6日、米連邦議会議事堂が暴徒の襲撃を受けた後、広告主はFacebookなどのソーシャルプラットフォームだけでなく、従来型TVやストリーミングサービスからキャンペーンを引き揚げた。しかし、混乱はそれほどなかった。立て続けに同じような経験を積んでいるためだ
6日、米連邦議会議事堂が暴徒の襲撃を受けた後、広告主はFacebookなどのソーシャルプラットフォームだけでなく、従来型TVやストリーミングサービスからキャンペーンを引き揚げた。
しかし、混乱はそれほどなかった。立て続けに同じような経験を積んでいるためだ。あるエージェンシー幹部は「残念ながら、この国では最近、(広告の引き揚げを)実行する機会があまりに多すぎる。我々はいつもそのような現実に対処している」と話す。
別のエージェンシー幹部も「悲しいことだが、もう慣れてしまった。2001年9月11日の同時多発テロ以降、このようなことに敏感なクライアントを守るため、すでにそのような仕組みが用意されている」と話す。
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広告引き揚げの手順
従来型テレビでは、広告主がテレビ局に、ニュース速報がある場合は広告を出したくないと事前に通知している。2人目のエージェンシー幹部は「ニュース速報がある場合、通常は広告の数が制限される。さらに、ニュースネットワークはニュース速報に広告を出したくないクライアントのリストを持っている」と説明する。さらに、エージェンシー幹部がニュースネットワークの営業担当者に電話し、広告主のキャンペーンが放送中止になったことを確認している。「独自の手順を確立し、電子メールを一斉送信できるようにしている」と、1人目のエージェンシー幹部は話す。
ストリーミングサービスの仕組みもほぼ同じだ。3人目のエージェンシー幹部は「有料ソーシャルにはないストリーミングの利点は、1フィード限りではないことだ。そのため、ニュースコンテンツをオフにするだけで済んだ」と話す。
ニュース速報からの広告引き揚げは、テレビ局やストリーミングサービスと直接取引している場合の方が管理しやすい。しかし、コネクテッドTVの広告市場にはプラットフォームの所有者、アドテク企業といった仲介者が存在し、他社のストリーミングアプリから広告インベントリーを集めて販売しているという問題がある。
1人目のエージェンシー幹部は「アグリゲーターと取引している場合、アプリリストにあるニュース(で広告を流すこと)をやめるかどうかは彼らにかかっている。そのため、素早く働き掛け、ここで放送してほしくない、このタイプのコンテンツは避けてほしいといったことを全員に周知する必要があった。我々のパートナーがそのインベントリー(在庫)にアクセスする可能性のあるニュース(プロパティ)すべてが除外リストに入っていることも確認しなければならなかった」と説明する。
出稿再開のタイミング
広告主がニュース速報から広告を引き揚げた場合、その広告費をニュース以外のインベントリーに差し向けることはほとんどない。3人目のエージェンシー幹部は「一時停止し、それからペースを取り戻す感じだ」と話す。具体的には、ニュースになった出来事が落ち着いてから広告を増やしている。
ニュースの雲行きが怪しくなったとき、あるいは、特定の広告主に適していないと判断したとき、テレビやストリーミングから広告を引き揚げること自体は問題ではない。むしろ難しいのは、広告主がニュース番組に戻るタイミングを決めることだ。答えは広告主によって異なるとエージェンシー幹部たちは口をそろえる。
直近の出来事に関して言えば、米大統領就任式が終わるまでニュース番組を避ける広告主もいるかもしれないが、エージェンシー幹部の多くは、次期大統領のジョー・バイデン氏が20日に就任宣誓を行うとき、広告主は広告を出したがると予想している。テレビ局とストリーミングサービスの視聴者数が跳ね上がる可能性が高いためだ。
1人目のエージェンシー幹部は次のように述べている。「(就任式の日のニュース番組に)広告を出すことは必ずしもリスクが高いとは思わない。問題は広告主としてどの辺りに心地良さを感じるかだ。ニュースコンテンツに広告を出したいのであれば、これがニュースコンテンツだという基準をつくり、それを基に除外リストをつくればいい。あってほしくはないが、万一何かが起きても、我々のチームはすぐに対応し、広告を引き揚げられるよう準備している」。
TIM PETERSON(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:長田真)