「従来の メディア監査 は、もはや役立たず」:代替方法を求める広告主たち

オンラインメディア予算が適切に使われているか、複数の広告主たちが一気に検査することで監査業界に刺激が与えられるはずだったが、現実には監査が抱える欠点を浮き彫りにした。より良い広告を購入すべく、広告主たちは、従来の値段を比べる監査を越えた手法にアプローチしている。

とあるグローバル広告主のシニアマーケターは、メディアバイイングを自社内に統合しようとする試みのなかで、メディア監査の役割を再検討しなくてはいけないと気付いたようだ。

チームによって購入された広告のほとんどが、オンラインオーディションに入れられ、そこでリアルタイムで入札が行われる。流動的な価格設定システムであるため、こういった投資の基準になるようなものはない。しかし、チームに売り込みをかけてきた監査企業たちは、ドメインレベルでCPMの評価基準を取ろうとしたと、このマーケターは言う。このような監査にはほとんど価値がない。というのも、広告主は常にドメインを変え、そこから購入するインプレッションの種類も買えるからだ。その代わりにこの広告主の場合は、クオリティ、データの効果的な活用、透明性、最適化といったメトリックスを監査にどうやって組み入れるのかを理解するプログラマティックの専門家に頼った。

広告主たちは、大手監査企業たちに頼って自分たちのメディア投資を調べ、何か危機的な状況があれば警告をしてもらおうとする。しかし、最近のスキャンダルは、この監査企業たちがそれほど優れた仕事をしていないことを明らかにした。ビューアビリティ、フラウド、そしてブランドセーフティは、いまだに大きな問題として残っており、クオリティを無視して広告のコストで評価を行う監査行為によって、これらの問題は悪化することになったのだ。

「どのようなデジタルインプレッションにおいても、そこに含まれる変数の量は非常に大きい。そのためCPMベンチマーク(業界の水準と比較して評価すること)だけでは有効ではない。またエージェンシーのパフォーマンスに関する、まったく間違った印象を与えることになる」と、デジタルメディア・コンサルティング企業デジタルデシジョン(Digital Decisions)のマネージングパートナーであるルーベン・シュルアー氏は言った。

2種類のメディア監査

メディアの監査には2種類がある。ひとつは「プール・ベンチマーキング(pool benchmarking)」と呼ばれるものであり、広告主の価格やクオリティの需要が、監査企業のクライアント群の水準で評価される。それによってメディアのクオリティに対して価格の競争力を理解するというものだ。ふたつ目は「価格トラッキング(value tracking)」と呼ばれる。これはエージェンシーが実際に売り込みをかけて来たときの値段に関する約束と比べて、実際のメディア価格を評価するというものだ。通常であれば、値段に関する約束は複数のエージェンシーからの売り込みがある時点で比較される。しかしプール・ベンチマーキングなしにはどの約束がマーケットの平均と比較して競争力があるのか、広告主が知ることは難しい。この情報を持ってして、広告主はやっともっとも大きなディスカウントを提供するエージェンシーを選ぶことができるわけだ。

「メディア監査企業たちが、これらの問題を起こそうとしているわけではないと思うが、問題解決には苦戦している。プログラマティックには従来のメディア監査のやり方が適切ではないと、洗練された広告主たちは気付きつつあり、何らかの代替案を求めている」と、PwCのメディア、インサイト、アシュアランス部門パートナーのサム・トムリンソン氏は言う。

ドイチェ・テレコム(Deutsche Telekom)は、広範囲な再編成の一環として、ヨーロッパにおける広告主のメディア監査と評価業務を分けて行う監査コンソーシアムを作った。ハイネケン(Heineken)は、これまでのコスト・ベンチマーキングの代わりにデータモニタリングを行うデジタルディシジョンを雇った。

「オフラインにおける監査で見られるような厳しさは、オンラインでは現在存在しない。これはバイイング側が落ち着いて成熟するまでは課題として残るだろう」と、フリーサット(Freesat)のマーケティングディレクターであるアンドレ・サントス氏は言う。フリーサットはメディア評価をひとつ終えたところだ。

時代遅れのプレッシャー

前述のグローバル広告主と同様、フリーサットもメディア売り込みがただの値段比較になってほしくなかった。それぞれのエージェンシーが確保できる価格を比較したうえで、彼はさらに時間をかけて、リーチとクオリティ、可視性とサプライチェーン透明性といった分野において自社の戦略的な優先事項と、どのエージェンシーが相性が良いか吟味した。メディア評価を終えて、フリーサットはハヴァス(Havas)から独立系エージェンシーのロースト(Roast)とエレクトリック・グルー(Electric Glue)に資金を動かした。

「我々の目的にとっては、(クライアント群から出した水準と比べる)プール・ベースの手法は適切ではない。しかしだいたいの場合は、我々の組織のサイズや業界内の関係の結果そうなっている。なかにはプールベースの監査でもないよりはマシ、という例も存在する。そして組織のなかにはそこから価値を導き出すところもある」と、サントス氏は言う。

監査モデルが時代遅れになっていることに対するプレッシャーを懸念して、監査企業たちも物事を変えようとしているようだ。

値段を比較することからの転向

広告主にとっての戦略的なパートナーとしての存在に位置づけようとしているのがイービクイティ(Ebiquity)だ。一方でアクセンチュア(Accenture)は自社の入札可能なメディアをどう購入するかを広告主に教えようとしている。両社とも、値段を比較することからの転向と言えるが、問題もある。

先進的な広告主のなかには、イービクイティによる変更点のいくつかを快く思っていないところもある。イービクイティはメディア戦略の未来を形作るなかで、広告主と協働して取り組む一方で、この転向を正当化するのは難しい。彼らはメディアコスト以外を測る方法を特に示せていないと、シニア・マーケターのひとりは匿名で語った。

「イービクイティやアクセンチュアのような会社が抱える課題は、戦略的なパートナーとして認知されたいものの、オンラインメディアのコストがどのように業績に結びつくかについて確実な理解を持っていないところにある。我々が理解しているような形での監査はもはや死んでおり、効率性モデリングによって取って代わられるだろう」と、マーケターは言う。

これらの懸念に対して、イービクイティはオンラインメディアの監査方法を刷新してきた。さまざまなマーケットにまたがるデジタルメディアのパフォーマンスに関して、主要な要素のコストとクオリティの同一条件での比較を提示している。

ほかのエージェンシーを評価

アクセンチュアは、ほかのエージェンシーのパフォーマンスを評価するビジネスモデルで黒字を出している。そしていま、同じビジネスに対して類似のサービスを提供しようとしているわけだ。アクセンチュア自体は自信を持っているかもしれないが、利益相反なしにライバルにも監査主体にもなり得るという彼らの主張に対して、エージェンシーたちは納得していない。本稿のために取材をした4人の広告エグゼクティブたちによると、WPPは監査目的でアクセンチュアとデータをシェアすることを停止しはじめている。

「メディア監査としてのアクセンチュアからのデータリクエストをグローバルレベルでWPPは拒否しはじめている。WPPは競合他社によって行われる監査には協力しないだろう」と、コンサルタントのひとりは匿名を条件に語った。社外秘の取り引きに関わっているため実名ではコメントできないとのことだ。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)