが極めて難しいというものだ。しかも、広告主はニールセンの新しい測定値にも対応する必要がある。メディア・レイティング・カウンシル(Media Rating Council:以下、MRC)は、ニールセンがパンデミックのあいだに測定した視聴率に誤りがあり、レストランやバーにいた家庭外視聴者も含まれていたことを突き止め、同社に測定手法の修正を求めていた。また、ニールセン自身も、新しいクロスプラットフォームの測定製品「ニールセン・ワン(Nielsen One)」を2022年12月にリリースすべく準備を進めている。
「今年は、新たな手法を学び、テストすることが重要になる。ほかの測定手法との関連や、プランニング(とメディアミックスモデリング)の際にクライアントから過去に得ていたデータなど、あらゆることを深く理解しなければならない」と、2人目のエージェンシー幹部は語った。
広告主によっては、ニールセンに代わる指標を第2の指標として利用するだけでなく、特定のキャンペーンやリニア広告購入の第1の指標にするところも出てくるだろうと、複数のエージェンシー幹部は指摘する。たとえば、ペットを飼っている世帯や新築住宅の購入を検討している人々など、特定の番組において、高度なターゲティングカテゴリーでオーディエンスが過剰に評価されている場合の広告購入などが考えられる。
「2022~2023年のアップフロントでは、すべてとはいわずともいくつかの取引で(ニールセン以外の測定値を利用して)取引を行って、保証を提供してみたい」と、3人目のエージェンシー幹部は話す。「ニールセンに大きな変化が起こるとはまったく思っていないが、どのようなデータが得られるのかを知るために、複数の異なる(テレビ)ネットワークで取り組みを進めている」
「このアップフロントでは、ギャップが生じるかもしれないが、影の指標か新しい指標に基づいて行われた取引を目にすることになるだろう。また、一部のクライアントが成果ベースの指標モデルに移行する可能性もある」と、1人目のエージェンシー幹部は述べている。
すでにテレビ局は動いてる
すでにテレビ局は、今年のアップフロント取引で採用される可能性があるニールセン以外の指標に注目し始めている。たとえば、バイアコムCBS(ViacomCBS)はコムスコア(Comscore)やビデオアンプと契約した。一方、NBCユニバーサル(NBCUniversal)はアイスポットTVを認定測定プロバイダーに加えている。テレビ局の最終的な目標は、広告主に指標として利用できる測定オプションを複数提供できるようにすることだ。
では、今後はテレビ局が、広告主やエージェンシーに第2の指標のサポートを促すためにアップフロント取引の構造を調整するようになるだろうか。この問いに対して、あるテレビ局幹部は特にその予定はないと回答した。「(ニールセン以外の測定値をサポートすることは)双方にとって利益となるため、彼らにインセンティブを与える必要はないと私は考えている。彼らは顧客のために最善を尽くそうとしている。保証を提供する方法に関して選択肢を用意するかどうかは我々次第だ」と、このテレビ局幹部は語った。
それなら、選択肢はいくつあるのだろうか。NBCユニバーサルの測定フレームワークでは、7つの測定プロバイダーが「指標の競合企業」とみなされている。だが、この記事のために取材した幹部らは、広く支持される測定プロバイダーの数は最終的に5社以下、おそらく3社程度になり、そのうちの1社がニールセンになると考えている。
「1年では難しいだろう」
だが、最終的な顔ぶれが確定するまでには、しばらく時間がかかるだろう。たとえば、プロバイダー間の測定手法の違いとそれに伴うギャップをどう調整するのかを検討する作業が残っている。また、すでに述べたように、広告主は、数十年にわたって単一の信頼できる情報源を利用していた時代から、新たな世界秩序を見極めることが必要な時代へと移行しているところなのだ。
「1年では難しいだろう」と、4人目のエージェンシー幹部はいう。それでも、「しばらく追跡を行って何が起こるのかを確認するのが、我々にとっては賢明だ」と語った。
TIM PETERSON(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:)