広告主は、胡散臭いアドエクスチェンジを知らず知らずのうちに使い続けることを止め、アドテクを活用して信頼できるアドエクスチェンジだけから広告を購入するようになってきた。この変化は洗練された大手広告主で起こっている。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
広告主は、胡散臭いアドエクスチェンジを知らず知らずのうちに使い続けることを止め、アドテクを活用して信頼できるアドエクスチェンジだけから広告を購入するようになってきた。
この変化は洗練された大手広告主で起こっている。その背景には、2018年夏のビッドキャッシング・スキャンダル(あるオークションでビッドが不成立となっても、バイヤーに知らせることなく引き続きそのビッドが次のオークションに適用されること)を受けて、アドエクスチェンジがインプレッションをオークションにかける方法を理解していれば、もっともコスト効率のよいマーケットプレイスから購入できると彼らが気づいたことがあると、プログラマティック・コンサルティング企業ジャウンス・メディア(Jounce Media)の創設者であるクリス・ケイン氏はいう。
ジャウンス・メディアのクライアントのなかには、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)がアルゴリズムを使って、自分たちが信頼するアドエクスチェンジ経由でプログラマティックオークションに勝てる確率がもっとも高い入札を選び出す実験をしているものがいるそうだ。これはサプライパス最適化(SPO)として知られるトレンドでもある。
Advertisement
複数のDSPを同時利用
ドイツテレコム(Deutsche Telekom)は、アドテク戦略を微調整して、アドエクスチェンジ上でもっとも効率的なオークションへの道を理解しようとしている。ドイツテレコムは、複数のDSPを利用してアドエクスチェンジから購入したいと思っている。これは同じインベントリー(在庫)への入札を避ける方法を見つけられたときに限られるのだが、そうすることによってドイツテレコムは、最低限のコストで入札に勝利するもっとも効率的な方法を見つけられるだろう。それは、現在のDSPであるアドフォーム(Adform)が探求していることでもある。
アドフォームはいま、サプライパス最適化ツールと呼ばれるものを構築しようとしている。最高戦略責任者のヨッヘン・シュロッサー氏がいうには、このツールを使えば広告主やエージェンシーは、DSPやサプライサイドプラットフォームのアドテクノロジーをベースに自身のマーケットプレイスを設定できるようになる。アドバイヤーはアドフォームのSPOアルゴリズムを用いて、キャンペーンをどのように最適化したいかに基づいて、通常のプライベートマーケットプレイスやその他のアドエクスチェンジを通じてインプレッションへの好きな通路を作り出す。たとえば、広告主は許容できるビューアビリティ(可視性)の最低しきい値を設定し、その最低値以下ならばインプレッションを購入しないとか、アドフォームで独自のマーケットプレイスを作る場合は、サードパーティのベンダー経由で必要なブランドセーフなフィルターを設定することもできるだろう。
「最終結果は、エクスチェンジ、アドフラウドの回避、ビューアビリティなどの問題でコストが必要になる通常のプライベートマーケットプレイスやオープンなアドエクスチェンジ、両社の組み合わせより安く購入できるようになった」と、シュロッサー氏は話す。
パブリッシャーと直接連携
すべてのDSPがアドエクスチェンジでの入札でうまく立ち回り、広告までの最適なルートをアドバイヤーに提供してくれるわけではない。DSP、特に大手は、サプライチェーンの部分を迂回することがある。たとえばクリテオ(Criteo)は、最大級のグローバルウェブサイト2000のうちの31%に直接統合されているとアレクサ(Alexa)が伝えている、とジャウンス・メディアは言っている。2019年にはこのルートを辿るDSPがさらに増えると見られている。
取引上の不利益を被ることを恐れて匿名を条件に取材に応じたあるアドテク企業の幹部はこう語る。「2019年の注目点のひとつは、DSPがどう分断されていくかだ。アドエクスチェンジを通じて入札し、価格を押し上げているインフラの複雑さに対応しているDSPがいる。好きなエクスチェンジを選ばず、パブリッシャーに直接行くところもある」。
グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)はアドテクを使って後者の戦略を取っている。同社は2018年にアドテクをGoogleに統合して、いまはDSPとして「ダブルクリック・ビッド・マネージャー(DoubleClick Bid Manager)」を使って、アドエクスチェンジの「DoubleClick Ad Exchange(AdX)」からインプレッションを購入している。
グラクソ・スミスクラインは、自社のメディアプラン上ですべてのパブリッシャーのために最適なサプライパスを確保したがっていて、アドエクスチェンジ「アデックス(Adex)」経由でそうするほうがより効果的だと決めたと、そのプランを知るエージェンシー幹部はいう。ライセンスを直接Googleに集中させることで理論的には、Googleのプラットフォームを通ってくるすべての入札に関する透明性をグラクソ・スミスクラインに与える。以前は、グラクソ・スミスクラインにも種類の違うDSPを使っているチームがローカルにいて、そこのライセンスはエージェンシーがローカルに所有していて、そうしたプラットフォームのオーナーシップの欠如につながっていた。
「広告主は、ヘッダー入札のほとんどはDSPのインフラコストに関わることで、自分たちには影響しないと思っていた。いまになって同じ広告主が、複数のアドエクスチェンジから購入することのインフラコストとは別に、こうした技術には価格の非効率性があり、事情通のバイヤーはそこを利用して優れた経済性を実現していると、気づき始めた」と、ケイン氏は話す。
ゆっくり進む戦略の進化
にもかかわらず、サプライチェーンのすべての原則の関与が必要なので、こうした戦略の進化はゆっくり進むことになりそうだ。エージェンシーは広告予算を持っていて、特化したプラットフォームを通じてインベントリーがキュレーションを受けられるようパブリッシャーやテックパートナーに圧力をかけることで、彼らが変化の牽引役になる必要があるだろう。
アドテク開発企業のアイピーオンウェブ(Iponweb)はエージェンシーと協力して、インベントリーをキュレートできるツールを作り、料金の変動やアドエクスチェンジのオークションダイナミクスが価格の非効率性を生み出しているケースを特定するために、アドバイヤーがオークションデータを活用できるようにしている。たとえばパブリッシャーは、より高額な入札が行われた場合でさえ、低い価格の入札者にインプレッションを与えることが多い。彼らがオークションデータにアクセスし、パブリッシャーに近づくことができるように、好みのアドエクスチェンジを持つ、戦略的同盟関係にあるエージェンシーブローカーがこうしたインサイトを得ることが予測されるだろう。
アイピーオンウェブ北米のゼネラルマネージャー、ジョー・ミーハン氏は、「隠れた料金やインベントリーの品質のようにプログラマティック広告のサプライチェーンのなかで起こっている問題と、ビッドキャッシングのような新しい問題により、多くのエージェンシーはサプライパートナーとの距離の近さを再評価する必要に迫られている」と語る。「サプライキュレーションにおいてより積極的な役割を果たし、自身のインテリジェンスやデータサイエンスを入札ストリームにもたらすことで、エージェンシーはクライアントのために差別化された購入戦略を作り、ビジネスに本物の結果をもたらすことができる」。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)