GoogleがサードパーティCookieの廃止を延期したことで、広告主には一息つく時間ができた。だがエージェンシーたちは、広告主は引き続きCookieを使用せずにトラッキング、ターゲティング、そして計測を行う手段のテストを継続すると予想している。
GoogleがサードパーティCookieの廃止を延期したことで、広告主にはひと息つく時間ができた。だがエージェンシーたちは、広告主は引き続きCookieを使用せずにトラッキング、ターゲティング、そして計測を行う手段のテストを継続すると予想している。また一方では、今回の延期を受け、広告主はテスト用予算を修正するという見方もある。
独立系エージェンシー、メディアストラクション(Mediastruction)の創業者兼CEO、メアリーロイス・スノーマン氏によると、Googleが2023年末までサードパーティCookieのサポートを継続すると決定したことで、Cookieレスなターゲティングアプローチの検証のための予算配分が減らされる可能性があるという。
「広告主たちはこれまで、予算の30%から50%ほどを検証に充てていたが、今後は10%程度に削減されるかもしれない」とスノーマン氏。「なにせ、サードパーティCookieのサポートが終了するまではあと2年ある」。
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しかしスノーマン氏は、代理店やマーケターたちは、予算を削減しつつも引き続きテストを継続するべきだと強調する。というのも、サードパーティCookieを使ったターゲティングが完全に廃止された際に、どのような指標を用いるかを判断するには時間が必要だからだ。広告主と代理店は、増えた時間を活用すれば、「Cookieの廃止によって何が起きるかを本当に理解し、その結果に基づいたモデルを構築することができるかもしれない」とスノーマン氏は述べている。
一方、予算の変更により、当然ながらパブリッシャーは影響を受ける可能性がある。実際、メレディス(Meredith)のCOOでデータ戦略担当のニコル・レスコ氏は、その点を懸念している。サードパーティCookieのサポート期限が延びたことは、パブリッシャーにとって、「CPMの安定性を維持し、準備態勢に関する、当面の懸念を払拭するのに役立つだろう」とレスコ氏はいう。しかし「広告主やエージェンシーといったプレイヤーたちが、これを優先順位の付け直しや焦点の変更の機会と見なすリスクもある」と付け加える。
実環境のコントロールグループ
パブリッシャーや広告主は、先日実施されたAppleによるiOSアップデートにより、トラッキングやターゲティング機能に混乱が生じたことを受けて動揺していた。そんななか発表されたサードパーティCookie終了の延期は、広告主たちに、Appleによる規制強化が及ぼすSafariやiPhoneをはじめとしたAppleデバイスへの影響を把握するための時間をもたらしたと、マーケティングエージェンシーのティヌイティ(Tinuiti)の最高戦略責任者ニイ・アヘネ氏は述べる。Appleのオーディエンスと、サードパーティCookieやその代替手段によってまだターゲティングや計測が可能なオーディエンスを区別することで、実世界のコントロールグループ環境でのテストが可能になるからだ。
また、独立系広告代理店PMGのプログラマティック・ディレクターであるジャスティン・スカボロー氏は、「時間が経てば、AppleのモバイルデバイスやSafariを使用している人々を対象としたアプローチの効果を、ほかのターゲティング手法と比較して測定する機会が得られるだろう」と述べている。
Googleが与えた猶予をどう活かすか
しかし、広告主は最終的に、Cookieの廃止に備える必要があるため、「確実に」Cookieなしで人々にリーチする技術をテストしなければならない。たとえば、共通IDといった代替識別子を提供するプロバイダーが、突如として「十分な数のリーチを生むためには、やはりCookieが必要だ」といった場合、それまでの努力は何も意味をなさなくなってしまう。
現在スノーマン氏は、AppleとApple以外のオーディエンスを区別するのではなく、カスタムコントロールグループを作成して、Cookieや行動ターゲティングを必要としないアプローチをテストしている。また、ティヌイティのクライアントには、ある製品キーワードの検索数が特定の狭い地域でどのように上昇するかを示すデータと、地域データに基づくターゲティングを検証している広告主もいるという。「自らコントロールグループを作り、同時に経験豊富な広告主に、『このテストのために自社の予算の一部を拠出してもいい』といってもらう必要がある」。
アヘネ氏は、増えた時間はともかくとして、マーケターがCookieを使わないテクニックをテストし続ける必要があると考えている。だが一方で同氏は、現在Googleが与えた猶予が、広告主による見当違いな検証を助長し、彼らが自己満足に陥る事態を引き起こすのではと懸念している。さらに、「私が広告主たちに対して抱いている懸念は、結局これまでと同様のアプローチに落ち着いてしまうことだ」と同氏。「残念なことにそうなってしまう可能性はかなり高い。なぜなら、それがこの業界の常だからだ」。
[原文:Advertisers could shift cookieless test budgets and approaches in light of Google cookie extension]
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)